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須坂キラビトvol.4 酒屋だからこそ出来る小さなこだわりを。ここぞの“シンザキ”を目指して

地域おこし協力隊の北直樹(自称のーす)がお届けする連載マガジン「須坂キラビト」は、須坂市に関わるキラリと光る情熱を持つ人をテーマに、活動のきっかけ、これまでの苦労や未来の活動についてもお話を伺う。

第4回目は須坂市日滝原の「新崎酒店 新崎 孝志さん」を取材した。

新崎 孝志さん
須坂市日滝出身大学を卒業後、初代の父親からの意向を受け事業を承継。
現在は独自の仕入れルートで他店には無い品揃えを展開し、市街や県外からのお客様も多い。
本業と共に酒Trap(さけトラップ)という団体でも活動中。
酒マルシェでご機嫌なのーすとの2ショット

【日滝原に突然現れる酒屋】

日滝原の静かなリンゴ畑の中に突如と現れる洗練された酒屋“新崎酒店”そのルーツについて探ってみた。

――はじめに聞きたいのが立地についてです。畑の中に突然現れてびっくりしました(笑)

「自分の父から始まり私が2代目なのですが、物心着いた時からリンゴ畑の中にありました。私も気になっていろいろ聞いてみたのですが『たまたま』だったそうです(笑)なぜ403号線沿いじゃなかったのか?自分が聞きたいくらいです(笑)」

――実際に立地は集客に影響はありましたか?

「昔は有ったと思いますね。でも、今はインターネットがあるので気にならないです。若い人が来たときに、どうやって見つけたの?って聞くと、だいたいがSNSとかGoogleMapですね(笑) 小布施へ抜けるルートが渋滞していて迂回したらたまたま見つける人も居る。そんな話をするのが面白いんです。私はGoogleMapの使い方、全然知らないんですけど(笑)」

畑の中央に位置する


【突然舞い込んだ事業承継】


――もともと父親が始めた仕事と聞きました、家業を継いだ経緯を教えて下さい!

「私には兄姉がいるんですけど、2人とも家業を継ぐ気がなくて(笑)私はお客様のダイレクトな反応で仕事がしたかったので、農家や自営業をしたいと考えていたんです。そんな時、父から継いでくれないか?と相談を受けて・・・やりたかった自営業が出来るし、0からのスタートではなかったので、それも良いかなと思って、勤めていた食品会社を辞めて引き受けました」

――孝志さんはその後、関東の地酒屋で5年間修業し2010年から事業を承継することに。承継後どんなことがありましたか?

「関東で修業して須坂に帰ってくるときに自信満々で帰ってきたんです。でも全然売れなくて。本当にびっくりするぐらい売れなくて(笑)これはまずいぞ、生きていけないぞと思い、0から真剣に考えていったんです。」

――そこから何を見つけましたか?

「私は父が作った販売方法や仕入れルートをそのまま継いで何となく販売していたんです。でも、それは自分のお酒でもないし、そのお酒のことも良く知らない。こんなやり方でお客さんに美味しさが伝わるわけがないと思っていました。夜な夜な何を売りたいかを考えた時に自分世代のお酒を売りたいと思ったし、作り手・売り手・買い手の三方良しの関係にすることが理想だった。もちろん昔の仕入れ先さんも大切にしながら、少しずつ自分の色を出すようにしていくと、想いが伝わったのかお客さんが増えていった感じがします。」

――初めて来たときも品揃えが多く、迷った時にお話しさせてもらって、その時に丁寧に教えて頂いたのが印象的です。接客の際に気を付けていることがあれば教えて下さい。

「私自身、お客様への対応には出来るだけナチュラルに対応するように心がけています。この人は話しかけてほしくなさそうだなとか、声かけた方がいいかなとかも出来るだけ感じるようにはしているつもりです(笑)話しかけて難しい知識をひけらかしてもお酒のハードルが上がって楽しく飲めなくなっちゃいますし。お酒って本来、自分が一日頑張ったご褒美ぐらいの感覚で味わえばいいと私は思っているんです。だからこそもっと気軽に『疲れた時に飲めるものを・・・』とか『すっきりしたものを・・・』みたいな相談でもいいと思っています。お酒にルールなんて無いので、わかりやすい言葉で話をするように心がけています。でも、やっぱり私からは話しかけにくい時があるので、声をかけてくれるとすごく嬉しいです(笑)」

是非、この記事を見て行ってみたい・お酒のこと聞いてみたい!と思った方は気軽に話かけてほしい。地域おこし協力隊の記事を見た!と言えば、よりいっそう優しく接してくれるはずだ(笑)

――商品を買って頂く方に“ここを見て欲しい!”というものはありますか?

