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聴いたよ新譜2021 vol.2

お世話になっております。

いいアルバムって結構なスパンで出るんですね…
つい先日1月に発売されたアルバムについて聴いた中でピックアップしたものをこちらのnoteにてまとめさせてもらったのだが、舌の根の乾かぬ2月5日の内に僕の脳みそはぐわんぐわんに揺れることになる。

この時に僕の中で感じたモノは恐怖であり不安に違いなかった。正直昨年までは音楽自体Twitterやピッチフォークでたまたまタイミング的に聴いていただけで、このようにリアルタイムで発売したものを片っ端から聴いていくというスタイル自体を久しくしていなかったのもあって正直こんなにも追われるものかと…
そもそも追われてまでやるものか?とも思わされたのだが、僕という人間は愚かで自尊心が強く劣等感にまみれているので、こういった状況にこそ酔ってしまうのだ。高校時代から今まで、狂ったように音楽を聴き、狂ったように芸人ラジオを聴き、狂ったようにアニメを見て、狂ったようにラーメンやカレーを食い、狂ったように声優ラジオを聴き、気づけば一周してまた狂ったように音楽を聴いている。

そんなこんなで2月に入ってから今日までのタイミングで聴いた新譜が、どれもとても素晴らしい作品だったので結局こちらで感想でも書きたいなと思い筆を取りました…例の如くApple Musicにて配信されているものの中から気になったものをピックアップして感想を言いつつそれが紹介になればいいな…というくらいのものです。

1. Puma Blue - In Praise of Shadows

ロンドンのソロアーティスト。以前のsingleや前評判、先行楽曲の時点からかなり期待していた1作です。チルアウトで内省的な空気感にローファイなサウンドと脱力感もありつつ剥き出しの美しい歌が重なってとにかく聴いていてどっぷり浸れるのでとにかく大好きです。

個人的な話をすると、僕の中でとてつもなく音楽を聴きたくなるタイミングというのが2つありまして…それは車に乗っている時と、一人で外で煙草を吸っている時なのですがこの作品は紛れもなく後者にこそ最適なアルバムでした。いい感じの剥き出し感がネクラな一人ぼっちの気持ちをinにinにどんどん駆り立ててくれている気がして。

特に1~3曲目までの流れの時点で完璧だと思います。1.2曲目で完全に入り込んで、3曲目 Velvet Leavesのラストのビートが一拍食うリズムにチェンジする当たりの盛り上がりで完全に昇天してしまう気持ちよさがありました。勿論その後もジャジーな楽曲やインディーフォーク感のある楽曲まで全てこの脱力+剥き出しの美しさでパックされており、しっかり一人の夜にフィットしてくれる特別感のある作品だと思います。今年はことあるごとにこのアルバムを聴きながら一人外で浸りたいと思います。

2.Black Country, New Road - For the First Time

ロンドンの新星バンドが遂にアルバムリリース!と発売までから巷で大きい話題を生んでいた新進気鋭のバンド。正直僕のような人間は激押しを受ける全てのものに何にでも「持て囃されすぎなのでは?」と斜めに入る癖があるので、こちらのバンドに関してもかなり斜めから聴きに入った部分はどうしてもあって…

しかし一曲目のInstrumentalでその小さい手のひらをパタリと、人知れず返して拳をあげるに至りました。なんだこのスペクタルでアドレナリンをドバドバと流させる展開は…と。Fugaziを思い出すような単音リフとセメント感のある硬質なドラムベースのサウンドから、ホーン隊も混じってきて凄まじいジャムセッションを繰り広げ、後半に向けてクレシェンドしていく。この時点で僕は完全に身体を揺らして「すご…」と口に出していました。

プログレッシブポストハードコアというか、僕らが愛した90年代インディの潰れていて硬質なサウンドを集めて壊して繋げて1つのストーリーにしたような楽曲が多く、ポップさとは程遠いがこのようなバンドが前線で支持されるということにも希望を感じる次第です。

3.The Weather Station - Ignorance

カナダのフォークロックバンドの新作、期待値はありつつも発売後からあちこちで絶賛の声が上がるほど名作と名高い状況だ。実際かつてほど音楽を聴いていなかった自分ですら「名盤なのでは?」と思ってしまうほど素晴らしいアルバムだった。

全体的にフリートウッドマックなどにも通じるフォークロックらしさが地盤に感じられる作品で、フォークの郷愁を残しつつジャズやインディポップのテイストを取り入れた情緒ある一作。
個人的には一曲目のRobberの少しダークなサウンドこそが今この病んだ時勢に音楽を享受する上での入り口として最適な内省感を含んでいるように思っていて、仮にこの仄暗さがなければここまで許容できなかった気もするんですよね…なので僕としては音楽的には80'sのフリートウッドマックを引き継ぎつつも、雰囲気として思い出したのはscott walkerのscott4の一曲目、The Seventh Sealを聴いた時のこと。『嵐の夜にやってきた訪問者感』というか(伝わらんか…)

