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【週刊ユース分析⚽】強くて脆い、強豪校。

■部活が強い

ちょっと前までは、人気の高体連。実力のクラブユース。という通説が一般的だった。


実際にU-15から18に昇格出来なかった選手が高校の部活に入るという流れがあったし、明らかにJリーグチームの下部組織に属していた方がプロになるには有利だったわけで。

一方で、
部活には「冬の選手権」なる巨大コンテンツがあったためそこまで世間のイメージ的に劣等感は無いものの、
僕が整理してきた高円宮杯プレミアリーグの歴史においてトップ20の75%はクラブユースが占めるという結果だった。

しかし、
ここのところ高体連勢が強い。


その証拠として、今からたった5年前の2018年のプレミアリーグと今年(2023年)のプレミアリーグの所属チームを比較してみると面白い。

2018年 プレミアリーグ所属チーム(赤枠が高体連)
2023年 プレミアリーグ所属チーム(赤枠が高体連)


2018年に20チーム中7チーム(35%)だった高体連勢は、
2023年には24チーム中13チーム(54%)とついにクラブユースの数を超えた。

この変化というものは長らく2種年代を見てきた人からすれば驚きだと思うし、
「いずれはそうなると思っていた」という人にとってもここまでのスピード感で2種の景色を一変させてしまうとは思ってもいなかったはずだ。


そう、
2種年代のサッカーにおいて高校サッカーは急激に進化を遂げているのである!



■ジュニアユース化と、ガンバの変化

では、なぜ高体連勢は強くなったのか。
個人的には2つのエポックメイキングな出来事が関与していると考えている。

それが、
高体連のジュニアユース化と、ガンバ大阪がもたらした変化である。


・高体連強化の理由① ジュニアユース化

ユースチームの常識であった、下部組織からの一貫育成の考え方を強豪私立がどんどん取り入れている。

お馴染み青森山田には青森山田中があるし、
静学にも静岡学園中、神村学園には神村学園中、プレミア所属ではないが浜松開誠館にも浜松開誠館中がある。

中体連の全国大会決勝を静岡学園中と浜松開誠館中が争ったと記憶している人は多いはず。
ちなみに浜松開誠館中のキャプテンだった川合亜門選手は中学生の時から東海プリンスリーグに出場している。
まさに、クラブユースの下部組織のそれと同じだ。

また、
昌平にはFC LAVIDAがあるし、興國にはRIP ACEがある。帝京長岡には長岡JYFCがあってこちらは雪国らしくフットサルの強豪チームでもある。

つまり、
強豪私立高校は資金力にものを言わせて中学校のサッカー部との一貫化を積極的に図っているし、中学校が無い学校にも実質下部組織と言える街クラブを抱えている。
そう、よくよく見てみると体系的にはクラブユースと何ら違いが無いのである!


ちなみに私立高校ではないが、最近静岡の中で力を付けてきている富士市立高校もまた、富士スポーツクラブという下部組織を”実質”保有している。

こちらは個人持ちではなく、すでにあるNPO団体との提携関係。これが成立してしまうところに静岡のサッカー処としての強さをヒシヒシと感じるわけですが、
いずれにせよ強くなるチームと下部組織の因果関係を感じずにはいられないわけです。



・高体連強化の理由② ガンバ大阪の変化

部活は冬の選手権という晴れ舞台があるものの、クラブユースと比較してプロには成りにくい。
そんな定説を覆すきっかけを作ったのはガンバ大阪だったと個人的には思っています。

ガンバユースと言えば育成。育成と言えばガンバ。
そう言っても過言ではないほど名選手を多数輩出しているそんなガンバが、ユースからの昇格組だけでなく積極的に”ユース外”から選手を獲得しだしたのが2016年の事。

中でも最近一番インパクトを残しているのが中村敬斗選手
正確には部活ではなく街クラブ(三菱養和)出身ですが、クラブユースに所属しなくてもプロになれるし、日本代表にもなれるというのを強烈に示しています。

ゲキサカさんより

こういった事例をもとにして、例えばガンバユースの昇格を蹴って静学に入った高橋隆太選手など新しい進学の形も出てきたりして、高体連は名実ともに強くなっているわけです。


急激に強くなった高体連。
しかしながらこれにより、見過ごせない亀裂が生じていることもまた事実のようです。



■不祥事と、仕組みの問題

下部組織を整備して、より多くの生徒たちがその門を叩くようになった高体連(部活)。

基本的に私立学校は収益の観点から来るもの拒まずの姿勢を取ると思うのですが、その拒まずの思想が問題を引き起こしています。


生徒が起こす不祥事です。



高校生とは未熟な生き物です。
そう言い切れるソースは自分自身で十分ではないでしょうか。

大事な大会前であるとか、それをしたら誰に迷惑がかかるとか、そんなことは本人たちも理解しています。しかしながら、分かっていてもやってしまうのが未成年だったりします。

一瞬の感情なのか、周囲とのノリなのか、理由は様々ですが高校生は過ちを犯します。
それが一線を超える(犯罪である)場合は少ないかもしれませんが、飲酒喫煙ぐらいはします

そんなこと私はしない!と言い切れる人はいても、
自分の周りも含めて絶対にそんな奴いなかった!と言い切れる人はほとんどいないのではないでしょうか。
つまりいるんです。何百人も部員がいれば、一人や二人は。


下部組織化して、人気が出て、大きくなった強豪校。
強化の面では整備されていても、それに管理面が追いついていない。

つまり強豪校は、強くて、脆い。
これが実態です。

それは本来「学校」と「部活」が持つべき教育的観点を置き去りにして、強さばかりを求めてきた結果なのかもしれません。


恐らく問題のありかを生徒の態度のみに求めたところで同じ過ちは起こるでしょう。これは仕組みの問題です。

部員が500人いるならば、実力的に500番目の選手に対しても生活面の指導や心理的なケアが出来るかどうか。
そこに資金を投入できるかどうか。


ただただ強さをも求めていれば、金銭以上に失うものがあります。
その大きさを知った今、お金の使いどころをいち早く察知し、行動に移した高校のみが生き残っていくのかもしれません。


注目していきたいと思います。





本日も、最後までお読みいただきありがとうございました。


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