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【インタビュー】「手に取りやすく、身に着けていて嬉しくなるジュエリーを!」金属や糸を使ったジュエリーを製作「ヨコイト装身具」

 こんにちは。ライターのすずき・ちえです。
みなさんは、お気に入りでよく身に着けているアクセサリーはありますか?私のお気に入りは、2年前に購入したシルバーのイヤリングです。

展示会で見てひとめぼれ!(提供写真)
実際に身に着けた時に写した写真

 丸みがあって可愛らしい形や、シンプルがゆえに幅広いテイストの服に合わせやすいところが気に入っています。

 このイヤリングを作ったのは、「ヨコイト装身具」の屋号で活動する、錺職(かざりしょく)のイトウヨウコさん。製作を始めたきっかけや今の作風になった経緯についてお話を伺いました。

「身に着けて楽しくなるジュエリーを」

ヨコイト装身具のピアスやブローチ。金属、糸、天然石など様々な素材が使われている

 ヨコイト装身具の作品は、彫金、編み物、縫物、ビーズワークなどの技術を組み合わせているのが特徴です。イトウさんはデザインから製作まで一貫して行い、年一回、自身が主催する作品展や、宮城県内外で開催されるマルシェイベントで展示・販売をしています。

 「日常生活で、身に着けていて楽しくなるものを提供したい」と話すイトウさん。作品の多くは動植物、生活道具など私たちの身近にあるものがモチーフで、動物の毛並みや葉の葉脈など、高度な技術を要する、細やかな部分も表現されています。そのベースとなっているのが、宝飾職人直伝の彫金の技術です。

作品展の様子。金属はおもにシルバーを使っているという(提供写真)
「アクセサリーや手仕事を身近なものとして楽しんでもらいたい」という想いから、ワークショップも開催する(提供写真)

転機が重なり「ヨコイト装身具」立ち上げ

 イトウさんは、お祖父さまが時計職人、お父さまは版画家、お母さまは洋裁が得意で子どもたちの服を手作りするなど、手仕事が身近にある環境で育ちました。自身も幼少の頃より、ビーズ細工などに親しんできたそうです。

 さらに進学で北海道に引っ越した後は、かねてから興味があった金属加工の技術を身に着けるため、小樽市の宝飾職人・谷澤典夫氏に10年ほど師事し、彫金を学びました。

 「当時は自由に作りながらも、いつか屋号を決めて、自分の工房を構えたいと考えていました」と話すイトウさん。転機は、北海道から転居した先の宮城県で縁があり、自分の工房を設けたこと。同時期に展示会への出展の誘いがあったことも作家活動を本格的に始める後押しとなりました。

宮城県石巻市にあるイトウさんの工房。彫金には欠かせない水道の隣に作業机を設置。作業をスムーズに(提供写真)

 「ヨコイト装身具」の屋号の由来は、イトウさんが自身の名前をローマ字で書いた時に浮かんできた言葉「緯糸(ヨコイト)」。「布を織る時は、初めから張っている経糸(タテイト)に緯糸を通します。固定された経糸に対し、緯糸は自由で色を変えることもできるなど、彩りを加えていくイメージがありました。そこから楽しみや喜びが加わっていくようないい名前だと感じました」

 2016年、イトウさんは「ヨコイト装身具」として宮城県内外で活動を始めます。各地で展示や出店を重ねるうちに来場者との交流が生まれ、オーダーメイドの依頼されることも。「中でも印象的だったのが、ラズベリー農家の方からです」と言います。

 2018年に山形県新庄市で行われたイベント、kitokitoMARCHE(キトキトマルシェ)。出店していたイトウさんは突然、来場者から「ラズベリーの実はできますか?」と尋ねられます。聞くと「お客様に実の形を頻繁に聞かれるので、見本にできるものがほしい」とのこと。

2018年のkitokitoマルシェの様子。友人の作家とのユニット「はりいとけんきゅうしつ」で出店(提供写真)

 当初は思いもよらぬオーダーに戸惑ったイトウさんでしたが、師匠の「できないと言いたくない、職人だから」という言葉が頭をよぎり、引き受けることに。持ち前の技術で作り方を編み出し、ラズベリーの赤を表現するために色味の異なる天然石やビーズを数種類準備。依頼者と色味などをすりあわせながら進めていきました。

金属で作った土台に、シルバーで作ったヘタと銀線を付け、銀線にサンゴの玉を差し込む(提供写真)
完成したブローチ(提供写真)

 こうして出来上がったのはブローチでした。「ラズベリーのイメージにピッタリ!」と依頼者からの反応は上々。「ジャケットに身に着けられるので、お客様の目に留まりやすく、ラズベリーの実についても説明しやすくなったと、とても喜んでもらえました」とイトウさんは笑顔で振り返ります。

これから

 近年は、感染症拡大の影響で思うように活動できない時期も続きましたが、「状況をみながら作品展やイベント出店、ワークショップもやっていきたい」というイトウさん。「今後も気軽に手に取れて、身に着けて嬉しい気持ちになれるものを作り続けていきたいです」。

 最後にイトウさんに、様々な素材や手法をミックスした作品作りをする理由を尋ねてみました。すると、「金属加工に軸足はあるものの、他の手芸も好きなのでうまく組み合わせた作品作りをしたかった」という前提のもと、「複数の技法を組み合わせることでそれぞれの足りない部分を補えるから」と話していました。

 例えば、金属は高級感がある一方で、色のバラエティが少ない、硬くて重いなどの制約がある。だが、糸やビーズは強度こそは金属に劣るものの、色が豊富で軽さがあるというメリットがあるのだそうです。

 それぞれの素材の特性を生かす一方で、ユーザーが身に着けやすいようにデザインと実用性を兼ね添えた「装身具」であること、それがヨコイト装身具の魅力だと感じました。

 私がヨコイト装身具のイヤリングを付ける回数が多いのは、デザインのかわいらしさで気分が上がることだけではなく、付けていて痛くない、外れにくいといった着け心地のよさにもあったことに気が付きました。

ある日の製作の様子。アイディアを書きとめたノートをもとに丁寧に糸を編んでいく

 ヨコイト装身具の情報はInstagramで公開されています。みなさんもぜひ一度、ご覧ください。きっと自分にピッタリのものが見つかるはずです!

ヨコイト装身具 Instagram

https://www.instagram.com/yokoitojewelryworks/