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聴いたよ新譜2021 vol.14


お世話になってます。

だいぶ秋らしくなってきて聴く音楽もメロウになってくる時期かと思われますが…まさにそんな時期にうってつけな作品がたくさんリリースされましたね…早速ですが

今月良作多すぎ

驚くほど好きな作品が多くて絞るのに精一杯でしたが、他にも素晴らしい作品たくさんありました。その中でも好きだった、ご紹介したかった作品10作を順不同でご紹介していきます。今回もよろしくお願いします



01. Mild High Club - Going Going Gone

カリフォルニアのサイケデリックポップグループMild High Club。先行のゆる〜いMVなんかもありかなり楽しみにしていた新譜です。

これまでのオルガンサウンドから
アーバンでメロウなサイケポップへ
サンセットが似合うチルな傑作誕生

これまでのアルバムも好きで残業中の癒しだったのですが、今作の先行リリースから今作の空気感がだいぶ好きだった自分としてはかなり嬉しい試みだと思いました。ギターとオルガンサウンドのAORライクなサイケポップが魅力的だった初期2作から比較するとかなり都会的で、ブロークンビーツなども交えたりと様変わりしているのは確かなのですが…僕としてはまさに今聴きたいサウンドで、サイケの浮遊感とメロウなバカンスの情景とアーバンなビートとの絶妙なMIX具合が気持ちよくてたまらないアルバムだと思います。時勢もありこの「豊かさ」を感じさせる空気に休日酔いたい気持ちです。僕としては傑作。



02. Ada Lea - one hand on the steering wheel the other sewing a garden

カナダのSSW、Ada Leaの2ndアルバム。
lo-fiインディなサウンドにグッドなメロディが素晴らしい作品でした。

個人的に今月1番刺さったアルバム
lo-fiとHi-Fiを行き交うサウンドが
シンプルさに奥行きを与えとても魅力的

90'sUSインディロックを軸としたコード進行の楽曲が基本姿勢としつつ温かみのあるインディフォークやナイトドライブな楽曲まで様々ある今作ですが、まず基本のメロディがとても素晴らしいです。さらに今作はlo-fiなデモ音源とHi-Fiなスタジオ音源とをコラージュすることでインディ的生々しさと品の良さを絶妙にブレンドしています。
全体的な骨組みの構成としてシンプルめな楽曲が多い中で、そこに色をつけていく細やかなエフェクトやアンビエンスが不自然さなく良質なインディポップとして機能し、歌声を上品に美しく届けているという部分に妙を受け取るとともに感動しました。没入できる素晴らしい作品だと思います。

MVも素敵です



03. Blvck Hippie - If You Feel Alone At Parties

メンフィスで活動するインディロックバンド。情報が不足しているのですが、Spotifyの紹介文にあった"A Sad Boy Indie Rock Band in Memphis"という文句に引っかかり聴いてみることに…

いい意味で散らかったアンサンブルが好き
頼りないボーカルがまさに"A Sad Boy"

ポストロック傾倒のエモ…アメフトや初期Mice Paradeのような内省的な透明感とアンニュイさがまず頭によぎりますが、スタートからまさにそこに傾倒したゆらぎとハリのあるアルペジオサウンドに手数が多くパリっとしたドラム…まさにそのジャンルのバンドだと。
しかし聴いているとメロディラインや冷たさのあるリバーブ感はUK抒情系寄りかも?と思わされたりするsad要素もありそこも面白く、むしろ前述した2バンドよりもBroken Social Sceneなどと近いのかも?と思ったりしまして…

ルーツ探しはこれくらいにして、サウンドはいい意味で初期衝動的で散らかりがあり、ボーカルも声を張り上げるといい感じにヘロヘロしていて情けなくてとても味わい深いんですよ。
聴けば聴くほど愛おしくなるアルバムでした。


