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インスタントフィクション

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ピース・又吉直樹さんの公式Youtubeチャンネルでシリーズ化している「インスタントフィクション」を気ままに投稿しています。
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#インスタントフィクション

薄氷

薄氷

通勤は憂鬱だ。
最寄り駅まで徒歩10分、近くもなく遠くもなく感じる距離だ。
駅のホームには人が溢れかえっている。
ここで事故・事件が起きたら一たまりのないんだろうな。
電車に乗っても席に着くことなんてめったにできず、冤罪防止のために常に気を張っている。
ある意味、この場が最も集中力を研ぎ澄ませる空間だ。
会社に着くと、上司の目線に気を遣いながら、やりがいもない事務作業をこなす。
午後からは外回りが

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君と枕

君と枕

寝ぼけ眼で目覚めると、陽に照らされた君がいた。
ワンルームを支配するセミダブル。
僕の枕に君の香りがこびりつく。
梅雨入り前、最後の晴れ間だった。

君とこうして出会うたび、僕はなぜ思春期時代の母を思い出すのだろう。
君が寝返りを打つと二、三年前に流行った香水の香りが広がった。

ごぉぉっと外からヘリコプターの飛ぶ音が聞こえた。
外に目をやると、向かいの家の屋根から黒猫がこちらを覗いていた。

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ストーカー

ストーカー

「カラフルでオーバーサイズの服ばかりを好んでいたのに、今じゃ白のインナーに灰色のアウターを着てる。なんか、かた苦しいわね。」
君は僕に向かってそう言った。
言われてみれば、窮屈だ。
しかし、今の自分にはこの格好が相応しい。
だが、どうだろうか。今の彼女は全身真っ黒で僕より地味だった。
そう見えた気がした。

「私はもっと長い時間、あなたの世界に寄り添えると思ってたわ。」
天を仰ぎながら飄々とした声

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痛み分け

痛み分け

踏まれる。私はただ踏まれる。
足蹴にされ、温もりを感じる。
それでいい。それがいい。

生まれる。私はただ生まれる。
私には運命を共にする者たちがいる。
例外なく皆が、自ら動かない。

草臥れる。私はただ草臥れる。
醜く、色変わる。
それでいい。それがいい。

私はこの為に生まれたのか。
そうだろう。
私がこうしていることで、あなたが上に上がれるのだから。

私はこうするしかない。
そうだろう。

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