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【日記】生まれて初めて「読書会」に参加してきた話

自分には読書友達がいない。

急に「読書」という趣味に目覚めてからかれこれ10年ほど経ち、今でも「読書」は一番の趣味といえる自分だが、10年経った今でも「気軽に本の話ができる友達」は一人もいない。

普通に友達と本の話をすることはたまにあるのだけれど、読書を趣味にしていて、いろんな本をチェックしていて、情報交換したり、何が面白かったか面白くなかったかで盛り上がれたりできる友人という意味では一人もいない。

読書友達がほしい。人と本の話がしたい。
『バーナード嬢曰く。』みたいな、ゆるい読書トークで盛り上がりたい。

試しに「読書会 東京」で検索をかけてみる。
するとヒットするのは「自己啓発」とかそういう意識の高い読書会ばかり……。そうなのだ。「読書友達」を作るのが難しいのは、「読書好き」と言ってもそのジャンル幅が広すぎること、そして意識の高さに差が生まれやすいことが原因としてある気がする。

自分は、自分を成長させるためとか読書によって人生に新しい視点を取り入れたいとかそういうのは何もなく、ただただ本を読むのが好き、物語に触れるのが好きなだけなのだ。何度もいうが『バーナード嬢曰く。』が最も理想の「読書トーク」なのだ。

↑半年前の作品を「今更」と言える人とは自分も分かり合えないかも……

そんなわがままにも近い理想論を掲げて誰とも関わらず孤独に読書という趣味を続けてきた自分に、ふと運命の出会いが舞い降りた。

先日、11年住んでいた祖師ヶ谷大蔵に1年ぶりに遊びに行ったときのこと。

そのときに撮った写真をinstagramに上げたら、祖師ヶ谷大蔵のタグから見つけてくれたのだろう、祖師谷の喫茶店「黒田珈琲」さんからいいねをもらった。

「黒田珈琲」さんは祖師谷に住んでいた頃、よくモーニングを食べに行っていた喫茶店だ。日曜日の朝に早起きしてプリキュアを見たら黒田珈琲さんにモーニングを食べに行く、というのが毎週のルーティンだった(プリキュアを見て喫茶店でモーニングを食べる……なんて大人な日曜の朝なんだろう)。

だいぶ前に撮影した黒田珈琲さんのモーニング

黒田珈琲さんがSNSをやっているのは全く知らなかったのだけれど、覗いてみるとなんと、「読書会」をやっているではないか!!
自分がまさに「読書会」に興味を持ち始めたタイミングの出来事だったので、驚いた。

黒田珈琲さんは、自分の中ではそこまで「ブックカフェ」感を推している喫茶店というイメージはなかったのだけれど、それでも置いてある本のラインナップから「この喫茶店……””できる””……!」と思っていた(偉そう)。ミステリーやSFなど、単純に自分とも趣味が合うラインナップだったのだ。
(図書館から借りてきた『ハローサマー、グッドバイ』を読もうと黒田珈琲さんに行ったら、座った席の目の前に『ハローサマー、グッドバイ』が置かれていた、という思い出もある)

しかも読書会は今回で40回目・10周年もやられているじゃないか。
いや待て、過去の課題本一覧を見ると自分の大好きな『春にして君を離れ』がテーマの回も開催されているではないか!?

気がつくと自分は参加希望のメッセージを送っていた。

「読書会」と言っても色んなスタイルがあるけれど、黒田珈琲さんの読書会は課題本を読んでみんなでその本について語り合うタイプ。
第40回となる今回の課題本は、台湾文学賞を受賞したという台湾の小説『亡霊の地』だ。

読書会参加を決めてからこの本を注文したのだけれどこの本、注文した時点ではまだ日本で発売して1週間くらいしか経っていなかった。
クチコミも全くついておらず、情報が少ない。こういう本ってどうやって見つけているんだろう……?
ほぼ発売と同時に読書会の開催を決めたということになり、主催者のアンテナの高さに脱帽する。

