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23.構図整理術②・写真は水平? ナナメ? どのラインに合わせるべきか(写真の中の「重力」を考える)

人物を撮影するうえで、写真を「水平」に撮るべきか、「ナナメ」に撮るべきかというのは定期的に論じられる内容だが、どのように使い分けるべきだろうか?

【ヘッダー写真 エルキドゥ:山吹さん】
F2.8 1/200s ISO500
Canon EOS5D MarkⅢ+EF200mmF2.8L

それぞれの意味を理解せず、「水平」だけにこだわっても、「ナナメ」だけにこだわっても、人物の魅力を引き出しきることはできない。

構図を取る際の適切な使い分けができれば、被写体の魅力を引き出すことができ、作品の魅力はグッと上がるはずだ。

【Model:さやさん】
F8 1/200s ISO400
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

「ナナメ構図」を正しく活用できれば、作品の迫力を強調し、エネルギーを引き出すことができる。

今回は、「水平」と「ナナメ」をどう使い分けるか、構図の取り方を記していく。


①「ナナメ構図」はなぜ「ダメ」なのか

【初音ミク:Lunaさん】
F2.8 1/200s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマク

写真を見るとき、写真の中に、人は「重力」を想像する。
写真の中の「重力」と現実の「重力」とのズレをなくすために、写真の基本は「水平、垂直」といわれる。

プロフィール写真などでは特に、全身の場合も、上半身のみの場合も、きっちりとした水平、垂直の写真が求められる。

また、先に挙げた初音ミクの写真では、床(地面)のほか、床に対して垂直に立つ「柱」がたくさんあるので、水平、垂直がきっちり取れないと、違和感が強くなる。

ナナメにトリミングしてみた。
これはこれで「崩壊しそうな廃墟」のような
趣はあるのだが……。

ナナメ構図では、写真の中にイメージする「重力」の方向と、現実の「重力」の方向との間に歪みが出る。この歪みが強いと、気持ち悪く感じてしまう人も多い。

特に、人物撮影においては、「その人物がどの方向に重力を受けているか」を無意識に計算し、考えてしまうので、ナナメ構図での違和感は強調される。

つまり、ナナメ構図が「ダメ」と言われる理由の多くは、写真の中にある「重力の違和感」に対して、十分な理由付けができていないことにある。

②「重力の違和感」にどう対処するか


【Model:ゆきさん】
(F5.6 1/200s ISO1000)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L

ナナメ構図の写真に「違和感」があるということは、それだけ、人の感性への影響があるということでもある。

ナナメ構図をうまく活用できれば、作品の持つエネルギーを高めることができる。

基本とされる「水平、垂直」を破るからには、相応の理由付けが必要なのだ。
ここからは、ナナメ構図での「重力の違和感」に、どう対処するかを考えていこう。

②-1.「重力」を感じさせる要素を排除する

そもそも、人は写真を見た時、何を基準にして「写真の中の「重力」をイメージするのだろうか。

【Model:ゆよりさん】
F2.8 1/200s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

写真を見た時に、人が最も頻繁に「重力」をイメージするのは「地面や床のライン」だろう。
つまり、地面を写す「全身写真」では特に、ナナメ構図を使う際に注意が必要だ。


屋外であれば、地面の他、水平線や地平線、電柱や建物、植物(木)の生え方などから、「重力」をイメージしやすい。

【しまっく:いろはさん】
F8 1/200s ISO3200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

屋内であれば、地面(床)や壁などの境界線、柱、窓、障子のほか、カーテンのぶら下がり方なども、「重力」をイメージさせる要素として働く。

特に、屋外、屋内どちらの場合も、柱など「地面に対してまっすぐに立っているはず」と感じさせるものは、「重力」をイメージさせる要素が強い。

写真の中のラインから、人は半ば無意識に写真の中の「重力」をイメージするのだ。

つまり、「重力」をイメージさせる要素を写真の中から排除してしまえば、ナナメの構図であっても、「重力」の違和感を減らすことができる。

【雷電将軍:ゆきさん】
F5.6 1/200s ISO800
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L

