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【ビジネス考察】「ジョブ型」定着に時間がかかりそうな理由

ここのところ大企業においてもよく聞かれるようになった「ジョブ型」という働き方。

これに合わせて経営幹部が「適材適所」ではなく「適”所”適材」という言葉を使い始めているのがとても興味深い。
これまでは人材の素養を見極め、その人が最も能力を発揮できるところに配置するのが会社の役目とされてきたのだが、
これが「適所適材」という言葉になると意味合いが全く異なってくる。その真意は企業が存続するうえで必要な組織を見極め、そこに足る能力を持った人をあてがっていく、という思想になるからだ。

言葉は似ているが、社員目線で捉えると全然違う。これはつまり、適所に当てはまらない人は要らないと言っていることに等しい。

で、
適所に当てはまる人しか雇用しませんからね!という会社側の宣言こそが、「ジョブ型」推奨なのである。


■「ジョブ型」は悪か

終身雇用を真っ向から否定するジョブ型の推奨は、血も涙もない悪魔の宣言のように見えるが世界的には常識だ。

考えてみればわかる。
自分が引っ越し屋のリーダーで、明日の仲間を選ぶとしたら非力な人や運転ができない人は選ばないだろう。
適さない人を大量に抱えて「みんなで頑張りましょう!」「徐々に慣れていきましょう!」みたいな体力も時間的余裕も、残念ながら今の企業には無いのだ。

そんな!ヒドイ!
という声が聞こえそうだけどそれは少しネガティブすぎるのでは?とも思う。
なぜなら、適さない人は要らない、という言葉の裏には、適す所に堂々と行けばいいという意味合いが含まれているから。

例えば、
バントが上手いのにサッカーチームに所属する選手は”適さない人材”だけど、そのスキルをもって野球チームに転職すれば、見事に”適した人材”になり、今より給料が上がるかもしれない。

この考え方はしごく真っ当で「転職」という行為が肯定的であることを示している。海外では当たり前の感覚だが、最近では日本でも一般的になって来た。

転職とは逃げることではない。
より自分のスキルが活きて、より給料が上がるところへ行く行為なのだ。これこそが「適所適材」の本当の意味。
ジョブ型のポジティブな側面といえる。


■しかし「ジョブ型」定着には時間がかかる

企業が生産性を高め、個人が昇給を成し遂げるために「ジョブ型」の考え方は捉えようによってはポジティブだし、早すぎる世の中の流れに対応するならそうならなくてはいけないのだが・・・

まだ定着までには時間がかかるだろうな、というのが個人的な意見だったりする。

理由はズバリ、就活。

企業がジョブ型を遂行するにあたり、就職活動の仕組みと新人の捉え方が非常に厄介になってくる。
要は矛盾しているのだ。

ジョブ型が定番で、転職なんて当たりまえの海外の場合、新人は即戦力であることもまた当たり前になっている
学生は就職するずいぶん前から将来どの分野でどう戦力になっているかを見極める必要があり、それありきで学生時代を過ごす。

入るのが難しいのが日本の大学なら、入ってから難しいのが海外の大学、と良く言われるがその本質はどうやらここにあるっぽい。
海外の学生は、即戦力になるために超勉強する必要があるからだ。

果たして今の日本の大学にこの感覚を芽生えさせることは可能なのだろうか。

感覚というよりこれは風土、いやもっと仰々しく言って「社会文化」なのかもしれない。
つまり求められているのは歴史的転換だ。


そして、
将来どの分野でどう戦っていくかを学生たちが真剣に探るために、大人たちが社会を挙げてその情報提供や機会創出に躍起にならないといけないことは、言うまでもない。


果たしてジョブ型は定着するか。



本日も、最後までお読みいただきありがとうございました!




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