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短歌 新作8首 『化け物』

ときとぎ、得体の知れない感情が、意志に反して動き出すことがある。
誰かを傷つけたり、自分で傷ついたりしながら、獣を飼い慣らすようにして、ふさわしい名前を探す。
それをやがて受け入れ、愛せる日が来たとき、見せたくなる相手があなただったらいいなと思う。

そんな気分を、8つの短歌で書いてみました。

第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。

化け物

死ぬための歌ではなくて物憂げな明日を照らす声を聞かせて

「恋愛は求めてない」という言葉の裏を読むための辞典を探す

曲がり角を何度も間違えたせいできっと出逢ってしまったんだね

俺の手に潜む化け物を退治するようにオリオンが見下ろしている

生ぬるい湯船に沈む全身を君に抱かれている夢と共に

山手線が人身事故で動かないだけでどこにも行けないなんて

向側のホームに君がいるようなつもりでいつも背筋を伸ばす

まだ俺を恨んだままでいてほしい。今年の冬は寒いらしいよ。

57577展

訪れてくれたあなたの足跡と共に続いてゆく物語
会期:2022年1月29日(土)〜3月27日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし、3月21日は開館)、2月10日(木)、3月10日(木)
会場:町田市民文学館ことばらんど 2階展示室
〒194-0013 東京都町田市原町田4丁目16番17号
観覧時間:午前10時から午後5時
観覧料:無料
出品作家:岡野大嗣、木下龍也、伊藤紺、鈴掛真

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