Daichi G. Suzuki

神経−進化−発生(Neuro-Evo-Devo)をキーワードに進化生物学・神経科学まわ…

Daichi G. Suzuki

神経−進化−発生(Neuro-Evo-Devo)をキーワードに進化生物学・神経科学まわりの研究をしています。哲学、科学史、語学にも興味があります。訳書:『意識の進化的起源』『意識の神秘を暴く』(どちらもファインバーグ&マラット著、勁草書房)。

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理系ポスドク(海外在住)、翻訳出版する:『意識の進化的起源』翻訳記録

はじめに前回の記事(下記リンク)は、さいわいにも多くの方々にご覧いただけたようで、さまざまな反響があった。そのなかで「翻訳したい本があったときに、実際にどう動いたらよいのかわからない」という反応もあった。 翻訳出版に至る道はさまざまで、場合によりけりだ。だが筆者が理系ポスドクとしてゼロから『意識の進化的起源』を出版した経緯は、一例として書き留めておく意義はあるのかもしれない。しかもこの時、筆者は海外在住であったので、その点でも特異な事例だろう。 そこで本記事では『意識の進

    • 意識研究の思想地図2020 β版

      【※ 本記事は暫定版であり、検証ののち加筆修正される可能性があります】 「意識」や「心」は科学で解き明かせるのか。もっと踏み込んで、物理学にまで落とし込める(還元できる)のか。歴史を振り返ると、「できる派(還元主義)vs. できない派(反還元主義)」で行ったり来たりを繰り返しているように見える。 イデア論(観念論 idealism)、唯物論、実体二元論、物質一元論、唯心論(心霊主義 spiritualism)、行動主義、性質二元論、機能主義、汎心論、自然主義……。 たく

      • 【図解】「覚醒」の次元

        概要・「覚醒」の訳があてられている英単語はいくつもある ・「どの次元(軸)での覚醒か?」について考えると意味がつかみやすい ・wakefulness:目覚めた状態(awake)↔ 眠っている状態(sleeping) ・arousal:気持ちが高ぶった状態(aroused)↔ 鎮静状態(sedated) ・alertness:警戒している状態(alert)↔ うわの空の状態(absent) ・disillusion:迷いや幻想から覚める(disillusioned)↔ 迷いや

        • なぜ研究者は学術書を翻訳すべきなのか?

          概要・学術書の翻訳は学術の、ひいては文化の地盤を固めるため重要である ・学術書の翻訳は部数が出ない(=儲からない)うえに、  最先端かつ幅広い知識が必要で、専業の翻訳家から敬遠されがち ・だから、研究者の参入が求められる ・しかし、業績としてあまり評価されないので研究者にも敬遠されがち ・しかも、常勤の大学教員は業務、ポスドクは業績稼ぎなどで多忙 ・業績として学術書の翻訳出版がもっと評価されれば、研究者も参入しやすい ・それはそれとして、訳者にも(学術的・社会的な)利点はある

        理系ポスドク(海外在住)、翻訳出版する:『意識の進化的起源』翻訳記録

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          mind=心? function=機能?

          概要・原語と訳語は一対一で対応しない ・原書で読めば解決するわけでもない ・というか、使ってる本人たちも混乱している?(意図的な場合もある?) ・分野ごとに違う訳語をあてているから気づく場合もある ・それが訳書を読む利点、翻訳する利点になる 原語と訳語は一対一で対応しないwater=水? "water" は「水」ではない……ことがある。"hot water" なら「お湯」である。"water" の意味する範囲が「水」の意味する範囲より広いのだ。 逆のパターンは、"hand

          mind=心? function=機能?