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27.構図整理術③・人物写真の「ヨコ構図」(写真の中の空間をどうカバーするか)

人物をメインとする撮影で、「ヨコ構図」の写真を撮る際には、よほどのパーツ撮りでなければ、人物以外の「余白」ができる。

人物撮影でのヨコ構図を使いこなすには、タテ構図以上に、「情報量をどう調節して、写真の中のバランスを取れるかどうか」が問われる。

【ヘッダー写真 ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ:花核さん】
(F1.4 1/200s ISO3200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

人物撮影では、「タテ構図」が基本の形とされる。

【ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ:花核さん】
F5.6 1/200s ISO3200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

立っている状態の人間は、縦に長いので、タテ構図での収まりがよいためだ。

ただ、タテ写真ばかりを撮っていては、撮影全体のバランスが悪くなってしまうことが多い。


【ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ:花核さん】
F5.6 1/200s ISO640
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

ヨコ写真では、背景を活かしたり、写真全体の流れを表現しやすかったり、瞬間を切り取ったような印象を作ったり、など、タテ写真ではできない表現ができる。

今回はヨコ構図で生まれる、人物以外の「余白」のバランスを取るために、どのように対処すればよいかをまとめていく。


1.写真の中の情報量のバランスを取る

広い背景を活かしつつ人物を置くなら、ヨコ写真が有効だ。

ただし、背景内の情報量の密度(つまり「重さ」)によって、写真の中のバランスは崩れやすい。

構図の安定感を求めるなら、ヨコ写真の場合は、タテ写真の場合以上に、背景の「情報量」にも気を遣う必要がある。



1-1.被写体を中心に配置する

【Model:咲紅ふぁんさん】
F1.4 1/4000s ISO100
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L

左右の情報を均等なバランスにできるなら、いわゆる「日の丸構図」や、「二分割法」の分割線に被写体を配置する、などの方法で、被写体を中心に配置するのが最も安定する。

「日の丸構図はダメ」と言われることもあるが、結局のところ、写真の「真ん中」にある情報には、重要な役割を持たせやすい。

人物を中心に配置しつつ、バランスよく撮るためには、背景と被写体の位置関係やバランスをいかに計算するかが問われる。

【魈:りおんさん】
F4 1/8s ISO2000
Canon EOS5D MarkⅢ+EF200mmF2.8L

立っているポーズの全身写真でも、背景の情報量バランスがある程度取れていれば、ヨコ写真の中心に被写体を配置してもよい。

1-2.安定しやすい三分割法

【Model:Lunaさん】
F4 1/200s ISO1250
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

画面を3×3に分割したラインや、そのラインの交点に被写体を配置する「三分割法」を使うと、ヨコ構図で中心をずらす配置でも安定しやすい。

【Model:とうようさん】
F2.8 1/80s ISO2000
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

このように、空間の広がりなどを表現するのにも使いやすい。

【Model:とうようさん】
F2.8 1/200s ISO3200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF200mmF2.8L

この写真での「イルミネーション」のように、「強い情報」が画面の片側にある場合、被写体を中心に置いてしまうと、むしろバランスが取りにくくなる。

このような場合には、三分割法のほうが、収まりの良い構図となる。

1-3.「強い情報」になりやすいものって?

「人の顔」や「人のシルエット」、「文字情報」などは特に、「強い情報」になりやすいので、背景などに写り込む(あるいは写し込む)場合には、注意が必要だ。

特に、意図的に写す場合には「強い情報」を重要なものとして、相応のポジションに配置する必要がある。

また、写真の中で色の濃いもの、極端に明るい・暗いものなども、強い情報になりやすい。

前ボケなどでさり気なく入れたつもりでも、注意しなければ左右のバランスか崩れてしまうケースがある。

【Model:ゆよりさん】
F2.8 1/2500s ISO640
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

この写真では、「文字情報」を第二の主役として、写真の中心に対して、モデルさんとほぼ左右対称の位置に配置している。

【ディオスクロイ:どぺろさん&袴さん】
F4 1/200s ISO2500
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

被写体が複数人の場合も、横写真を活かしやすい。

2.ポーズなどで空間をカバーする

【謎のアルターエゴ・Λ:花核さん】
F2.8 1/100s ISO1000
Canon EOS5D MarkⅢ+EF85mmF1.8


腕や脚、武器や道具などを活かしたポーズや、衣装の流れなどを活かすことで、「余分な空間」をカバーすることも、ヨコ写真を撮影するうえで大切な考え方だ。

2-1.ポーズで空間をカバーする

【Model:ゆよりさん&みりのさん】
F8 1/200s ISO2000
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

こちらは「銃」を構えた二人のポーズで、余白を埋めつつ、写真の中の対角線を通るようなラインを形作り、ダイナミックに見せている。

【ブラック★ロックシューター:花核さん】
F5.6 1/100s ISO2000
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L

体勢を低くすると、脚を左右に使えるので、ヨコ写真での収まりが良くなる。
しゃがみのほかに、座りでも同様の効果が狙える。

【Model:ゆよりさん】
F2.8 1/200s ISO1000
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

寝転んだ人間は「ヨコに長い」ので、ヨコ写真での収まりがよい。うつぶせ、仰向けともに、光の当たり方や、顔の見え方、首筋の出方などにも注意しよう。


2-3.写真の中に「流れ」を作る

【旅人(蛍):ゆきさん】
F4 1/200s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF200mmF2.8L

被写体さんを片側に寄せた構図の場合、反対側に衣装や髪などで「流れ」を作ることも有効だ。

空間をカバーしつつ、写真の中全体にも流れを作ることができる。

【キュアピース:くるみぱんさん】
F4 1/200s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

アクションポーズの表現でも、髪や衣装の流れを作ることで、空間をカバーしつつ、躍動感を表現することができる。

3.どアップは、まずヨコで撮る!

【Model:さやさん】
F8 1/200s ISO400
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

被写体さんに思いっきり寄るなら、やはりヨコ写真のほうが定番!

背景の雰囲気を写しつつ、ヌケ(空間)を作ることで情報のバランスが取りやすい。

【Model:ゆきさん】
F5.6 1/200s ISO2000
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

パーツ取りで切り取る場合にも、ヨコ写真のほうが、人物の「見えない部分」が多くなるので、集中してその部分を見れたり、サスペンス感を演出したりできる。

いろいろと書いたが、ヨコ写真の良さは、とにかくその空間の切り取り方の「自由さ」にある。

ただ、自由であるがゆえに、情報の取捨選択が必要で、写真内の情報の整理が難しくなってしまうこともしばしば。

ポイントを意識してヨコ写真を撮影しながら、自分にあったバランスの取り方を見つけていこう。

⚖️<私って重いですか? はぁ……病む……

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