見出し画像

2020-06-02 社員1200人でもオフィス無し、GitLabのリモートワーク方法論を解説

2020/06/02 に開催された 社員1200人でもオフィス無し、GitLabのリモートワーク方法論を解説 (第4回:クリエーションラインIT最新動向会議) のイベントレポートです。

●イベント概要
コロナ収束後に、企業、人々、働き方はどう変化するのか?
国内では、緊急事態宣言は延期されましたが、このままいけば首都圏でも5月末には解除される見込みです。これに伴い、経済の再起動に向けた準備が始まっています。米国でも、感染者数の増加は収まっていないものの、やはり経済再起動への取り組みが始まりつつあります。コロナ収束後、企業や、人々、働き方はどう変化していくのでしょうか?

コロナはDXにどう影響するのか?
また、コロナ以前からDXについては注目されていましたが、コロナ収束後、それはどう変化するのでしょうか。(またはしないのでしょうか?)

例えば、技術的にはどう変化するのか?
コロナ以前は、AIやIoTが注目されていました。今後は、リモートワークに関連する技術が注目されていくのでしょうか?

例えば、働き方はどう変化するのか?
コロナ以前は、「残業を減らす」ことにフォーカスされていました。今、リモートワークにおける評価の方法が議論されているが、米国も含めてどうなっているのでしょうか?

そのような中で、内製化の議論はどうなっていくのか?
コロナ以前から内製化の必要性は説かれていました。今後はますます内製化が重要になっていくのでしょうか?そうではないのでしょうか?

社員1200人でもオフィス無し、GitLabのリモートワーク方法論
GitLabという企業をご存知でしょうか。社員が1200人もいるにもかかわらず、特定のオフィスを持たず、全員がリモートワークで働いています。

米国在住の鈴木いっぺい氏が解説
本Webセミナーでは、米国在住の鈴木いっぺい氏が、まずはこのGitLabのリモートワーク方法論について解説致します。

そこを起点として、
コロナ収束後に、企業、人々、働き方はどう変化するのか?
コロナはDXにどう影響するのか?
といったテーマにつて、米国の状況も踏まえながら、また、日本の企業がどうしていくべきなのかという観点も交えつつ、解説致します。


■社員1200人でもオフィス無し、GitLabのリモートワーク方法論を解説

鈴木いっぺいさん [クリエーションライン]

画像1

●ポストコロナでITが牽引すべき領域
コロナで、以前から言われていたDXが待ったなしになった
以前から言われているものと、新しい問題が増えた
・新しい問題
  社会インフラの変革
    教育、医療、公共など
    社会、経済、生活情勢の変化
  新ワークスタイル
    リモートワーク、SaaSファーストなど
    企業のあり方
・従来の問題が変化
  ITインフラ強化
    5G、ゼロトラスト、クラウド化など
    ITインフラのモダナイズ
  業務開発/改善
    内製化、アジャイル、ソフトウェアファーストなど
    スピードとイノベーションが求められる
・DXに求められる領域
  技術のDX
  人のDX
  文化のDX
  環境のDX

●イノベーションの日米比較
・イノベーションの種類
  プロダクト・イノベーション
    新製品や新サービスの創出
  プロセス・イノベーション
    既存業務の効率化 / コスト削減
  組織イノベーション
  マーケティング・イノベーション
・アメリカの場合
  イノベーション = プロダクト・イノベーション
  連動して組織イノベーションも起きる
・日本の場合
  イノベーション = プロセス・イノベーション
  組織イノベーションとは分離

●ICT投資額の日米比較
・日本の場合
  約90%が受託開発
  1996年頃から投資額は横ばい
・アメリカの場合
  受託よりも自社開発が多い
  投資額は伸び続けている

●ICT人材の配置の日米比較
・日本の場合
  ICT企業が圧倒的
  これは日本だけ
・アメリカの場合
  もちろんICT企業にもいるが
  各事業会社にもいる

●テレワークの導入状況
・2019年
  大企業でも3割程度
  全く予定のない企業が半数以上
・業種別
  情報通信、金融業界だけが50%超え

●テレワークを導入しない理由
・テレワークにする必然性がない
  適した仕事がない
・コミュニケーションが心配
  社内コミュニケーションに支障がある
  顧客対応に支障がある
・情報漏洩が心配
・ハンコ文化の問題は意外に少ない
・テレワークを実施したくない
  75%

●コミュニケーションツールの導入状況
・メール、社内ファイル共有は多数
・他は 20%に満たないものが多い
  社外ファイル共有
  チャット、メッセンジャー
  Web会議

●アジャイルの導入状況
・導入中
  2015年 3割
  2018年 5割
・未導入企業の課題
  人材、スキル不足
  社内の理解と協力不足
  お客様の理解と協力不足

●GitLab The Remote Playbook

画像2

●仕事の未来
・コロナ禍を経て、リモート勤務が現実のものとなった企業は多い
・86%はリモート勤務が常識になると回答
・リモート勤務はつなげればいいものではない
  コミュニケーション、文化、マネージメント
  も変わる必要がある
・GitLab
  2014年から完全リモートのポリシー
  67カ国に展開する
  1200+人の従業員
・そこで学んだことを集約した
  このプレイブック
  別途公開しているGitLab Handbook
●リモート勤務の最初の5ステップ
・リモートリーダーシップチームを作る
・ハンドブックを作る
・コミュニケーションプランを作る
・ツールスタックは最小限に
・変化は常に起きる
●リモートリーダーシップチームを作る
・率先してリモート勤務のモデルを実施する
・特にすべてをドキュメント化することに
  常に励行
  その手法を広める

