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【読書感想文】吉村昭『わたしの流儀』

この本を読んだきっかけ


昨年、お客さんの好みを聞いて選書するという、ある本屋さんのイベントに参加しました。
そこで「ノンフィクションが好き」と伝えたところ、吉村昭氏の『破獄』を薦められ購入。脱獄を繰り返す主人公にハラハラドキドキしつつも、淡々とした文体が自分に合っていたのか、読みやすく感じました。

読書家の友人にその話をしたところ、彼女も吉村氏の作品が好きで、何冊か文庫本を貸してくれました。そして私は、『三陸海岸大津波』、『羆嵐』、『間宮林蔵』、『海も暮れきる』と読み、吉村作品にハマっていきました。

今回読んだ『わたしの流儀』も友人が貸してくれた中の一冊でした。


感想


数冊しか読んでいないのですが、私の中で吉村氏の作品に対して「綿密な取材をもとに、事実を客観的に見て、淡々とした文体で書いている」という印象がありました。
『三陸海岸大津波』や『羆嵐』は、リアルに映像が浮かんでくるかのようで、淡々とした中で恐ろしさを感じたくらいです。(前者は、地元で東日本大震災を経験したからかなおさら…)

ところが、エッセイになると柔らかい印象に変わりました。大物作家の意外な一面を見た、という気がしました。

内容としては、大きな6つのカテゴリーの中にそれぞれ20前後の短い話がおさめられています。著者自身が日々思っていることや、家族とのエピソード、取材や講演での話など作家の日常が垣間見れるようでした。

個人的には、著者の人相にまつわるエピソード『人相』や、野球についての奥様の突拍子のない質問がとぶ『家内と野球』など、微笑ましい話に思わず吹き出してしまいました。

また、『羆嵐』の執筆に至ったきっかけの話があり、興味深かったです。執筆のための取材・調査や地方講演で数多く出張されていたようで、旅先でのエピソードもあり、紀行文としての一面もあります。

一つ一つの話が短く、テンポよく読めるので通勤電車で読むのに良いかもしれません。

著書の取材の話を読むと、その作品も読みたくなりました。


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