別な言い方で言えば、ジャジーなサウンドと語りかけるような歌声から『陽が落ちて夜の闇に包まれると同時に気付いたら中にいた』…とでも頭の中で浮かんでしまうほどにスッと入り込まれた感じがあって、曲のラストのオケが盛り上がると同時にぐんぐん心に侵食してきて最終的に内側から諭され続ける感じというか…(伝わってくれ…)
これ一曲目だけの話ね…

すんなり入られたのでその後は自然に聴き続けてしまうわけだが、後半に行くに従って80年代を思わせる温かみのあるピアノポップなどでひたすら許しを受け、跳ねるようなビートにも気持ちが乗ってくる。そして最後のSubdivisionsはサウンドは美しく歌詞は悲しさもありながら去っていくような内容の歌で、なんともいえない喪失感を得て聴き終わった。
ジャンルや手法として特別新しい何かがあるわけではないが、内面に訴えかけるパワーとメロディセンスが格別で「優しくて暗く美しい歌」という絶妙なバランスがこのアルバムを名盤にしているのかな…と。昨年のフィービーブリジャーズ同様今後もたくさん聴くことになるアルバムだと思います。良すぎ

4. Sturle Dagsland - Sturle Dagsland

全く前情報も無く、今もよくわかっていないのですがこの音楽はなんだ?アバンギャルドとはまさにこのこと。どこか日本を思わせつつ暴力的なサウンドに、声にならない叫びがカッティングされてサンプリングされているようで、しかし叫びとしてそこで鳴っている。
これがなんなのか形容できないが、今まで聞いたことないアバンギャルド感で、最初は暴力的で直視できないんだけど気づいたらアルバム通して聴いてしまっている。
Twitterの相互フォローの人がHarajukuという曲を聴いて、「原宿のどこにインスパイアされてこの曲になったんだよ!」と言っていたがまさに同意見で、めちゃくちゃに見えて美しく惹きつけられるサウンド。僕は現在激しいロックなどは良作でもあまり長く聴く気にあまりなれないような精神状態なのだが、これは逆に聴き切ってしまった。なんなんだ本当これ…すごい

5. 大和 那南 - Before Sunrise

Apple Musicのニューリリース欄から無作為に聴いたアルバムで完全に初見だったのだが、調べてみると独自の信念を持った若き孤高のアーティストという印象を得ました。さらにそこからその才能を裏付けるエピソードがざくざく出てきて驚いたわけなんですが…

大和那南さんは元々別名義でも活動していてiPhoneとギターを駆使して自分のイメージを具現化していったということだが、DIYとかの手法云々ほ話はまあどうでもよくて(本人もかつてインタビューでDIYと一括りにされるのが嫌であまり公言していないとも言っていたので)、とにかくミニマルでニューウェーブ・インディチックなベッドルームサウンドに懐かしさと新しさと色々とぐるぐる混ざっていき、時代も忘れて聴き込んでしまった。
一聴して音楽好きがニヤリとするような要素が多く、ロックミュージックからの影響を端々に感じる。日本のトレンドとは一線を引くというか感知せずに進むようなアングラ的強さがアルバム全体を通じて流れており気持ちよく聴けるアルバムでした。

追記: あるディスクガイドでこのアルバムについてほとんど彼女の高校生時代の武勇伝だけ書き連ねているものがあってそれだけがっかりした。楽曲そのものやアルバムにまつわるドラマではなく、「友達とつるまずレコード屋に通い続け、楽曲製作を続け、嫌いなため勉強もそこまでせず、なのに結果有名大学に入学。すごい!天才!」そりゃすごいけどそれを全面に押すのはテレビの行列ができる○○くらいにしといてくれよ。下品な…


6. Vampire Weekend - 40:42

プレイリスト載せ忘れましたが、vampire weekendが2021という楽曲を2アーティストとそれぞれ20分21秒ジャムセッションしたもの2つをおさめたアルバムです。

ちと言語化が難しいのですが、実の所2021という楽曲をそこそこ聴き流してしまっていたので本家も聴きつつこちらを聴きました。Sam GendelもGooseもどちらも素晴らしかったです。特にSam Gendelの繰り出す信号にも似たアンビエントサウンドに引き込まれますね…ちと知識もないので説明には困りますが、実験的だけどアルバムとしてなぜか聴き入ってしまうこれなんなんでしょう…とにかくすげえ…と。


疲れた

毎回疲れてはいるが、音楽的に発見も多い新作がたくさん出ていてとても楽しかったです。Foo Fightersの新譜も相変わらず凝ったサウンドと脂っこい歌が気持ちよく、Vampire WeekendとSam Gendelの2021も言語化できる能力はありませんでしたがとてつもない一曲でした…
そんなわけで今年はできるだけコンテンツに触れてこのように発信して、自分の創作の糧にできたら嬉しいです。

需要はないけどできるだけ頑張ります。自分のために

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