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『桃花源奇譚』とともに再びファンタジーの扉を開く

実はnoteに登録してから2年が経っている。久々に開いて、アカウント名やIDを変えて、メール認証もやっと済ませて。これが1つ目の記事。

私は本を沢山読む。最低でも月20冊くらいは読む。大人になってから、どうやら私は人より読書家らしいぞ、と気づいた。だから自分の中にある語彙は結構多いほうだと思う。
読書家は文章を書くのが得意だと思われがちだ。でも、私はとにかく書くことが苦手な子供だった。

小学1年生のときに春がテーマの作文をなかなか書けずに居残りした。たんぽぽの花だったか、綿毛だったかのことを書いたけど、どう頑張っても原稿用紙の4分の3くらいしか埋められなかった。気を利かせた担任の先生が、「これは詩だね」と言って教室の壁に貼ってくれたのを今でも覚えている。教室に貼ってもらえたという誇らしい気持ちと、クラスメイトのみんなと同じような作文を書けなかった情けない気持ち。

読書感想文は特に苦手な課題だった。読書をするところまではいい、得意分野。みんなが1冊読む時間で2~3冊は読める。でも私が感想だと思って提出したものには大体「読書感想文とあらすじは違う」旨のコメントが書いてあった。

前置きが長くなりましたが、要は書くのが苦手だということです。

さて、そんな私が筆をとったのは『桃花源奇譚』のすばらしさを伝えたいがためです。

出会いは有楽町の三省堂書店。表紙に旅芸人風のかわいい女の子。ついているPOPがまた良かった。絶版になってからも店員さんが個人的に推していた作品で、あまりの手に入らなさに「古本屋で見かけたら買ってください!」と宣伝されてたとのこと。有楽町の三省堂の店員さんとは相性がいい(桃花源奇譚の方とは違うようだけど十二国記を激推ししている店員さんもおり、私はその人がPOPを書いている本は買うようにしている)ので迷いはない。でもちょっと積みました(読むまで時間を置いたの意)。だって4冊あるんだもん。

でも読んでしまえばあっという間だった。4冊合計で1,300ページ超、5日で読んだ。読み終えて驚愕。こんなものを見過ごしていたなんて!こんな作品が絶版になっていたなんて!私の文章力ではとてもすばらしさを伝えきれない。

不老不死が叶う理想郷「桃花源」の秘密を握る陶宝春を主人公とする物語。旅芸人の宝春が桃花源への道を探す敵たちにその身を狙われ、身分を隠し母を探す皇子である白戴星と彼を助ける星のもとに生まれた包希仁に助けられながら出生の秘密を探す冒険記。

あの疾走感、魅力的なキャラクター達に翻弄されるうちに解かれていく理想郷「桃花源」への道。中国の古い小説である『桃花源記』と『三侠五義』に着想を得たというこの作品は中国の宋という時代の明るい空気を感じながら進む。ヒロインの宝春は幼くてかわいくて、戴星は彼女よりは大人に見えるけれど純真さと子供っぽさを残していて。さらっとしているけれども若さの残る包希仁が彼らをまとめ上げている。敵方として登場する殷玉堂のキャラクターも魅力的。桃の花の香りのように、さわやかで甘く胸がすっとするのにずっと頭の中に香が残るような物語だった。

ああ、私が有名読書YoutuberやInstagrammerだったら!彼ら、彼女らにコネがあったら!そうでなくても私にもっと文章力、語彙力があったら!この本を私がおすすめするだけで皆が読んでくれるのに。でも私は感想を書くのも上手くなくて、素晴らしい作品をどうまとめたらいいか分からなくて、この作品を読んだのを機に始めた読書メーターにも感想を投稿できずにいる。

ファンタジー作品三巨頭と言えば間違いなく上橋菜穂子さん、荻原規子さん、小野不由美さん。もちろんハリーポッター、阿部智里さんの八咫烏シリーズ、エンデの『モモ』、最近アニメ化した火狩りの王など素晴らしくて有名な作品がたくさんある。

桃花源奇譚はこれらの作品に並び立つ。どうして絶版になってしまったのか、どうしてこの作品を読まずに来てしまったのか。書店員のみなさん、お願いです。もっとこの作品を推してください。

この作品でファンタジーの世界に引っ張り込まれた私は、過去に夢中になって読んだ『RDG レッドデータガール』シリーズを読み返した。泉水子ちゃんの尊さに胸を打たれ、5か月にわたって刊行された文庫版『火狩りの王』シリーズの発売日を待ちわびながら、灯子と煌四の闘いに胸を痛めた。長らく本屋で見かけて気になっていた『神と王』を読んで神とは果たして何なのか、神と人との関係性に思いを馳せ、なんとなく積読にしてしまっていた『獣の奏者』や『精霊の守り人』に手を付けて、上橋さんの描く大いなる自然との関わりや人類の歴史に感銘をうけている。

『桃花源奇譚』は作品それ自体が素晴らしかっただけでなく、本当に私のファンタジー世界への扉をもう一度開いてくれた作品だった。

幼い頃に夢中で読んだファンタジーのすばらしさを思い出させてくれた『桃花源奇譚』。どうか、この記事を読んだ誰かが書店や電子書店でこの作品を手に取ってくれますように。

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