見出し画像

【ブックレビュー】山奥で暮らすニートたちの日々から気付かされたこと『山奥ニートやってます。』

こんにちは!
東北暮らしの週末ライター、すずき・ちえです。

みなさんは「山奥ニート」という言葉を聞いたことはありますか?
和歌山県の山奥の限界集落と呼ばれる地域で、共同生活を送るニートたちがこのように呼ばれているようです。

私は、NHKの特集で山奥ニートの暮らしの場「共生舎(きょうせいしゃ)」を知りました。共生舎があるのは、最寄駅から車で2時間(うち1時間は車のすれ違いがやっとの山道)、人口5人、平均年齢は80歳を超える地域です。そこに20~40代の若年層のニートが15人……(2020年5月)

限界集落というと、自給自足の生活、草刈り、雪かきなどの作業が多い、近隣住民とのつながりが密という印象があったので、意外に思いました。

そしてなぜ限界集落に来たのか?、どんな人たちがいるのか、そして生活費はどのように工面しているのかを知りたくなり、手に取ったのが『「山奥ニート」やってます。』でした。


著者の石井あらた氏は、自身も「山奥ニート」を名乗り、共生舎の理事として自主運営しています。
本には、共生舎での生活の様子、移住するまでのいきさつがオープンに書かれています。また、山奥ニートとして暮らす5人へのインタビューでは、それぞれが共生舎を知ったいきさつや、生活のことなどが丁寧に聞き書きされていました。

私が驚いたのは、お金のことです。
山奥ニートと単身世帯(総務省統計局 2018年家計調査結果)の月平均支出額を比較した表が載っているのですが……
単身世帯が月16万3000円弱の生活費がかかるのに対し、山奥ニートは何と!月1万8000円で暮らしている様子。そして、かけるお金は少ないのに、何だかとても充実していることがうかがえたのです。

例えば食費は月に9,000円で、ほぼ自炊。
材料は山菜など自然のものを採ったり、地域住民からおすそ分けされたりするそう。15人いるので交代で作ればワンパターン化することなく楽しめる。

また、交際費0円ですが、寂しくなったら人が集まっているリビングに行けば話が出来る。

もちろんお金が足りなくなれば仕事をしに行く!

田舎は仕事が少ないと言われるけど、年間を通じて月20万もらえる仕事が少ないだけだ。期間限定だったり、単発の仕事は結構ある。
(中略)
過疎集落では、若いというだけで貴重な人材だ。

「山奥ニート」やってます。より引用


しいたけの菌打ち、林業の手伝い、キャンプ場のバイト、台風後の片づけなど地域での仕事もたくさんあり、住民たちにも頼りにされているようです。

この本を通して「豊かさ」って何だろう、と考えさせられました。
確かにお金を払うことで、得られるものや楽しめることは多いと思います。
家や土地、車、衣食住など上を見ればきりがありません。

けれども、新鮮な野菜やキノコなどの自然の恵みや、人との関わりで受けられる、お金では買えない豊かさがあることに気づかされました。

そして、それぞれが持つ価値観を押し付けることなく、生きていける世の中になればいいなと思いました。









この記事が参加している募集

わたしの本棚