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白いカーネーション:8「明日、いっちゃうかもよ」

母は、心の強い人で、竹を割ったようなところもありましたがが、
実は寂しがりで、情に厚い人でした。
そして、面白い人でもありました。

「なにか、おつまみ他にないかね」と言う父に
「あとは、鼻しかないわねえ」という
コテコテ漫才みたいな会話も覚えています。

認知も進んだころ、
面会にいったら寝ていたので、
「お母さんー、オーイ、お母さん!」と
何度も呼んだら、
「うるさい」
と言われてしまいました。

こちらとしては、
予定をやりくりして、新幹線にのって
わずかな時間(当時15分)のために
きてるのに!
と、ちょっとカチンとして、
「じゃあ、もう、帰るわ」

本当に帰ろうとして、
「じゃあね」とドアをあけたら

ベッドでやっとやっと目をあけて
「明日、いっちゃうかもしれないわよ」
笑えるやら、怒れるやら。

結局そのまま寝ていて、
その日は帰ってしまったのですが、
あんな別れかたで、もしホントに急変したら。
と、新幹線の中でモヤモヤしたのを、覚えています。

あれは
母の帰るな、という本心だったのか、 
面白いことをいったつもり、だったのか。

エピソード4.「忘れられないお花見」にあるように、
素敵な面会が最後で、
それっきりにならずによかったですが。笑。

今思えば、施設に入る前から、
きついことをいって
帰ってきてしまったり。

新幹線の夕方の上り列車は、
いつも寂しさと後悔がいっぱいでした。










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