この写真では、床や壁の境界線などを写さず、本来の「重力」によって下がるはずの髪や衣装には「ひらみ(動き)」を加えることで、本来の「重力」の方向を読み取りにくくしている。

【荊軻: 袴さん】
F7.1 1/200s ISO3200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L

このように、壁と床の境界線を、前ボケや布などで隠してしまうのも手。
ラインが写るような画角でも、隠したり、暗くしたり、ボカしたりなど、写真から読み取れる「背景のライン」を制限してしまおう。


②-2. 写真の中で別のラインを強調する

「重力」の方向よりも重要なラインを写真の中で強調できば、ナナメ構図での「重力」の違和感は減る。

【鍾離:うづきさん】
F5.6 1/200s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L

この写真では、写真の中で最もダイナミックに見せられる「対角線」に武器のラインを合わせた。

背景の柵などを見れば、ナナメ構図の写真だとわかるが、こういう、迫力重視の構図であれば、「重力」の違和感は薄れる。

また、「被写体のライン」を主として捉えた結果、ナナメ構図になることもある。


背景のラインよりも、
被写体の「体の軸」に注目してみよう。

先ほどのこの写真が、ナナメ構図でもなんとなく成り立って見えるのは、被写体の「体の軸」が、この写真の長辺に対して垂直、短編に対して平行だからだ。

写真を見る人は、「地面のライン」など、背景のラインだけでなく、「立っている人は重力に対してまっすぐ立っているはず」という思い込みを持つ。

「水平・垂直」というのも、「どのラインをメインと捉えるか」によって変わってくるのだ。

【謎のアルターエゴ・Λ:袴さん】

また、このように、髪などを浮かせることで、ある程度、写真の中の「重力」の方向をわかりにくくすることができる。



②-3.瞬間の「切り取り」を強調する

【Model:ゆよりさん】
F2.8 1/200s ISO500
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

フェチの強調(特に部分撮り)や、「動き(アクション)」の表現では、むしろナナメ構図でなければ迫力が足りなくなるケースが多い。

【Model:花核さん】
F4 1/200s ISO400
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

ナナメ構図には、「とっさにカメラを構えた」ような、生っぽさ、ライブ感のようなものがある。

この方法は、何気ない瞬間を撮るようなポートレートにおいても有効だ。

【ジャンヌ・オルタ:りおさん】
F5.6 1/200s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

被写体に寄って(アップの構図で)迫力のあるイメージを撮りたいときに、ナナメ構図が力を発揮する。


【エリザベート・バートリー:花核さん】
F8 1/200s ISO800
Canon EOS80D+EF24mmF1.4L

こちらは「槍に乗って飛ぶ」場面をイメージ。
「水平・垂直」では出せないような、「動き」の表現ができる。


②-4.「重力」の方向が関係ないカメラ位置を使う

たとえば、「空中から見下ろしている」ぐらいの高低差で、見下ろして撮影するとき。

【ジャンヌ・ダルク: ゆよりさん】
F4 1/200s ISO640
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

この写真では、脚立を使用して、カメラ位置と被写体に高低差を作った。
このぐらい高低差をつければ、「重力」の方向も、あまり関係なくなる。


【Model:さやさん】
F2.5 1/200s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L

また、寝転んでいる状態に対しても「重力」はあまり関係なくなるので、ある程度、自由にナナメ構図を取ることができる。

③「ナナメ構図」は状況に合わせて使い分けよう

つまり、人物撮影での「ナナメ構図」が悪いのではない。

「十分な理由付けのないナナメ構図」を安易に使ってしまうと、ただ「歪んだ写真」として捉えられてしまうことがあるのだ。

【千子村正:Aguniさん】
F5.6 1/200s ISO800
Canon EOS5D MarkⅢ+EF85mmF1.8

もちろん、どれだけ理由付けしたとしても、被写体さんに納得してもらうことが人物撮影での基本なので、撮影中の被写体さんとのコミュニケーションを取り、確認をしながら撮影を進めよう。

🫤<コミュニケーションに自信がなければ、水平とナナメ、両方撮っておこう

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