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男の子用の絵の具セットを買ってくれた母にお礼を言いたい


小学3年生の時、親が学校に呼び出しをされた。
理由は、私が男の子用の絵の具セットを欲しいと言って聞かなかったからです。


当時は今みたいに絵の具セットの種類はありませんでした。
ピンク色と水色の2色。
そして、先生は好きな色の絵の具セットに丸をつけて申込のプリントを出してくださいと言いました。

私は、見本として見せられた絵の具セットを見比べました。
少し蛍光がかったピンクと水色。
パキッとした明るい色は、地味とは言い難いものでした。
ピンクはアイドルの衣装みたいで可愛い。
きっと女の子なら、こっちを選ぶだろう。
でも私は、綺麗な空みたいな明るい水色の絵の具セットを気に入った。
それに、丸をつけて提出しました。




しかし提出したプリントを見て、先生は私に言いました。
「水色は男の子用で、普通、女の子はピンク色を買いますよ。
ピンク色にしましょうね。」と。

私は「好きな方って言ったのに?」「ふつう?」「私は水色がいい。」
そんな気持ちがぐるぐるして、言われた通りにピンク色に丸をつけ直すことができませんでした。


その後、詳しくは覚えていませんが、母と一緒に放課後の教室で、先生と向き合いました。


そして、先生は私にしたのと同じ説明を母にしました。
どちらかに丸をつけてと言いましたが、普通に考えて、男の子は水色で女の子はピンク色なんです。みんなそうするのです。
今はよくても、高学年になった時に後悔されるかもしれません。
などなど、色々な場面や、想定できるトラブルなどの話しをされて、何とかピンク色にしてくれないかという説明でした。


母は「はい。」とか「そうですね。」なんて言いながら、先生の話にうなずいていました。
私は、とりあえず不機嫌さを全開にして黙っていました。
やっぱり、女の子がピンク色と決められていたことに納得いかなかったと思います。


でも、こうして親と一緒に学校に呼び出されて、悪いことをしてしまったという気持ちも半分あり、どうしていいのかわかりませんでした。
その場で泣いて主張するほど、もう子供ではなかったし、素直にピンクに〇をつけられるほど大人でもありませんでした。


当時、私はピンク色が嫌いでした。
いわゆる女の子らしいものが嫌いでした。
キラキラのアクセサリーとか、フリルとか、レースとか、スカートとか。
おそらく「可愛い」といわれるものを拒絶していた時期でした。

そのことの詳しい事はまた機会があれば書きたいと思います。

でも、親まで呼ばれて、こんな風になったらピンク色になってしまうなぁと感じていました。
それも、仕方ないことなのかなぁとボンヤリと考えている自分もいました。



でも、母は先生に「水色で大丈夫です。」と言ったのでした。
先生も母がそういうと、後はもう何も言いませんでした。
そして、静かに学校から帰り、私は水色の絵の具セットを手にしました。


先生が案じていた通り「なんで水色なの?」とか「なんで男の子用を買ったの?」とか「お兄ちゃんのお下がり?」とか色々と言われました。

でも、そんなの最初だけでした。
だって、絵の具セットの中身は一緒で、かばんの色が違うだけだから。

あれから時が流れ、私の息子は小学生になりました。
学校の備品も、今は様々なものがあります。
シンプルなもの。キャラクターもの。オリジナルのデザインのもの。
価格帯もさまざまです。
そして、息子の絵の具セットを選ぶ時に、この時のことを思い出しました。

そして、ハッとしたのです。
ああ、お母さんってすごいなぁ。
私があの立場だったら、ピンク色にしなさいと言ったかもしれない。
というか、たぶん言うと思う。


息子が、女の子用として用意されているだろう可愛いらしい絵の具セットにすると言っても、いいよと言えただろうか?と疑問に思います。
もしかしたら、夫にも言って、2人でわーわー言ってしまうかも?とも思います。

やっぱりお金を出して買うものだから、あとで嫌だなと感じて欲しくないと思ったのです。
例えば、今はキャラクターのついた絵の具セットが好きでも、高学年になったら恥ずかしく感じてしまうかも、とか。
なるべく、そういう事にならないように、予防線をはりたくなる。
誘導したくなる。
教えてあげたくなる。

それは、まさにあの時の先生の言葉と一緒でした。
「高学年になったら気が変わるかも。一人だけ違ったら、何か言われるかもしれないよ。そうならないように、こっちがいいと思うよ。」


でも、お母さんはそうしなかった。
どうして水色にしたいのか、とも聞かなかったし。
ピンクは可愛いよ、と勧めることもしなかった。
ただ、黙って私の意見を尊重してくれたんだと、今になってわかりました。


そして、そのことを私に押し付けもしなかったのです。

あなたが決めたんだから、後で嫌になっても知らないからね、とか。
本当にわがままなんだから、とか。
学校まで呼び出されたのだから、そんな小言も言いたくなるだろうに、何も言わなかったのです。
だから、私の中でそこまで嫌な思い出にはなっていなくて、すっかり忘れていたのだなあと思います。


思い返すと、ありがとうって言いたい、のですけど。
やっぱり恥ずかしくって、言えてないのです。



今年、次男のランドセルを用意しなければいけません。
本人は黄色のランドセルを買うと意気込んでいます。
その時に、私はなんて言うのだろう。


やっぱり私は、黒とか紺色はどう?って言ってしまうのだろうなぁと思います。


コロナが落ち着いて、またお母さんに会える日が来たら、あの時のことを聞いてみたいなあなんて思います。

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