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【緊急】【ジュビロ磐田】アキラさんのこと。渋谷さんのこと。

シーズン中の監督交代とは何とも虚しいもんだ。
「緊急」と題して伊藤彰監督への惜別のnoteを書いた時、後任は鈴木政一前監督だという報を受けそう書いたのだが・・・蓋を開けてみればアキラさんの右腕である渋谷さんがそのあとを継ぐことに

これに関する期待と不安を改めて綴り、加筆修正してこのnoteを〆たい。





■不運

勝負事に「不運」という言葉は、本来あってはならないのかもしれない。

しかしながらアキラ監督に課せられた制約は少し厳しかった気がする。
ルキアン、小川航基という2大エースをゼロ円で失った後、前の選手の十分な補完は無し。
結果的に追加補強を苦しくした高額の杉本、ドゥドゥらはアキラ監督の望んだ獲得だったのか。

加えて屋台骨とも言えるベテラン勢の戦線離脱。怪我や感染症により毎試合どこかが欠けるままならないスカッド。
好調だった雄斗選手、ラッソ選手が謎の長期離脱を強いられたのも逆風でしかなかった。(いったいアレは何だったんだろう)

本来、現場と経営は別軸で語られるべきという理想があるが、深刻な赤字経営が現場に無言の圧力を与えていたことは間違いない。

限られたカードで結果を残すのが、戦術家の腕の見せ所

アキラ監督はそう言わんばかりにあらゆる策を講じてそれを体現してみせた。湘南戦など見事に嵌った試合もあったが、
厳しいチーム事情が戦術に後手を踏ませ、トライ&エラーの要素が強まるとこんなにも脆いものかと痛感させられた。

そして、ジュビロ磐田の信念は少しずつ綻びだす

それは自分を、仲間を、そして進んでいる方向を「信じる」という信念に他ならない。
一番恐れていた事態が、緩やかに動き始めていた。


■歯車

失意の浦和戦を視聴して感じた。

明らかに選手たちが疲弊している。この疲弊は夏バテのようなものとは一線を画す”全く別のもの”に見えた。

では何か。


105m×68mのサッカーコートをグラウンドレベルで俯瞰して、ゲーム中にフォーメーションとポジションを変更していく行為は、我々素人が想像するよりはるかに難易度が高い。
つまり選手たちは脳みそをかなりハードに使い、同時にスプリントを繰り返している。これは相当キツイはずだ。

アキラ監督とジュビロ磐田のチャレンジはまさにこれであり、おかげで(特に若手選手たちの)サッカーIQはかなり向上したと思う。
しかしながらこのハードな挑戦に、結果が付いてこなければどうなるか。


人間とは残念ながら本能的に現状維持を求める生き物だ。

この悪き現状維持精神に立ち向かうためには高い高いモチベーションを要する。
僕が前出のnoteで「成功するためには疑わず信じること」と発言した真意は、実はここにある。

疑うと、崩れ落ちるのだ。モチベーションが。

モチベーションが低下すると、現状維持を欲しだす。
するとどうなるか。
挑戦に対してネガティブになり、思い出したように疲労を感じ始める。そして体が勝手に、やりたくないと拒否を始める。
月曜日に布団から出られない、あれだ。

「またシステムを変えるのか。オレは次は何をしたらいいんだ。本当にそれは必要なのか。本当にそれは上手くいくのか・・・。」


アキラ監督がゲーム中にフォーメーションをいじることは必要行為だった。
しかしながらここに、
夏場の暑さ、走っても報われない辛さ、ミスへの恐怖、結果が出ないことに対する苛立ち、自己嫌悪・・・そういったものが加わると、どんなに戦術を変えても結果はついてこない。そして、

疑心暗鬼は、監督の求心力をむしり取る。

エコパでの6失点はもはや、燃え盛る炎にじょうろで水を掛けているようなものだった。例えそれ(戦術)が正しいやり方だったとしても、勝てない真因はそこじゃないのだ。

大雨のホームなのに相手の炎が一向に消せない屈辱の大敗は、実に苦々しかった。
そしてそれはサポーターよりもむしろ、選手たちから見て取れてしまったのが本当に辛かった。


