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わたしはケーキが切れないものを笑うが、ケーキを切る以上のことはひとつもできない。

わたしはかなり嫉妬深く意地汚い人間なので、自分でも手の届きそうなくらいのポテンシャルに強運をプラスして成り上がったような人間を見ると腸が煮えくり返る思いになります。

これくらいならわたしでも。

と、烏滸がましくも思ってしまうのです。

そのためか、なにかコンテンツにハマる際は、

「段違いの才能で黙らせてくる」ものか、

「下に見て愛でてもいい」ものの、

どちらかに傾倒します。


後者は、小動物や小虫と同じように「なにをやらせてもわたしに勝てない、愛嬌だけの存在」を受け入れ、愛でてそやして、舐めきった態度で甘やかすのが気持ちいい、と感じています。性格が悪い。

前者は、

わたしのちゃちなプライドを正面切って叩きのめして、圧倒的で暴力的なきらめきで脳髄を思い切り焼かれる感覚が気持ちいいです。

インターネットが大好きなので、稀にどちらも兼ね備えた存在に遭遇することがあります。2次元とか3次元とか問わず。

なにをやらせてもダメ。要領も見てくれも悪くて、そんな自分を自覚して開き直りかわいげを身につけて大人になったくせに、ある1点においてのみ異常なまでの才を発揮し、差異を見せつけて、いつしかこちらがその最高のポテンシャルにわざわざリソースを割いている、それにあるとき気付かされる。
これは本当に気持ちがいいです。感覚としてはいわゆるNTR系の作品に対して使われる「脳が破壊される」に近いかもしれない。

ああ。
わたしよりも。
こんなわたしよりもこんなに駄目だったのに。

そんな絶望に打ちひしがれながら才能に胸ぐらを掴まれて引っ叩かれて、泣いても喚いてもやめてもらえない、その暴力性にハチャメチャに惹かれる。

ダメさを自覚して開き直って身につけるかわいげは、ほかの才能と並行して持つにはあまりに強い武器となり得るし、逆もまた然りだ。媚びるのも愛嬌も才能のひとつ。努力できる才能、みたいな話に少し近いが、後天的に上手く生きられる素質。

わたしはダメな挙句にかわいげもなくて、わたしこそなにをやらせても無能で無脳で無謀で最悪なのに。
そんなわたしを本当に甘やかしているのはわたしが舐め腐っていた「コンテンツ」のダメさ、そのもの。
あなたよりこんなにダメな人がいますよ、だから元気を出して、大丈夫ですよ。と、愛でてそやして、ぐずぐずに甘やかしておきながら後出しで「本当はあなたとは違います」と嘲笑われるあの感覚。

は〜。

気持ちいい。

もっとわたしの脳を破壊してくれ。

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