04. Junes K - DEPAYSEMANN


8月24日配信ですが僕のアンテナ感度の低さからまだ新譜ということで…
福岡のグラフィックデザイナー/ビートメイカーのJunes Kの新譜です。2019年にビートグランプリCLASHで優勝したことなどが有名ですが、今回のアルバムがとても素晴らしかったのでご紹介させてください。

溢れ出る音の才覚と遊び心
切り貼りされたようにスリリングなのに
Black&Blueのカラーリングは崩さない

一曲目からつかまれました…Prefuse73やFlying Lotusを引き合いに出しても恥ずかしくないのでは?と僕は思っています。ジャズ・ソウルのフットに近いHipHopビートとしては、チルでありながらスリリングで遊び心のあるビートメイカーは数多いらっしゃるとは思います。しかしそこに一種の痛快さすら感じるアート的センスをビシビシ感じる…さらにその上でサンプリング元のブラックさ、渋さをしっかりとRepできているというのが僕個人としてはかなり刺さりました。

05. Holy Hive - Holy Hive

フォーク・ソウルというありそうでなかった部分を発明しデビューアルバムは音楽好きの間でもかなり話題となりセールスも好調だったりしたという話も記憶に新しいですが…そんなHoly Hiveの新作も素晴らしかったです。

シームレスに繋がるナンバー
ソフトでフォーキーなのにグルーヴィ
内省と跳ね感のバランスも一級品

聴けば聴くほど今作も素晴らしいのですが、まずドラムがめちゃくちゃいいですね本当に…Fleet Foxesのアルバム「Shore」でもドラムを担当したHomer Steinweissの技量にまず驚かされました。フォークの内省的重心と、ソウルの縦のビート感やグルーヴ感を見事に両立する土台が素晴らしいの一言です。そしてそれこそFleet Foxesのロビンが参加した楽曲もあるというのもあり、アルバムのテイストは前作と比べても哀愁の増したインディポップアルバムと言えると思います。ホーンなどの演出よりもギターサウンドが前に出た作りでありながらビートでしっかりとソウルフルなグルーヴが生まれ、楽曲同士がシームレスに繋がることで夜長気づいたら聴ききってしまう素晴らしいアルバムだと思います。


06. Michael Seyer - A Good Fool

フィリピン出身LA在住のSSW、
Michael Sayerの新譜です。
実のところ僕は昨年Puma Blueからの関連紹介で彼の前作アルバムを聴いたのが出会いだったのですが、今作も変わらず最高でした…

メロウでスウィート
良質なベッドルームサウンドそのままに
よりフォーキーでオーガニックな新作

Puma Blueから知ったくらいなので前作は深夜帯をイメージさせるローファイソウルでAORみのあるトレモロギターサウンドだったのですが、今作は根底にあるメロウなソングライティングはそのままに全体的に森林浴しているようなオーガニックさを感じました。ビートもインディフォークらしさが垣間見えるタイミングがちょいちょいある気がしていて、前作とはまた違う楽しみ方ができるなあ…としみじみ聴いてしまうアルバムでした。今作も僕の残業のお供になりそうです。今夜もよろしくお願いします…


07. I'll Be Your Mirror: A Tribute To The Velvet Underground & Nico


誰もが認める歴史的名盤である、あのアルバムのなんとも贅沢なトリビュート盤

新旧undergroundな素晴らしいメンツ
元アルバムが内包する様々な音楽の種
その可能性を再確認できるトリビュート

The Velvetunderground & nicoはなんだかんだ僕自身1番影響を受けた作品で、今でもオールタイムベストディスク5には必ず入るアルバムなのですが、時代のうつろうごとに聴けば聴くほど発見のあるアルバムだと思います。
なのでトリビュートに関してもはや語ることもないのですが…とにかくメンツが素晴らしいです。イギーポップはまさにこの時代の生き証人なので嬉しいのですが、マイケル・スタイプやサーストンムーアなどの80年代後期〜90年代オルタナアンダーグラウンド勢の参加や、NYのアイコニックな鬼才であるSt.Vincentなども最高だなあと思いますが、個人的にはアイルランドはダブリン出身の若手バンドであるFountains D.C.がカバーした「The Black Angel's Death Song」が特に素晴らしかったです。この曲が持つポストパンク、ポストハードコアに通じるノイジーでエクスペリメンタルな部分をしっかりと前に出してくれていて感動しました。イギーポップの「Ahhh〜ッ!!」も聴けましたし…ね。最高ですよ。
Hypeな金稼ぎではなく愛情を感じるトリビュートでした。


