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16.構図整理術・写真の中に「流れ」を作る(「ライン」を意識した構図づくり)

写真の中に「ライン」や「枠」を作ることで、写真の中である程度、視線の流れを誘導することができる。

【ヘッダー写真 謎のアルターエゴ・Λ:袴さん】
(F4 1/200s ISO500)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

今回は、構図づくりの際に、写真の中の「流れ」をどのように意識すればよいのかというお話。

たとえば、ヘッダー写真。

赤い矢印が背景の奥行きによって作られるライン。
青い矢印は髪(ウィッグ)によって作られるラインで、
それぞれに視線の流れを作っている。


このように、人の視線の特徴を知れば、写真の中に流れを作ることができる。
視線がどう動くかを多少コントロールできるのだ。


ちなみに、前回までの『写真の中の「見てほしいところ」の際立たせ方』シリーズと関連する部分もあり、合わせて役立てやすい内容になっているので、ご参照いただければ幸いだ。

第一回(ピント)
①人は「ピントの合っている場所」を見る

第二回(明暗差)
②人は写真の中で、「明るいところ」を見る

第三回(動き)
③「動き」で視線を誘導する


1.人の視線の特徴を知る

写真を見るとき、見る人の視線はどう動くか。

見る人の視線がまとまらなければ、写真の中はごちゃごちゃして整理されていない印象が強くなってしまう。

人の視線は基本的に内側から外側へ向かうが、「ライン」があればそれに沿って進む

玉が無秩序、乱雑に転がっているだけに見える。
キュー(棒)がひとつあるだけで、
どこか秩序があるように感じられる。

たとえば、このビリヤード台の写真を見比べてみよう。

上の写真と下の写真の違いは、画面右上に配置したキュー(棒)の存在だ。
上の写真のように、キューがなければ、乱雑なボールを見たあとに、見る人の視線は写真の外に出てしまうだろう。

キューが一本あることで、キューのラインを追う視線の流れが自ずとできていたはずだ。


同様に、こちらの大トロも、
包丁が手前にあることで
「包丁を追う視線のライン」と
平行して見ることができる。


このように、見る人の視線がどのように写真の中で動くかの傾向を捉えて意識することで、構図作りがしやすくなり、また、写真の中が少し整理されて見える。

人の視線は、ラインがなければ、思い思いの順番で全体を見て写真の外へ出ようとする。

そこにラインがあれば、ある程度視線を誘導できるだけでなく、その「ラインを追う」ことでより強く、見る人の意識を写真の中に引き込むことが可能なのだ。

Model:ゆよりさん
F14 1/200s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

こちらの画像では、遠近法を用いた、道やもののラインが集まる場所(いわゆる「消失点」)に、人物の頭を配置している。

漫画で言うところの「集中線」のように、
ラインが集まる場所は注目度が高くなる。

このように、ラインを作るものは、紐や布、壁の模様、髪や衣装の流れ、腕や脚、武器や道具、道、さらにはものや人の「向き」など、さまざま。
複数の要因を常に意識しよう。

2.写真の「角」は特に視線を強く引きつけてしまう

【和泉守兼定:なかりんさん】
F5.6 1/200s ISO100
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mm F1.4

また、人の視線が出ていくときは、当然ながら写真の内側から外側へ向かうのだが、特に「角」は視線を引き付ける力が強い。

たとえば、写真の隅に不必要な映り込みがあれば、そちらへ視線が吸い込まれ、そのまま写真の外へ視線が出てしまうケースがある。

また、写真の中に作った「流れ」に沿って視線が進んだ結果、そのまま写真の外側へ出てしまう、というケースもある。

こういったケースを防ぐために、写真のレタッチ時に「周辺光量補正」や「部分補正」などの機能を用いて、四隅の不必要な情報量を極力減らすことも重要になる。


先ほどの写真では写真の右側を暗く落とすことで右側の角からの意識を逸らしている。
暗い部分は「注目する場所ではない」として頭で処理されるため、自ずと視線が、見るべき場所を探して引き返すのだ。

先の写真には、主に三つの流れがある。

明るくなっている画面左側、特に①衣装のラインを追うと左下の角に目線が向いてしまうので、②布のラインを用いて視線を写真の内側に戻す(角から逸らす)工夫をしている。

③武器のラインと合わせると、写真の中に三角形のような流れの循環ができる。

3.「点」は人の視線を強く引き付ける

ヘッダー写真や、「1.人の視線の特徴を知る」で例に挙げたゆよりさんの着物姿の写真などでは、集中線のようにラインが集まる場所に人物を配置することで、主役への注目度を高めていた。

ラインが重なる場所は「交点」になり、視線をより強く引き付ける力を持つ。

「2.写真の「角」は特に視線を強く引きつけてしまう」で、角に人が注目してしまいやすいのも、角が「点」のひとつだからだ。

【巴御前:袴さん】
F2.8 1/200s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

写真の中には赤いリボンの交点がたくさんある。

中でも、手前の一番目立つ交点に被写体の体を持ってくることで、近くにある人物の顔などへの注目度を高めている。

【レミリア・スカーレット:こがねさん】
F8 1/200s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

こちらもリボンの交点を用いた例。

【千子村正:Aguniさん】
F5.6 1/200s ISO800
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

こちらは背景の布の交点を用いた例。
先2つの例とは違い、布のラインは被写体の後方に隠れている。

ただ、人の目は、実際に見えずともそのラインを想像上で自ずと追うので、交点を想像して作り出すため、こちらも「交点の位置に被写体がある」状態となる。

このように、ライン、特に「交点」を有効に使うことができれば、写真の中で視線の流れを作り出すことができる。

【アルトリア(オルタ):花核さん
ジャンヌ(オルタ):朔炉さん】
F4 1/125s ISO1600
EOS 5DMarkⅢ+EF24mmF1.4L

画面左の布の動きと、画面真ん中から右へ向かう旗の動きがリンクしていることで、左から右への流れが強調されている。

ラインのある写真は、そうでない写真に比べて動きがあり、より活きてくるので、技の一つとしてうまく活用して、作品づくりに役立てていこう。


🎱<あれキューっていうんだね

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