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31.構図整理術④・人物写真の「タテ構図」(写真の中に人物をどう配置するか)

人物撮影は、タテで撮影することが「基本」として扱われる。
しかし、タテ構図でも、人物の配置は「写真の中心」に限らず、複数のパターンが考えられる。

今回は、「タテ構図」の写真の中で、人物をどう配置するべきか、また、それぞれの配置に応じてどのような効果が生じるかを考えてみよう。

【ヘッダー写真 Model:ゆよりさん】

以前の『構図整理術③・人物写真の「ヨコ構図」(写真の中の空間をどうカバーするか)』では、人物撮影におけるヨコ構図の使い方では、「ヨコ構図」にすることで生まれる「空間」をどうカバーしていくかを主軸に考察している。

【Model: ゆよりさん】
写真の中での情報量のバランスも大切。

基礎、根底としては共通する箇所もあるが、タテ構図は、立っている人物(縦に長い)の形に写真の形が合うので、ヨコ構図とは空間の使い方が少し変わってくる部分もある。

1.配置の基本は「中心」

1-1.上下の余白もバランスよくとる

【Model:ゆよりさん】
(F5.6 1/125s ISO200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

タテ構図で全身を収めるときには特に、人物を中心に収めるのが「基本」の形となる。

特に、シンプルな背景であれば、人物を中心で、全身で収めた写真を1枚はバッチリきめたいところ。

また、全身を画角のギリギリに収めるのではなく、ある程度、頭上と足元に空間を作っておくこと。

これは、カメラでの画角(タテヨコの比率)を、そのままSNSの掲載や、印刷に使えるわけではないためだ。

人物の頭上と足元をギリギリに収めると、掲載媒体によっては縦横比が変わり、頭や足が切れてしまうケースがある。
頭上と足元に、それぞれ1:1〜2:1程度、上下合わせると画角の1/4〜1/3程度になるぐらいの余白を作っておこう。

1-2.必要に応じて余白のバランスを調整する

【プロトマーリン:こまりさん】
(F4 1/200s ISO2500)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

この写真では、頭上に大きなシャンデリアがあるため、頭上の空間を広めに確保、それに応じて人寸も小さくし、足元の空間を確保している。

このように、背景などの情報量に応じて、余白の割合はある程度調整できる。
ただ、この場合も、特別な意図がなければどちらかがギリギリになりすぎないようにしよう。

1-3.アップの構図では印象を強く

【Model:ゆよりさん】
(F6.3 1/200s ISO800)
Canon EOS5D Mark3+EF100mm

アップにする場合も、人物を中心に収めることで、存在感を力強く印象付け、強調できる。

この場合も、頭上の空間をどれぐらい空けるかは、背景の情報量や、どの程度寄るか、何を写したいかに応じて調節が必要だ。

また、背景の情報量が左右で均一でない場合(目立つ建物、文字、イルミネーションの光など、人物以外で強い情報量がある場合)には、人物を中心に配置すると、写真全体のバランスが悪くなってしまう。

情報量の多い背景で人物を中心に配置する際には、綿密な計算が必要だ。

背景のバランス調整がうまくいかない場合には、後述する「人物を左右に寄せる」方法が有効になる。

2.人物を左右に寄せる

2-1.人物をずらすと、空間に「重要さ」が生まれる

【Model:ゆよりさん】
(F1.8 1/2500s ISO320)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

写真の中で、人物を左右に寄せることで、写真の中に空間の広がりや、動き、方向性を持たせることができる。

ここで重要なのは、画角内に何があるか、人物をどのぐらいの人寸で写すか、また、何が重要かに応じて、画角内で「情報量のバランスを取る」こと。

たとえば、人物以外で重要なものを一緒に写す場合、その重要さに応じて人物を中心からずらすことも有効だ。

【Model:アルパカにーさん】
(F4 0.6s ISO1000)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

