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【読書記録】「共感」こそがエッセイの楽しみ~津村記久子『まぬけなこよみ』

 最近、エッセイを書くのが楽しい。自分主体で日常のひとコマや、日々感じていること、好きなことを自由に書けるからだ。普段、取材記事を書くことが多いが、第三者について書くのとはまた違った面白さがある。

 そんな「エッセイブーム」真っ只中の私が最近読んだ本は、津村記久子さんの『まぬけなこよみ』というエッセイだ。暦の(二十四節気)七十二候ごとに、その時期に合う言葉について書かれた72編が掲載されている。例えば、今の時期(1月15日頃)であれば、「風邪」というキーワードで書かれている。

 何気ない日常の話、子どもの頃の話、住んでいる地域の祭りの話など筆者が自然に話している感じで、気負わずに読めた。また、「こんなことあるよね~」と共感する話も多かった。

 私が最も共感したのは前出の「風邪」の話。

代表的な風邪の恩恵というと、早退である。
 体育を見学できるかできないか微妙なところの「風邪気味」と、確実に早退できる「風邪ひき」の間には厳然たる線引きがある。

 一口に「風邪」といっても引き始めから、インフルエンザ寸前のような重いものまで様々な症状がある。子どもの頃、怠け者の私は、早退して家で寝たり、テレビを見たりの自由を求めて、少しでも風邪のような症状が出ると保健室へ行き、早退のチャンスを狙っていた。

 が、そこには37℃の壁があった。そこが早退できるか否かのボーダーラインだ。まずは熱を測るところから始まる。ところが、熱が出にくい体質の私は、いつも壁を越えられず、保健の先生に「保健室で少し寝てから様子をみましょう」ということになる。(ちなみに、風邪をひいて熱を出すとするといつも学校が休みになる土日だった…自分の真面目さが、こんなところで発揮されるとは・・・・と悲しくなったものだ)

 学生でなくなりだいぶ経った今は、健康のありがたみを感じる日々となり、そんなことはすっかり忘れていた。そんな時、この作品と出会い、筆者も同じような経験をしていたことを知る。そして当時の感情をありありと思い出した。「同じように思っていた人がいたのか」とうれしくなり、一方的に、それも文章でしか知らない筆者と語りたくなってしまった。

 「こんなこと、あるある!」と、口に出さずとも共感できること、それがエッセイの醍醐味なのだと思う。そんなことを感じた一冊だった。

 <おまけ>

余談だがこの本に取り上げられていた「常夜鍋」を作ってみた。(「お鍋の幸福」より)

 常夜鍋は、しょうがのだしで豚肉とほうれんそうとニラを煮て、味ぽんと柚子こしょう、またはコチュジャンでいただく鍋である。二番目の会社で一緒に働いていた年上のパートのSさんに教えてもらった。

今が旬の肉厚のほうれん草のほろ苦さを味わえる。肉もたっぷり食べられる。(さっぱりしていて、胃もたれしない)ショウガで体も温まる。と、今の時期にピッタリの鍋だった。

肉好きの方におすすめです♪

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