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太極拳に学ぶ身体操作の知恵 ~第三訣~

第三訣 鬆腰(しょうよう)

腰を柔らかくする
ーさらば、腰痛!ー

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♦体動極意の源は腰間にあり

 第三訣は「鬆腰」、腰は鬆(ゆる)めよ、そうすれば真実の力を得るという教えです。「鬆」とは、ふんわりと柔らかな状態を言い、太極拳ではよく使う大切な言葉です。
 タイチ・ムーブメントにとって、腰に限らず身も心もゆるんでいることはよいことであり、きつく締めていることは悪いことなのです。

《 第三訣 》 鬆腰(腰を鬆める)
 腰は一身の主宰である。よく腰を鬆めることができて初めて両足は力を生じ、下盤(下半身の体勢)が安定する。虚実の変化もみな腰によって転動するのである。ゆえに言う、『命意の源頭は腰隙にあり』と。からだに力が入らないようなときは必ず腰腿に真実の力を求めなければならない。

 日本武術でもよく「腰から動け」と言う。鬆腰とは要するに、腰を中心にバランスを保ち、腰をゆるやかにして柔らかく動けということ。
 楊派太極拳には回し蹴り「擺蓮脚(はいれんきゃく)」の要訣として「柔腰百折、骨なきがごとし。全身手と化してなぎはらう」という言葉がある。一朝一夕でそこまで達するのは困難であり、まさに「百折」の功(修練)を積み重ねて初めてその境地に達することができるのだろう。

♦腰痛が消えた! -私(著者)の体験 

 中学、高校時代は柔道部、大学時代は空手部に属した。
激しい練習と、今から考えれば不合理な身体の使い方によって、大学三年生のころから慢性的な腰痛になった。椎間板ヘルニアだった。
「もう一生激しい運動は無理だろう」とまで言われたが、腰をなだめながら練習を続けるも、30歳ぐらいになると限界を感じはじめた。
 太極拳を勧められ習い始めてみると、2か月ぐらいで腰がずいぶん楽になり、そして半年後にはなんと一生付き合わなければと覚悟していた腰痛が消えてしまった。

なぜ太極拳で腰痛が消えたのか?

 あれこれ分析をしてみると、太極拳の柔らかい動きもさることながら、準備運動として行われている養生法が直接的には効果的だったのではないかということに気づく。

 そのなかでも「八段錦(はちだんきん)」と呼ばれる古来の養生体操の第6段錦がまず第一に役立ったと結論づけた。
この運動は簡単にいうと、呼吸に合わせて上体を前方に折り曲げる運動で、機械的に行うのではなく、柔らかいからだを前方に「垂らす」という感覚で行う。⇒のちに「柔腰垂直運動」と名付けた
 もうひとつ、練習の最初に行う「振り手運動」も腰と肩を柔らげるのに驚くほど効果的だった。これは脱力したまま水平に腕を振り回す運動で、手や尻尾を振るように両手をぶらぶら水平方向に振り回すことによって、脊柱を軸としてからだのバランスを回復し、腰を柔軟化させる。⇒「柔腰水平運動」と名付けた


♦腰椎を開く -柔腰垂直運動(ぶらさがり運動)

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【やり方】
①両足を肩幅に開き、両腕をあたかもゆっくり万歳するかのように頭上に運ぶ
②腰から体を二つに折り曲げるかのように、万歳したままの姿勢で上体をゆっくり下方に前屈していく
③下方に達したら両手で足の甲を軽く握る
④再び、上体を起こして最初の自然体にもどる

【ポイント】
・呼吸は上体を伸ばすときに吸い、曲げるときに吐くのが基本だが、あまりとらわれないほうが自然なよい呼吸になる
からだをどこまで垂らすことができるかなという気持ちで、少しづつ指を這わせるようにして折り曲げていく
・繰り返しの回数は終わった時にからだが快適だと感じる範囲内にすること
・最も重要なのは上体ごと体を前屈させてリラックスするところ