この写真であれぱ、バイクが第二の主役なので、写真の中心を「人物」にするのではなく、「人物とバイク」の中間にしている。

つまり、人物を中心からずらすことで、中心からずらした分だけ、反対側の情報にも「重要さ」が生まれるということ。

2-2.人寸や「何が写るか」に応じてバランスを調節する

【初音ミク(ハートハンター):さやさん】
(F3.2 1/200s ISO200)
CanonEOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

胸上、肩上など、人寸が大きくなる、いわゆる「どアップ」では、顔を中心からずらすことで、顔以外の、服装や背景などの情報を画角内に写すことができる。

この写真では、人物の肩など、右側を画角外に切っている。
ただ、左側が画角内に写っているため、「反対側もこうなっているだろう」というのは想像に易いはずだ。
このように、写っていない部分に関しては、画角内に十分な情報があれば、見る人の脳が勝手に補完してくれる。

この写真で、人物を中心に持ってくると、写真の中で「顔」の情報量が強くなりすぎてしまううえ、左右の空間がなく、窮屈になってしまう。

写真の中にヌケ(空間)を作ることで、画角内の窮屈さを軽減でき、情報のバランスも取れるのだ。

【Model:ゆよりさん】
(F13 1/125s ISO200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

また、ポーズや人寸により、「その画角で何までが写るか」のバランスが変わってくる。

例えば、上の写真では、画面下に写っている「足」や「影」が入っているために、人物を左に寄せ、足や影の比重を大きくしている。

3分割のラインを重ねて見てみると、
体のラインはほとんど左側1/3のエリア内に収まっている。
また、2分割法として考えると、
体を画角の左半分に収めているともいえる。
腰上でトリミングしてみるとすればこのぐらい。
写真の左1/3のラインに体の軸を合わせ、
右側にヌケを作った。

このように、同じポーズの写真であっても、人寸や「画角内に何を写すか」に応じて、余白の取り方や、人物を画角のどこに配置するかが変わる。

3.画角を傾ける(ナナメ構図)

【Model:ゆよりさん】
(F2.8 1/200s ISO1000)

「寄りたいけれど、寄りの人寸では写したい範囲が画角に収まらない」そんなときに、画角の中で最も長い「対角線」を使えば、ダイナミックに写すことができる。

このように、写真の水平を崩してナナメで撮ることの効果などについては、構図整理術②・写真は水平? ナナメ? どのラインに合わせるべきか(写真の中の「重力」を考える)にも記している。

今回はタテ構図を傾けたものを見ていこう。

【エラン・ケレス(5号):袴さん】
(F4 1/200s ISO200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF85mmF1.8

水平を崩すことで写せるものが増えるだけでなく、人物の「不安定さ」など、精神的なものを演出する意味でも有効だ。

この場合、どの程度傾けるかは、「対角線」に限らない。
「何を写したいか」も含めてバランスを見ながら、調節しよう。

【牛若丸:さやさん】
(F5.6 1/200s ISO1250)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

画角に対してナナメのラインを使うことで、動きを表現する方法もある。

この写真では、レイヤーさんが右膝を、画面右下にある「箱」(背景に使ったものと同じ黒い布で写真の中に馴染ませている)に乗せることで、ポーズによって体のラインをナナメにしている。

また、ポーズだけでなく、さらに画角を少し傾けることで、写真全体の動きを強調できる。
ポーズはいいのに、あと一歩迫力がほしい……そんなときには、画角を思いきって傾けてみるのも手だ。

4.おわりに


【Model:Lunaさん】
(F2.8 1/200s ISO200)
Canon EOS5D Mark3+EF100mmF2.8Lマクロ

このように、ヨコ構図同様、タテ構図でも、画角のどのラインを人物に合わせるかによって、異なる効果を得ることができる。

また、タテ構図の場合は、ヨコ構図よりも左右の「余白」を取りづらかったり、上下に見えているもののバランスを取る必要があったりするため、注意する必要がある。

ただ、とにかく試してみるのが一番!
いろいろな状況に応じて、様々な撮り方を実践し、自分の腑に落ちる構図作りをしていこう。

🛡<曲がったことはキライです!
🍦<まぁまぁ、たまには寝転んで空でも見上げてみようぜ

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