【⚽️日本サッカーを愛そう】娘を、洗脳した話。
君は2009年にこの世に産まれた。可愛かった。
サッカーボールを蹴ったりキャッチボールをする週末を夢見たが、君は予定調和通りの女の子だった。
君がプリキュアになって、パパがキラキラした変身をじっくり見届けてからしっかりやっつけられているころ、君に妹が産まれた。可愛かった。
サッカーボールを蹴ったりキャッチボールをする週末を夢見たが、君と君の妹は予定調和通りの女の子だった。
君がパパの真似をして「やべー」とか言うもんだから、パパは言葉遣いを改めた。そしたらパパの話し言葉がおねぇみたいになってきた。
そんな時だった。
君たちはついに団結して、テレビでサッカーを見ているパパを攻撃するようになった。
「つまらない。テレビ変えて。」
君たちは毎日毎日「となりのトトロ」を見ていた。大切な試合はライブに限る。見るとしたら今しかない。なのにその時間は、妹が家出して、みんなで探して、それで見つかる。という物語に毎試合毎試合、乗っ取られた。
妻が言った。「どうせ見れないんだからDAZN契約止めたら?」
その通りだった。
洗脳を誓った夜
今だから話そう。物騒な話だ。パパは君を洗脳しようと決めた。
3年かけて君たちをサッカーファンにする。これは育児でも教育でもない。洗脳だ。
パパは静岡県の西部で産まれた。君たちが夏休みと冬休みになるととっても楽しそうに訪れる。あのくそ田舎だ。
パパは大学生になると上京して都内に住んだ。シティボーイだった。国立競技場を庭だと呼んでいた。その話はまた今度。
パパは社会人になると住まいを横浜に移した。ハマっ子だった。パパはJ1のあるチームのスポンサー企業に勤め、J1の別のあるチームのホームグラウンドのすぐ近くに住みながら、相変わらずそれらとは全く違うジュビロ磐田の大ファンだった。
なぜって、静岡県の西部に産まれたからだ。パパは子供のころよく親に連れられてヤマハ発動機のサッカーの試合を観に行った。
子供のころに応援していたのがヤマハサッカー部だった。それがすべてだ。
君は横浜生まれ横浜育ち。真のハマっ子だ。だが、許してほしい。君はジュビロ磐田のファンになる。子供のころから応援していたチーム。それが体に染み込まれれば、それは代えの利かないDNAになる。
君のJリーグにおける体質はパパが決めた。君はジュビロファン。洗脳だ。
(1年目)まず連れていく。
まず手始めに2017日産スタジアム。
いつも車の窓から見ていた近所のスタジアム。俊輔ダービーだった。様子見として、よりビジターに近い指定席に陣取った。
ぴっかーん!ええぞ。
素晴らしい雰囲気だった。サッカーのルールもわからない君だったが、高揚感はあったようだ。
「いいか。あちらで騒がしいのは敵だ。私たちは今日、青ではなく白いチームを応援する。」
素直だった。結果は負けたが、磐田というチームを応援することを”楽しい”と感じたようだった。「来年また来よう。」こうして3か年計画の1年目は成功裏に終わった。
(2年目)そして連れていく。
2018日産スタジアム。今度は純度を上げるためパパと二人だけで行った。相変わらずサッカーのルールは理解していなかったが、もう一度あそこに行く。それは十分意識しているようだった。
前年ほどの盛り上がりはなかったが、それでも高揚感はあったようだ。ちなみにギレルメが暴行したところは、うたた寝していてちょうど見ていなかった。試合は勝ったが後味が悪かった。そんな中だったが帰り際、ビジターのゴール裏を指差して君は言った。
「来年はあそこで、ユニフォームを着て見たい」
おれは勝った。
(3年目)そして洗脳する。
2019日産スタジアム。ビジターゴール裏。ついに来た。事前に嫁に内緒でユニフォームを買った。高かったので家のカードで買った。躊躇なんてできるか。ついにおれの洗脳計画はここまで来たのだ。
試合は最悪だったが高揚感は最高だった。90分立ち続けていたが問題ないようだった。君は興奮していた。たくさんのチャントを歌い、いっちょ前に一喜一憂した。
パパも興奮していた。スタジアムでタオマフをせがまれたが、今度は自分の小遣いで買った。躊躇なんてできるか。ついにおれの洗脳計画は成功をみたのだ。
洗脳。そして。
2019年。君はお風呂で磐田のチャント口ずさむまでに成長した。
ただ、チャントはいつも「磐田の反撃」だった。無理もない、スタジアムで聞こえるのは最近そればかりだ。
でも問題ない。君と、君のJリーグと、君のジュビロ磐田の歴史は始まったばかりだ。
もうひとつ嬉しかったエピソードを話してくれた。
君のクラスの男子は当然ながらほとんどがマリノスファンだ。ある男子が調子付いて言っていた「今度日産スタジアムで神戸戦見るんだぜ」。
君は言った。小学生の女子っぽい感じで言ったに違いない。「どうせイニエスタ見たいだけでしょ」。
最高にいい女だ。
洗脳。そして君は、文化の一部になる。
Jリーグが始まってまだ30年も経っていない。君にとっては物心ついたころからあるものだが、これはまさに、これから文化になるもので、君はそれを、共に醸成させる立場にある。
そんな立場において、Jリーグをさらに愉しむうえで、知っておいたほうが良いことがいくつかある。パパはそれを、なるべくわかりやすく君に伝えていきたい。
とにかく、これからも一緒に君と、君のJリーグと、君のジュビロ磐田を見ていこう。
ひとつその前にやることがある。次は君にも手伝ってもらう。
あいつ(次女)の洗脳だ。
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