【読書記録】『文にあたる』
好きな本のジャンルのひとつが、仕事について書かれたエッセイである。なぜなら、自分が出会うことがなかった職業を知れたり、作者の仕事観にふれたりできるからだ。
最近、「校正者」の方が書いた本『文にあたる』を読んだ。今までよく知らなかった書籍や雑誌の校正という仕事について書かれており、興味深く読んだ一冊だった。
著者の牟田都子氏は、プロフィールによると図書館員を経て出版社の校閲部に勤務し、2018年より個人で書籍や雑誌の校正をされているという。
私は今まで「校正」という仕事について、よくわからずにいた。文法上の誤りや、書かれている内容に矛盾点がないかをチェックする仕事と思っていた。
が、実際は何人かの目でチェックが入ること、作家が書いたものと食い違いがないか、インターネットや資料を丹念に調べる地道なものだとわかった。
私が興味がわいたのは、辞書に関する話だった。辞書を買おうとしていたが、どの出版社のものが合うのかわからず先延ばしにしていたのだ。
プロの校正者はどのような辞書を使っているのか……
答えは複数の辞書を持ち、使い分けているのだという。
小型サイズのもの、新語に強いものなどで、複数使い比べることにより特徴がわかるようになるとか。辞書の違いについて思い至らなかったので新しい発見だった。
本書には著者の校正の仕事を通しての気づきや、校正者となったいきさつや仕事への想いが綴られている。
本が好きな方はもちろん、他の人の仕事観について知りたいという方にもおすすめである。