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「好き」を仕事にしたくない理由(1436字)

「好き」を仕事に、ってよく言いますよね。好きなこと、憧れる役職、夢中になれる世界。それで食べていけるのが理想的だ、という一般論。
でも私はちょっと違う考えでいます。正確には、「好きだからこそ」仕事にしたくないのです。
好きを仕事にしようとしている先輩を見て思ったことの覚え書きです。



"仕事"に対する責任感

仕事にするということは、その分背負わなければならない責任や義務が付随し、関わる人が増えてゆき、コミュニティが増えるということになります。学生という猶予の加護から抜け出しかけている今だからこそその重さを強く感じているし、これからもこの感覚を忘れたくはないと思っています。

逃げ場が必要

好きを仕事にした場合、好きなものとその重い責務が一体化することになります。つまり、逃げ場としての”好きなこと”がなくなってしまうのです。私はそれが怖いのです。
私は趣味が割と多い方だと思いますが、その中でも一番長く続いているのはお菓子作りです。小学校低学年のころにはもう市販のスポンジにクリームを塗って遊んでいました。一時はパティシエを将来の夢と語り、製菓専門に行く選択肢もありました。でも、だんだん大学に行く方が無難だと考え始め、パティシエに対する現実性が遠ざかっていき、今に至ります。それでも少しは製菓に関わってみたいという気持ちから、スイーツ店のバイトを始めました。個人店で、基本的に店長があれもこれも仕切っています。その姿を見て、より一層「パティシエ目指さなくてよかった」と思う自分がいるのです。店長のような立ち回りをしながら純粋に製菓を楽しむのは至難です、私にとっては。バイト身分の今でさえ、店頭に出すお菓子を作るのは緊張します。楽しいはずのお菓子作りも、緊張と集中で手一杯。多少慣れても家のお菓子作りとはわけが違う。より一層趣味のお菓子作りが楽しくてたまりません。歌いながら作ってもゴムベラに付いたクリームを舐めても誰も咎めない!ふははは!

ただひたすらに好きでいたい

ただひたすらに好きでいたいんです。嫌いになりたくないんです。
好きなお菓子を作りたいときに作り、作りたくないときは作らず、他人にあげたいときは配り、独り占めしたいときは全部自分で食べる。失敗したって自分の時間と材料費を削って失敗経験を得られるだけで、周りに迷惑なんてかけない。朝8時からせっせと仕込まなくても、夜9時から作り始めて深夜に焼き立てを食らうことも可能。
これが、私の好きなお菓子作りなんです。ただただ好きでいられるお菓子作りはこれなんです。
趣味という自由の中に製菓を置き、思いのままに作る。これを確保していたいがために、パティシエにはなりたくないのです。
お菓子作りが好きだからこそ、です。

お笑いが好きだから芸人になる

お笑いが好きだから芸人になりたい先輩。私の持論で言えば、お笑いが好きだからこそ芸人にはなりたくないので、分かり合えないだろうなと思います。分かり合えはしないだろうけれど、凄いなとは思います。保守から変われない、変わる気すらない私からすれば、その真っ直ぐさが不思議です。

本気で目指そうとしていることへの不思議さが拭いきれなくて申し訳ないのでここに発散しておきますが、せめて一後輩として応援したいなと思います。

きっと先輩みたいな人は売れても売れなくてもなんだかんだ幸せなんだろうな。好きなことの中に身を置けること自体が嬉しいんだろうな。見習いたいところもありつつ、見習える自信はあまりありません。

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