【その効果】
直立で立っていた時には重力によって圧迫されていた腰部が解放され、筋膜・筋肉の過緊張が取れ、神経走行が楽になる。

⇒腰椎に無理がかかると椎間板が圧迫されて神経の走行が障害を受ける。また、腰椎にかかった力に耐えようとして筋肉群が過度に緊張して筋肉や筋膜の痛みが発生する
また、下方に圧縮されている股関節やアキレス腱を上方にストレッチしていることにもなる。
⇒腰痛にかかりやすい腰の固い人は概ねアキレス腱も固い

『腰椎と椎間板を本来の楽なポジションに戻してあげよう!』
腰椎が開けばからだの運も開ける。
そう思ってのんびりと楽しむように実験していこう。


♦脊椎をほぐす -柔腰水平運動(振り手運動)

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【やり方】
①両足を軽く開いて自然体になり、膝を軽く曲げ腰を少し落とす
②最初はお臍を軽く左右に振り向けるようにして、身を左方、右方へと交互に旋転しながら両手を軽く振り回す
③だんだんと両手の運動範囲を広げていき、両手があたかもロープになってまとわりつくかのように旋回する
④顔、首、腰、そして膝のすべてが水平に動くようにして数分間行い、旋転の輪を広げたら、徐々に運動を小さくしていき、いつの間にか自然体にもどっているというようなイメージで行う

【ポイント】
・全身が脱力していることが極めて重要
⇒両手の力が抜けていないと、肘が固いままなため全身を柔らかく旋転することができない
・両手を脱力させたまま遠心力で振り回す気持ちで行う
⇒うまくいくと、あたかも背骨を中心に両腕が左右交互にまとわりついたかのようになり、鞭のようにしなやかに振ることができる
力が入っているときは両腕が木の棒のようになる

【その効果】
振り手運動に親しむと背骨が楽になるだけではなく、肩こりまで吹っ飛んでいく。

『一種の行として行う気持ちでやってみよう!』
最後にも開始の時と同じように、数秒間でも黙想すると体だけでなく心の「水平運動」にもなる。

♦脱力運動の重要性 -巧まざる古来の英知

 ぶら下がり運動では重力を利用して腰椎を開き、振り手運動では遠心力を利用して脊柱を捻転している。運動の最も大切なところでは、完全に脱力し宇宙の力に身を委ねている。
 筋肉は基本的には、関節を越えて骨化から骨へと繋がっている。力を入れると必ず筋肉の起始と停止の部分が緊張する。反対に力を抜くとそれらの部分はゆるんめられていく。筋肉と骨の結合部分をゆるめたまま運動することで、筋肉エネルギーのバランスを回復し、骨格のゆがみを是正するポイントになっている。
 運動時のウォーミングアップやクールダウンの時だけでなく、お風呂上りや就寝前に行えば一日の疲れとゆがみを解消する「自己整体術」となる。

第三訣の原文にある「命意の源頭は腰隙にあり」とは「極意の源は腰間にあり」という意味です。「命意」とは「根本の意のするところ」、すなわち極意。ここでは体動の極意を意味します。「命」の一字を重視すれば、「根本の意を置くべき生命力」と解することもできるでしょう。

腰間にある臓器は腎臓であり、心臓は血液を循環させ、腎臓は血液を洗浄する。まさに新たな活力を生む重要な臓器だ。「鬆腰」、つまり腰を柔らかく保つとは、生命力の水源「源頭」を守ることでもあるのだ。


【 感想 】
身体を整えていくのに欠かせない条件は、「いつでもどこでも身一つで出来ること」なのかもしれない。
ふと思い出したときにすぐにできることは、継続していく上では大切なことのように感じた。
わたしたちの身体は気づかないうちに常にこわばってしまっていて、力を抜いたと思っても力が抜けていないことが多い。
この運動を通して、身体と対峙し今の自分の状態を知ることは、「力まずに生きる」というところにも影響していきそうだ。

noteを書いていたら疲れちまった。。。
さっそくこの体操でゆるめてきます♪


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