誰も悪くない。誰も悪くないのだが確実に、歯車の外れた音が聞こえた。
浦和戦はそんなゲームだった。



■伊藤彰監督へ

かつてこれほどワクワクしたシーズン開幕はあっただろうか。

下田さんが実況で「志」と何度も言っていた。客観的に見て確かにそこには確固たる信念が見え、それは僕たちがずっと見たかったものだった。

J1の強度と、ままならないスカッドのせいで方針がブレたように見えたけど、それを可視化して緻密に軌道修正して何度も立て直そうとする様はさすがの一言でした。
しかし、
それをフォローするだけのバックアップが無かったことが無念でなりません。

縁もゆかりもない磐田に来てのチャレンジはとても過酷だったと思います。それは単なる単身赴任ではなく、ジュビロ磐田のDNAとの戦いだったから。

どうせなら悪魔のような意地悪な敵がいて、それを一つ一つの乗り超えていく勧善懲悪アニメのような挑戦だったら良かったのに、とすら思ったりします。
しかし、今回の挑戦と結果に悪者はいない。それだけに僕たちは、辛いんだと思います。

最後に一つだけお伝えするとするならば、アキラさんの挑戦に異論を唱えるものは、(少なくとも私の周りには)いません。
それは本当です。

短い間でしたが本当にありがとうございました。
これからもジュビロ磐田のファミリーとして(たとえ異なる形でも)力を貸してください。

よろしくお願いいたします。



■渋谷洋樹という男

火中の栗を拾うとはまさにこのこと。
いや、
”禍中”と言った方が正しいかもしれない。感染症と、ゴール欠乏症と、モチベーション不足。バラバラになったチームは正に禍中にある。

政一さんレベルの経験値でも収拾がつかないかもしれないこの状況で、記事には「自ら志願した」とあったので驚いた。

そこには、
伊藤彰と共にジュビロ磐田という他所にやって来て、何も示せなかったことに対する責任感が滲み出ていた
どうやら渋谷洋樹とはそういう男らしい。

甲府から引き抜いた伊藤・渋谷コンビと、クラブが今なお良好な関係を保てていることが感じられて嬉しかった。

しかし、

渋谷体制はドラスティックなチームの変化が無いことを意味する。
戦術も然り、新たな火力(補強)も然り。

つまりは「気持ち」で乗り越える、と。


今さら大幅な選手・戦術の入れ替えも博打の要素が強すぎるので開き直ってポジティブに言うと、この「気持ち」の部分はまだまだ伸び代がある。

ヒントは総理大臣杯の常葉大と横浜桐蔭大の対戦で垣間見えた。

横浜桐蔭大は現在、関東大学リーグの2位。プロ内定者を多数揃えて間違いなく大学サッカー界のトップにいる。
それに対し常葉大は自陣ゴール前でものすごい気迫を見せる。
個人技でかわされたシュートはその後ろの人間がことごとくブロック。間をすり抜けた何本かは始めからそう決まっていたかのようにポストに弾かれて外に出た

跳ね返してからの速攻にも明確な約束事が垣間見え、故に進力があり、(オフサイドになったけど)10番 古長谷選手の長い縦パス一本からワンタッチでつなぎ、最後はエースがネットを揺らした。

プロとアマチュアは違う?
いやいや。昨年のJ2王者がどのチームよりもこの泥臭いプレーを見せていたではないか


渋谷さんとの初陣(名古屋戦)はまたしても無得点で敗戦となった。
しかし、浦和戦で見えてしまったぽっかりと穴の開いた気持ちの部分はふさがっていたように見えた。
スタートラインに戻って来たと思えばポジティブだ。

起爆剤は無い。しかし、ロケットのようなエンジンを積まなくては追い抜けない差でもない。

今は信じることしかできない。繰り返しになるが、”泥臭く”の部分はまだまだ余白がある。自分は根性論で議論を棚に上げるタイプでもないが、根性論で凌げる隙は、まだまだあると思う。


渋谷さんを男にしたい。




本日も、最後までお読みいただきありがとうございました!


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