●ハンドブックを作る
・このドキュメントに「すべての真実」を集約
・全員がいつでもアクセスできる
・全員で常にアップデートする

●コミュニケーションプランを作る
・密な会話を促す
  各チームごとに
  繋ぎっぱなしのビデオ会議部屋
・透明性の高い環境を意識する
  ハンドブックにあらゆる情報がある
  誰でも参照、更新できる

●ツールスタックは最小限に
・大抵はGoogle Docs + Zoomで十分
・情報検索を効率よくする
  ドキュメント化の徹底は非常に重要

●変化は常に起きる
・その変化を迅速、確実にチームに伝える
・そして実行することが重要
●リモート勤務への段階的アプローチ
1. リモートなし
2. リモート許容
3. ハイブリッドリモート
  不公平感を防止
4. 単一タイムゾーン志向
  コア時間の設定
5. 複数タイムゾーン志向
  非同期コミュニケーション
●リモート作業の基盤
・インフォーマルな会話のインフラを提供
・すべてをドキュメント化
・ミーティングの指針を明確化

●インフォーマルな会話のインフラを提供
・全社全体ミーティング
  CEOから全員に向けたもの
・グループ会議
  グループごとのオフィシャル
・コーヒーチャット
  給湯室の会話
・Slack
・Zoom

●すべてをドキュメント化
・ハンドブック・ファーストのポリシー
  ハンドブックがSSOTという位置づけ
  SIngle Source of Truth
    すべての情報の拠り所
・4半期ごとのOKR
  各部門・チームが設定
  毎月レビュー
  社内に共有
・オンボーディングツール
  新入社員のオンボーディンのために必要な情報を一箇所に集約

●ミーティングの指針の明確化
・基本的にミーティングはすべてオプショナル
  参加できなくても、後から追いつけるようにする
    議事録や、録画/録音を残す
  参加することを義務付けるのは問題
    非同期コミュニケーション
・アジェンダ
  GoogleDocsにあらかじめアジェンダを準備
  全員でノートを同じファイルに記述
  絵は極力使わない
    世界中でコンテキストが異なるメンバーでは
    誤解の最大原因
    文字で残すことが確実だと行き着いた

●リモート環境への移行
・人間工学に優れた仕事環境をつくる
  オフィスデザインは、それぞれで
  ドキュメント文化が生きる
  Q&Aが起きたときは必ずドキュメント化
・リモートチームの管理
  メンバー間の信用
  コミュニケーション
  ゴールの共有

●リモート環境でのコミュニケーション
・毎日のドキュメント運用
  遠隔地にいるチームのコミュニケーションの履歴として最も有効
  記憶に頼ると危険
・テキストベースのコミュニケーション
  書き残すことを意識して会話することで
    会話に登場しがちな個人的なバイアスを除外
  文面でのQ&Aがもっとも正確で確実
  非同期の会話(時差など)にも必須
・ロー・コンテキスト文化
  リモートの世界では文面で正確な情報伝達が必須
  事務所勤務の世界はハイ・コンテキストが基本(阿吽の呼吸)
  背景も含め、何も知らない、という前提で考える

●企業文化に沿うテキストコミュニケーションに留意
・ドキュメントの半永続性
・エゴ禁止、ポジティブ思考、優しさ、感謝、謙虚

●非同期コミュニケーション
・海外拠点(時差)で、時間を合わせられない
・ミーティングの重複で一方に参加できない

●良い習慣を身につける
・ミーティングは任意参加
・非同期コミュニケーションエチケット

●ミーティング
・"ミーティングは任意"という考えを浸透させる
・必ず、アジェンダ+ GoogleDocsのリンクをミーティング招待につける
・ミーティング議事録はロー・コンテキスト
  何も知らない人でも理解できる情報量を盛る

●インフォーマルなコミュニケーション
・人間同士の信頼関係が大事
  オフィスの休憩所での会話
  オンラインでは自然発生しない
  そういう環境や機会をつくる
・絵文字は公用語
・ツールの選択/標準化
  GitLabのSingle Source of Truthは、GitLab


■感想

時差で時間を合わせられないのは、副業や複業でコアタイムが揃わないのも同じですね。今後の働き方の多様化を考えると、同じノウハウが活かせるように感じました。

・コンテキストが異なるメンバ間では、図が誤解の原因
・テキストを残すこと、ロー・コンテキストを前提にして会話内のバイアスを外す
・動画はSSOTに向かない
  長くて最後まで見ることはない
  ピンポイントで知りたい情報が含まれていても、見つけることが難しい
など

グローバルにフルリモートワークを進めてきたGitLabならではのノウハウを共有していただけるのはとてもありがたいですね!

書き起こしながらの会話は、時間がかかるのは避けられないので、他に楽で安全にする方法がないか考えたいな、と感じました。テキストを残す、ロー・コンテキストを前提にすることは変わりませんが、字幕をつけて検索できるようにし、ヒットした場所から再生できるようにしたらSSOTに含められるかも知れませんね。今後の活動で試してみたいところです。

鈴木さん、運営の皆さん、ありがとうございました!


この記事が参加している募集

イベントレポ

いつも応援していただいている皆さん支えられています。