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わが家の餃子と恐怖のラーメン


息子に「願い事がひとつ叶うなら、何をお願いする?」と聞いたことがあります。
その願いは「365日ぎょうざが食べたい!」でした。


うちの家族は餃子が好きです。
夫も長男も次男も。
そして、作っているうちに、私も好きになりました。

息子は毎日食べたいっていうけれど、だいたい2週間に1回は作っているのに。
なのに、もっと食べたいの?とびっくりしてしまいました。


いつも休日の夜ご飯の定番がぎょうざ。
その理由は、みんながめちゃくちゃ食べるからです。

50個でも足りないから、わたしがひとりで作るのはしんどくって、みんなに包んでもらえるお休みの日にしか作らない。

ひだを作らず、挟むだけなら簡単なので、5歳の次男も包めます。
生肉を触るのが不安な時期は、コーンとかツナを中身にしたものを渡していましたが、今では慣れたものです。

反対に、長男は創造性を発揮して、ぎょうざが折り紙みたいに小さく折りたたまれて出来上がります。
ぐちゃぐちゃになる時もあるけれど、それはそれで、また面白い。


いまでは、餃子を作って楽しんでいますが、私は子供時代に餃子を食べたことがありませんでした。
餃子は給食にでてくる揚げ餃子、そのイメージしかありませんでした。

母はあまり料理に興味がなく、いつものご飯で思い出すのは野菜炒め、冷しゃぶ、お鍋です。
そして、祖母の作ってくれたたくさんの副菜。
それが、ご飯。


餃子は中華料理屋で食べるもの。
そして、実家では外食をする習慣がなかったので、はじめて餃子をお店で食べたのは高校生の時でした。

友達はラーメンも餃子も食べたことがない私を、心底おもしろがり、そしてラーメンを美味しい美味しいと食べる私を不思議そうに見ていました。


私の中でのラーメンは、恐怖でした。
外食には行かない父が、定期的に、そして唐突につくる自家製ラーメン。


それは、とても大きなラーメン鉢のなかに盛り付けられていて。
たっぷりの麺と、なみなみと注がれた濃ゆーいスープ。
太くて大量のメンマ。
チャーシューとたまご。
そして、切られていないきくらげ。
極めつけは、なぜか人参丸ごとが半割になったものがのっかっている。
ほかほかと湯気をたてるラーメン越しに、父が無言で見てくる。
美味しいだろう?と。


それが、私がおうちラーメンを思い返すとでてくる、光景でした。


父が食器棚からラーメン鉢を取り出すと、私は2つ年上の兄と目を合わせました。
「今日はアレの日だな。」
そして、静かに出来上がるのを待ちます。
呼ばれたら最後。そのラーメンを食べきらなければなりません。
お腹がほんとにはち切れてしまうんじゃないかってぐらいの苦しさで、毎回なんとか食べきっていました。


そう、正直に言うと、美味しくないんです。
もっと言うと、麺とスープは美味しい。
なのに、なんでそんなにメンマのせるの?
なんできくらげ丸ごとなの?
そんで、なんでラーメンに人参を丸ごとのせるの?


今なら父に言えるでしょう。
でも、当時の私は、それが当たり前で、それがラーメンだと思っていたのでした。


今、家族と餃子を包んでいると、ラーメンも食べたいねって話になります。
そうすると、夫がインスタントで作ってくれたり、生めんを買ってきて、スープはそれぞれが選んだり。
トッピングもみんな自由に。
手が込んだことはしていないし、簡単だけど、とっても楽しいご飯の時間です。

たしかに、手作りのご飯はありがたい。
作ってもらえるだけで感謝。


だけれど、やっぱり手が込んでいることと、相手が喜ぶことはイコールじゃなくて。
家族と作ったぶかっこうな餃子は、お店にはかなわないけど、ほんとに美味しいと思っています。
そして、父の作ってくれたラーメンはおいしい時間にならなかった。
でも、みんなで準備していたら違ったのかもと思う。


私も兄も結婚して、夫婦二人だけになった両親。
前に帰省をした時、冷蔵庫の中にはスーパーかっていうくらい、たくさんのラーメンスープの素やパウチの具材が入っていた。

すごいたくさんあるねって言うと
「それね、お互い好きなものを選んで食べるんやで。食べる?」
そう言って、父は嬉しそうにチャーシューもメンマも煮卵もあるよーって机いっぱいにならべてくれた。
それを見て、母もあきれて笑っていた。


2人とも笑顔だった。
そう、足りないのは笑顔だったのかもしれない。


昔、ラーメンを作ってくれた時。
「なんでラーメンに人参やねん!」
「メンマ多すぎるやろー。」
そう言って笑えていたら。
きっと、楽しくておいしいラーメンの記憶になっていたんじゃないかなあ。


父は、ラーメンが好きだったんだと思う。
単身赴任で、一緒に暮らせていなかったから、会える時にただいっしょにラーメンを食べたかっただけかもしれない。


そうして、机にならべられた材料の中から好きなものを組み合わせて、みんなそれぞれ別のラーメンを食べました。
あの大きくて恐怖だったラーメン鉢で。


簡単なラーメンでも、みんな笑っていたから。
とても、美味しくて楽しい時間でした。


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