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【読後感】【就活】六人の嘘つきな大学生

就活ってのは相変わらず滑稽な行事だなぁ、と。

そういう意味ではこの小説の醸し出すホラー感ってのもあながち間違っていないような。

ではなぜ滑稽なのか。思うところ2点ほど。



■適所適材

ここのところ会社は「適ざい 適所 」という言葉を使わなくなってきましたね。
「適ざい 適所 」とはすなわち、様々な種類のいる人材をそれぞれ適した場所に配置するといった、どちらかというと会社視点の言葉。
これが出来る会社が良い!みたいな風潮すらありました。

しかし。

最近ではこの言葉が、「適しょ 適材 」という言い方に変わってきています。

つまり、
会社は求めるポジション(役柄)を作っておくから、そこに適材が来てくれよ。という、どちらかというと人材側に自律を求め、自ら希望してきて欲しいような言葉に変化していってるんですよね。


これって実は就職活動的には大変革で、
これまではとりあえず獲得して、あとは会社の腕の見せ所的な感覚で新人を適所に配置して育てていくやり方だったけど、
この考えが変わると、新人だろうが中途だろうが、もっと言うと既存の社員であろうが、適材だったらどんどん採用するからねって話になるわけです。

つまり
エントリーシートがどうとか、面談の受け答えがどうだとか、グループディスカッションがどうだとか(最低限のチェックはあると思うけど)、そんな事よりも「あなた何が出来るんですか?」って視点一択で採用面談は行われていくわけです。

つまり小説にあるような、有名大学を出た学生同士の足の引っ張り合い自体が意味をなさなくなる。


これはですね。ホラーの様なおかしな面談が無くなる一方で、学生時代遊んですごした新人にとってはかなり厳しい現状になると思います。厳しいというか、新入社員の時点で既に格差が出来てしまっているといった感じ。




■意識高い系の破滅

うちの会社にもちょっと前ですけど「オフ会の王」みたいな人がいたんですよね。
いわゆるサークルリーダーみたいな。

職場の枠を超えてみんなで集まりましょう!みたいなやつを企画して運営するのがもの凄く上手くて、それ故に顔が広くてSNSのフォロワーがたくさんいる感じ。社内でも有名人でした。

たぶん学生時代にもそういうのたくさんこなしてきて、人を集めて何かするってところに天賦の才があったと思うんです。休日に会社の幹部クラスを招いてディスカッションする、みたいな。そしてそれをfacebookで発信して顔が売れていく。

ただですね。この方、会社業務においては全く名前を聞かない。やってる事はあくまでもオフですから。


そしたらトップが代わって、そこまで意識が高いならぜひ通常業務の中で発揮してもらいたいみたいな風潮になったんです。
つまりは適所に当て嵌まる適材であってくれ、と。

そしたらこの「オフ会の王」はあっさり退職してしまいました。自分に見合う適所は無いと判断したんでしょうね。



この小説の中にも、グループを仕切る意識高い系の学生がたくさん出てきます。就活経験者なら多くの人が遭遇したと思います。

それ自体は良いんです。意識高いかどうかは別として人心掌握含めて全体を仕切り、まとめるというのは大事なスキルですから。

ただですね、そういうのが得意な人たちだけが就活で王様のように振る舞える時代は終わるんじゃないか、ってのが個人的な見立てです。


そりゃ会社ってのも集団生活ですから必要以上に陰湿なのはダメですけど、実力不十分な意識高い系より、実態がしっかりと伴っている方が重宝される。そんな感じになるんじゃないかな、と。

つまりは意識高い系大学生の破滅、です。
誤魔化しがきかないんですよ。適所適材思考になると。




■滑稽な就活はいつ終わるか

今の日本的な就職活動、つまりは時期が来るとみんなが一斉に髪の毛黒くしてリクルートスーツ着るやつですね。これって近い将来破滅すると思っているのですけど、問題はその時期です。

個人的には意外と早いと思っていて、大手だとあと2,3年。それに倣って社会全体でも5年以内に大きく変わるんじゃないかと。


学生時代の専攻と、そこで培った知識・経験がものを言う。だから下手したら最低限の面談で即入社ってパターンも出てくるかもしれない。

それは在学中かもしれないし、就職浪人しているときかもしれない。

とにかく社会、ではなく会社側の都合で今欲しい人材とマッチすればすぐに会社に重宝される。要は転職の感覚と一緒ですね。季節は関係ないんです。会社ってもの凄い早さで革新してますから。季節なんて待ってる場合じゃない。


逆に言ったら安易な考えで学部や学校を選んでしまうと大変なことになる。どんなにでっかいサークルでリーダーやってても、どんなに長い間バイトリーダーやってても、会社の求める実力がなかったらいつまでも売れ残ってしまうわけです。



今の集団就活って小説にある通り恐ろしいですけど、
実はここのところの就活事情は、大学生にとってはもっと恐ろしい方向に向かっているんじゃないかなと、そんな風に思っています。



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