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【読書日記】未来からのホットライン / ジェイムズ・P・ホーガン

2022年8月20日 読了。

この小説の原題「Trice upon a time」が映画『シン・ヱヴァンゲリヲン』のサブタイトルになっているというので気になって読み始めたが、読んでみてびっくり、内容が露骨に『シュタインズゲート』で、あとから知ったがシュタインズゲートの元ネタとなった作品らしい。
シュタゲの元ネタといえば『バタフライエフェクト』の印象が強かったが、実はこっちの方が直接的な元ネタだったようだ。

あらすじもまんまシュタゲで、過去にメッセージを送ることができる機械が発明されたところから始まる。過去に送れるメッセージは6文字のみという設定がはじめに出てくるが、シュタゲでも6文字ずつ文章が途切れて送信される描写があり、この辺りもオマージュだったんだなあという気づきがあった。

この作品の凄まじいところは、「過去にメッセージを送ることで未来に干渉を与えると時間線が再構築される」というメカニズムを、論文かな?というレベルに詳細な科学的実証によって説明がされている点。ハドロンのクォーク崩壊が〜とかエネルギー密度に応じたタウ粒子の物質化が〜とか、図による説明まで出てきたりして、これ本当にフィクションだよね?と疑いたくなるレベル。

しかしそれほど専門的すぎるせいでほとんど何が書いてあるかを理解できず、中盤までは正直読むのが苦痛だった。話もなかなか動かずにずっとチマチマと実験を繰り返していて退屈で、かなり読み飛ばしてしまった。
あとから東北大学のSF研究会がまとめたwikiの解説読んだけど、それでもやっぱり「なんかよくわかんね〜けどすっげえ!」くらいの理解だった。話は逸れるがSF研のwikiは色んなSF作品の解説がしっかりまとめられていて、難解なSF読むたびにお世話になっています。

中盤からはかなり大きく話が動き、タイムマシンの大規模な実験を行ったことで地球内に小さなブラックホールが発生、地球滅亡の危機にまで発展する。
過去にメッセージを送ってこの未来を変える!となるのだが、結局その未来を変えることで全く別の地球滅亡の危機が生まれてしまう。

この、「過去を変えても似たような未来に結果は収束されてしまう」という設定もシュタインズゲートで用いられた設定だ。さらに言うと「パラレルワールドというものは存在せず、過去が変わると矛盾が無いように宇宙全体が再構築される(人類はそれを認識できない)」というアイデアもシュタゲで用いられている(シュタゲでは主人公だけがそれを認識できるという設定が面白いわけだが)。やはりこのアイデアはとても面白い設定だと改めて感心した。

ロマンス要素もあり、過去を変えて時間線が再構築されることで、主人公と恋人が出会っていないことになってしまうなど、この辺もシュタゲだ。
シュタインズゲートとの比較ばかり述べたが、この二人の出会いそのものが世界の展望にとって非常に重要になっているという展開はこの作品独自のもので、熱かった。

ただ全体的に難解すぎるのと、リアルさを追求しすぎて退屈な展開が多い点もあって、どちらかというとこの作品のタイムパラドックス設定をアップデートして現代の物語として完成させたシュタインズゲートという作品がいかによく出来ているか再評価する、という感想に落ち着いてしまった。とはいえ読書体験としてはとても良いものだったと思う。

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