「私達の商売って、売る前に商品の味見が出来ないんです。だから出来ることは限られていて・・・。その中でも特に“温度管理“を特に大切にしています。日本酒は冬に作られるお酒なんですけど、生酒は製造されてからマイナス3℃をキープすることで美味しさを保つことが出来るんです。夏になるころ温度管理が出来ていないお酒って美味しくないんですよ。だから新崎酒店では商品を陳列している冷蔵庫以外にも保冷用の冷蔵庫があって、その中でお店に並ばないストック品も”温度管理“しているんです。照明の明かりもお酒には良くないのでダウンライトで直接お酒に当たらないようにしています。他には小さなことですが、ラベルシールの裏に『感謝』というラベルを入れています。お酒って感謝とか優しい言葉をかけると美味しくなるらしいんです(笑)そんな小さなことしか出来ませんが、人を通じての販売ならではの温かみを大切にしていきたいって考えているんです。」

ダウンライトでモダンな印象だが実は商品への配慮だった
ボトル内側から見える感謝の文字

【さいごに】
――これからの夢や目標があれば教えて下さい!

「私には2人の子供がいるんですが、私の背中を見て『この店を継ぎたい』と思われる仕事をしていきたいです。そして、いつか家族で美味しいお酒を販売できたら楽しいなって思うんです。そのためにはまず自分がこの仕事を楽しむことが一番かなと思っています」

経営者の顔から父親の顔になった孝志さん、息子の前でカッコいい父親で居たい。孝志さんもそんなカッコいい父を見てきたからこそ、言えるのではと感じた。

「目指すところは地酒屋界の『ふくだや』(須坂市)さんです。私は友人とバーベキューするときや、いつもより贅沢なお肉を食べたいなーって思ったとき、スーパーよりもふくだやに行くんです。きっとそう考える人って多いんじゃないかな・・・。家業を息子さんが継いでいるところも自分の目標とするところで。いつもすごいなと思っています。
友達が来たぞ!親が来たぞ!って時に、ふくだやさんみたいに、ここぞの“シンザキ”として選ばれることが私の目標なんです」

孝志さんの目は再び経営者としてプライドに満ちた目に戻っていた。経営者として、時には父として話す孝志さんへのインタビューを通して、私の心は既にここぞの“シンザキ”になっていた。

オシャレな看板

【シンザキレコメンド!】
孝志さんもプロデュースしているという「Expert Kinoko」
好評につき完売間近の秋季限定「月泉」
飲めばわかる!という「風の森」
のんべぇレーダーが働き、そのまんま3本買ってしまいました(笑)

月泉は絶品

新崎酒店ホームページ
新崎酒店 ホームページ|地酒 | 日本長野県 | シンザキサケテン|而今 (shinzaki-saketen.wixsite.com)

酒Trap
https://saketrap.jp

【のーすレポート】
実は移住前に密かに訪れていた新崎酒店さん。
その時に長野の観光帰りの一本を相談してオススメされて買ったお酒が美味しかったことが忘れられず今回の取材をお願いした(何を飲んだかは覚えていない笑)
特に印象的だったのは「封が開けられないからこそできるサービス」という目線だ。保冷だったり感謝のシールだったり。言われなければ誰も気が付かないような工夫に強いこだわりを感じた。
いつか家族で経営が出来たら楽しそうと話しているとき、その光景を想像したら賑やかで楽しいだろうなと思った。誰かから応援される仕事、応援したいと思える仕事は見いている人も楽しませてくれる。
そんな起業家を目指したいと改めて感じた。
日本人のお酒離れが深刻と言われているが、ここぞの“シンザキ“はこれからも輝き続けるだろう。


【この記事を書いた人】

のーす

1986年7月3日 石川県金沢市生まれ
2022年8月神奈川県川崎市より須坂市に移住し妻と二人暮らし
現在、須坂市地域おこし協力隊として活動中
趣味:レザークラフト、野球、DIYなど
好きな歌手:吉川晃司、氷室京介
主な活動:空き家バンク、信州芋煮会
夢は須坂市の特産品で6次産業の企画・開発・営業で起業すること

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