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【エッセイ】離れて気がついた「贅沢」

仕事の都合で2年ほど、東北地方のある、山あいの地域にいたことがあります。

その地域を一言で言い表すとすれば、「日本の古き良き山村」といったところでしょうか。

山に囲まれた中に田んぼや畑が点在しており、農業が主な生業になっています。(兼業農家が多い)
農家じゃなくても、自家用に野菜を作っている人も多くいました。

当時の勤務先では、地元の社員がいたこともあり、地域の人たちからお裾分けをいただくことがありました。
主に旬の野菜です。

ちょうど今ごろの時期は、「キュウリ」が多いのが特徴。タイミングが重なって2日連続で、キュウリをいただいた「キュウリラッシュ」もありましたっけ(笑)…以外と大量になります。

「(形が)格好悪くて、申し訳ないんだけど…」と言いながら、遠慮がちにキュウリがたくさん入った袋を差しされたこともありました。


確かに袋の中のキュウリは、V字に近いU字型だったり、大きくなりすぎていたり、お世辞にも形が良いとは言えないもの。まずスーパーでは見かけないであろう、ユニークなビジュアルです。

けれども、採れたての証である、表面の刺さるような「イボイボ」は健在。食べてみるとみずみずしく、力強い新鮮な味でした。
さらに味噌をつけると、キュウリの自然な甘みが引き立ちました!

一方、当時の職場から車で30分以上かかる、市街地のスーパーでキュウリを買ったこともあります。
形はまっすぐで見た目は良いのですが、切ってみると切り口が白くなっていて、ガッカリすることもありました。

やっぱり野菜は、見た目がよろしくなくても、新鮮な方が良いなと思いました。
けど、異動になり都市部に引っ越した時、新鮮な野菜を手にいれるハードルの高さを痛感させられました。

週末の休みに、朝から農村部に行くと、「道の駅」で採れたての野菜を買うことはできます。
しかし、平日にフルタイムの仕事を終えてから、車で1時間かけて買いに行くことは難しい。そもそも、夕方には朝どりの新鮮か野菜は、すでに売りきれてしまっています。

野菜を新鮮なまま食べられることが贅沢なことだった、と知ったのは、この土地を離れた後のことでした。

今年も夏がやってきました。
スーパーでキュウリを見るたびに、不細工だけど新鮮なキュウリの味を思い出します。