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夏休みの思い出

 夕方の公園で、蟻が動くのを見ている。  夏休みも終わりに近づいた8月のある日、私は下宿先のアパートから自転車で10分程度の所にある公園にいて、小学生の女の子と一緒に蟻を観察していた。その日は曇りで、風は少し冷たく、夏の終わりを感じる気候であった。 「見て、すごい、アリがアリを運んでる。」 女の子が指さす先には、動かない蟻を運ぶ蟻がいた。 「こっち、死んでるみたい。お墓に運んでるのかな。」 しゃがみこんでいる女の子は、顔をぐっと地面に近づけて、蟻の動きを目で追いながら言った

    • 青春を回収する

       ロックバンドのフロントマンが初恋の相手であるということを認めるのに、約7年がかかった。 「20歳になった今年、やっと認めることが出来ました。」 と友人に伝えると、 「青春が終わるんやね」 と言われた。大変腑に落ちた。  高校生の妹に、なにか気の利いた誕生日プレゼントを渡したいと思った。「ふーん、わかってんじゃん」的なリアクションが欲しかったので、どんなものが「ふーん、わかってんじゃんプレゼント」になるのか三日三晩考えたが、全然分からなかった。私は高校生のとき、いくつかの好

      • こんなん絶対、マジで、愛。(第33回全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演 愛媛県立松山東高等学校「きょうは塾に行くふりをして」を見て)

         幕が降りた後、しばらく鳴り止まなかった拍手には、「幕よ、もう一度上がってくれ」という期待が込められていたと思う。私たちはもう一度彼らに会いたかったのだ。これが対面できる最後の機会だと分かっていたから、より一層会いたかったのだ。  とうきょう総文が終わり、国立劇場にて「きょうは塾に行くふりをして」が再度上演されることが周知された際、「また○○(登場人物)に会えて嬉しい」といった趣旨のツイートをいくつか見かけた。彼らはあの時既に私たちにとって「また会いたい人」だった。これはかな

      夏休みの思い出

      • 青春を回収する

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