08. Keaton Henson - Fragments EP


ロンドンのSSWでヴィジュアル・アーティストとしても知られるKeaton Henson。エンターシカリのカバーアートを手がけるなどしていたようなのですが、最近友人が勧めてくれて知ったアーティストで僕は知りませんでした…素晴らしすぎて過去作もこれから聴こうと思います。

イギリス的内省ソングライティング
深く深く潜って吸い込まれる
美しく素晴らしい作品でした

情報量もなく全然大したことが言えなくて申し訳ないのですが、今作ビートは無く上物と歌唱のみという極めてミニマルな構成で、そこで作り出される途方もなく深い闇と光に向き合って聴くかのような時間。特に4曲目のMarionetteという曲にはJulian Bakerが参加しているのですが、この楽曲が素晴らしすぎて驚きました。後半のクライマックスは鳥肌モノで、極めてミニマルな構成だからこそ感じる大きい残響の波に圧倒されてしまいました。

素晴らしいアルバムだったのでこれまでの作品も聴いていきたいと思います。ご紹介いただき感謝です。


09. Amon Tobin - Haw Do You Live

ブラジル出身でその後イギリスに移り住み、90年代から活躍するベテランビートメイカー。僕は過去作をそこまで深く聴いてきていないのですが、アバンギャルドながら没入感ある新譜で衝撃的でした

ベテランビートメイカーが放つ
南米仕込みの本能に訴えかける
スリリングなエクスペリメンタルIDM

所謂ロック要素も感じるIDMなのですが、ブラジル出身ということもありビートに南米的な独特のクセを感じさせ、さらにエクスペリメンタルな展開はとてもドラマチックで惹き込まれる内容でした。音像も無機質ながら本能に訴えかける芯をどこかに感じ、アルバムを通して破壊、再生、そして気づいたら脳内をジャックされているような…そんな素晴らしい体験でした。
エレクトロニカとしても個人的に衝撃があったので、こちらも過去作をもっと聴いてみたいです。

10. Kaitlyn Aurelia Smith & Emile Mosseri - I Could Be Your Dog (Prequel)

L.Aにて活動するプロデューサーKaitlyn Aurelia Smith。彼の作品に感銘を受けたEmile Mosseriからの熱いコンタクトもあり、メールのやり取りから始まって楽曲製作を勧めていった結果今回コラボレーションが実現。今作は2部作の1作目とのことです。


絶妙なコラボレーション
たった17分の作品に込められた
魔法のようで現実な世界観

こちらのアルバムは全曲で17分しかないのですが、7曲の楽曲は光を感じる美しいアンビエントライクなエレクトロニカでありながら曲ごとは短め。17分通じてシームレスに描写を変えていく作りとなっており、その造形がたまらなく美しく惹き込まれる作品でした。もはやオーケストラのような電子音の残響で気づいたらとっくに17分過ぎている…語れることも少ないのですが、2人のクリエイターのセンスがバチっと共鳴した時の宇宙を見たかのような素晴らしい作品でした。激しくオススメです。


9月後半にして

まさか9月後半にこんなにも自分に刺さる作品がたくさんリリースされるとは思いもよりませんでした…sufjan stevensや呂布カルマの新プロジェクト「nue」などまだまだpick upしたい作品は多々あったのですが今回はこの10作をご紹介させていただきました。

気づけば今年もあと3ヶ月…終わりに近づいてきてしまいましたがこうやって新譜を聴くきっかけをこの勝手な連載によっていただいているので読んでくださる皆様に感謝しかありません。

来月もよろしくお願いします

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