海外小説で、且つなかなかの分厚さなので、お値段もなかなかに張るが、なんの前情報もない中で購入し、読み始めてみる。


…………。


む、難しい……。

いや、とてもすごい小説である。書き出しから一気に心を掴まされ、文章の鋭さにどんどん引き込まれていく。こんなすごい小説がひっそりと発表されていたなんて、この本をチョイスした黒田珈琲さん、さすがである。

しかし、この感想をどうやって言葉にすればよいのだろう?「この本はこういう話でこういうところが面白かったです!!」と言い表すのがここまで難しい本も珍しい。凄い本なのだが、読めば読むほど読書会に対する不安がつのっていく。

もしかしてこの読書会、めちゃくちゃレベルが高い読書会なんじゃないか?
自分みたいな意識の低い小説好きがフラッと参加してはいけなかったのでは?
読書家レベル100の屈強な男たちに「兄ちゃん、読書会は初めてか?力抜けよ」と言われ羽交い締めにされ「わからせ」られるのではないか???

そんな不安のなか、なんとか読書会で参加者の皆さんについて行こうと感想も頑張って事前に言語化してまとめていた(この感想はまたいつかnoteに書きたいと思う、本当に凄い作品だった)。

読書会当日、片道1時間かけてかつての故郷・祖師ヶ谷大蔵へ。
黒田珈琲さんに入店すると、開始前からめちゃくちゃメモがとられたノートを見て復習する人や、本に付箋を貼りまくってる方もいて、「やはりめちゃくちゃレベル高い読書会かもしれない……」とどんどん緊張してくる。

この読書会の特徴的なのは、課題本にまつわるイメージドリンクとイメージフードがついてくるところ。早速、小説内で出てくるサンドイッチと、蜂蜜のキャンディが出てくるということでザラメの入ったアイスコーヒーが出てくる。レギュラーメニューじゃないのがもったいないほど美味しい!!

ザラメコーヒーとサンドイッチ

そしていつものごとくぬい撮りをする私。今回は「亡霊の地」という本だったので、ゆうれいのぬいぐるみを連れてきた。

すると隣に座っていた参加者の男性が、「ぬいぐるみと写真を撮られるんですね、では私も……」と言ってカワセミのぬいぐるみをおもむろに登場させた。まさか、参加者にぬいぐるみを連れている仲間がいるなんて!

参加者の方が連れてきていたカワセミとパシャリ

美味しいイメージフードとぬいぐるみの一件で、一気に緊張が和らぐ。年齢も同年代くらいの方が多そうな印象で安心した。

そして、感想を皆さんで話していく中でやはり「この本の魅力を一言で表すのが難しい」「何小説なのかカテゴライズができない」という、自分に近い感想を持つ人が多いのも安心した。
ゆるくて和やかな雰囲気のなかで、それでも鋭い感想が飛び出してハッとさせられたり、人の感想を聞いて自分の中で新しい感想が芽生えたり……。

た、楽しすぎる……。
二品目のイメージフードまで登場して、気づけばあっという間に時間が過ぎた。

二品目は作中の豚足そうめんに似せたスープ

参加者の皆さんはやはりものすごく本に詳しくて、自分なんて全然知識がないので引き合いに出される作家たちにも「へぇ~」と頷くことしかできなかったんだけれど(ガルシア・マルケスの話題が出てきたときだけ最近『エレンディラ』を読んだからわかるぞ!となって食いついた)、知識マウントなんてものは一切なく、ただ純粋に本への興味・好奇心で会話を楽しむ空間で、本当に居心地が良かった。
なんで祖師谷に住んでいるときにこの読書会を知らなかったんだ……!と後悔すらした。

課題本以外の本の好みの話もできたり、発足したてのdiscordに招待していただいたり、「友達」というのはまだ恐れ多いまでも「同志」との繋がりができたということが自分には大満足。ぜひまたこの読書会に参加したいと思ったし、勇気を出して参加して本当に良かったと思う。

ここまで自分の感性にドンピシャな読書会に出会える機会は少ないかもしれないけれど、今回の件で勇気が出たので他の読書会にも参加してみたいなあと思った。


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