15.写真の中の「見てほしいところ」の際立たせ方③(「動き」で視線を誘導する)
今回の記事では、写真の中の「動き」を活かして、写真の中の「見てほしいところ」を際立たせる方法を記していく。
【ヘッダー写真 巴御前:袴さん】
(F2.8 1/2000s ISO200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF200mmF2.8L
「見てほしいところ」の際立たせ方シリーズ第三弾。第一回ではピントを用いる方法、第二回では明暗差を用いる方法を紹介した。
第一回(ピント)
『写真の中の「見てほしいところ」の際立たせ方①(人は「ピントの合っている場所」を見る)』
第二回(明暗差)
『写真の中の「見てほしいところ」の際立たせ方②(人は写真の中で、「明るいところ」を見る)』
今回用いるのは、「動き」。
「静止画」である写真の中で、動きを表現し、視線を誘導する方法を記していく。
特にコスプレ撮影で欠かせないのが「ひらみ」と呼ばれる動きの表現。
実際に被写体さんに動いてもらうこともあるが、ウィッグや衣装などを撮影の直前に投げたり、上から落としたり、糸などを用いて画面外に繋いだりすることで表現されるケースも多い。
「ひらみ」の主なメリットとしては、
・動き、アクションや、風の流れなどが表現でき、迫力のある写真になる
・髪(ウィッグ)や衣装のボリュームを表現できる
・写真の中の空間をカバーでき、また、写真の中に流れを作れる
などがある。
①人は動いているものを見る
髪(ウィッグ)や衣装の流れだけでなく、跳んでいるかのようなポーズで、動きのある写真に。
実際には、布を被せた台に左膝を乗せてもらい、右足でつま先立ちをしてもらっている状態だ。
体を大きくそらしたり、捻ったりと、楽なポーズではないが、実際の動作であれば「一瞬しか狙えない」はずのポーズを、工夫で表現することができる。
この撮影では、セルフタイマー10秒に設定したカメラを三脚に預けて行った。
ウィッグの動きは、カメラマン(僕)が画面向かって左の外まで走り、ウィッグを指の上で滑らせるように引き抜く形で、流れを出した。
向かって右側の画面外では、アシスタントがシャッター直前まで武器を持つことで被写体さんの体を支え、また、シャッター直前には武器の柄についている房の動きを出してもらっている。
このように、動きの表現は、実際にその動作をしてもらわずとも、工夫して表現することができる。
そして、人は静止画の世界の中でも、動きを感じられるものに目を引かれるのだ。
動きの表現を作り出すときに大切なのは、
「それがどんな動作の途中なのか」
「髪や衣装などはどのような流れで動くか」
といった点をしっかりイメージすること。
こちらの画像。
画面右側の女性(お竜さん)は、普段浮遊しているキャラクターで、画面左側の青年(坂本龍馬)に手を引かれて降りてくるような場面をイメージしている。
マフラーは後方に固定し、ウィッグと上着を後方に流した。
高さは、画面外下で台に乗ってもらうことで表現している。
「その動作をしたときに、それがどう動くか」をしっかりイメージしよう。
②髪や衣装のボリュームを出す
自然な重力だけでは、衣装や髪(ウィッグ)のボリュームが出ないことがある。
以下の例を見てみよう。
このままでももちろん素敵なコスプレなのだが、
ウィッグには、実はこれだけのボリュームがあったりする。
こういった迫力を出すためにも、「ひらみ」を用いた動きの表現が重要なのだ。
このように、裾が広がる衣装や、マント、羽織などがある場合も有効だ。
動きを出すだけでなく、衣装などをしっかり活かし、魅せるためにも、重要な表現となる。
③空間をカバーし、視線の流れを作る
こちらの画像では、キャラクターが振り向いたようなイメージでウィッグやリボン、槍についた布の流れを作っている。
この写真を見るときに、槍のラインに沿って視線を動かすと、画面右上から、左下の画面外へと向かっていく。
そこに、内側へカーブするウィッグやリボンなどの流れがあるため、視線が画面外に出ず、内側に戻る。
背景の葉っぱのラインと繋げると、輪を描くような視線の流れができる。
意図がどこまで活かされているかはともかく、このように「視線の流れを作る」ように意識することも大切だ。
ちなみに、ウィッグなどを「一度外側に振ってから内側に投げる」ことで、先ほどのような、内向きにカーブした動きを作ることができる。
「大縄跳びの端を持って、波を作るような動き」と考えるとイメージしやすいだろうか。
こちらは、「槍に乗って飛び、攻撃する」というゲーム中のモーションをイメージした写真。
背景として用いている白い布に注目。
画面左側は画面外の天井から吊るしているのだが、画面右側は、髪(ウィッグ)と同様に投げている。
これにより、ウィッグの動きと同じような流れが写真の中にもう一つ生まれ、動きの表現が強調されるとともに、画面右側の空間もカバーされている。
このように、髪(ウィッグ)や衣装などだけでなく、布などを用いて写真の中の流れを作ったり、強調することができる。
水を用いて、流れを作った例。
振り向いたような動作に合わせ、髪(ウィッグ)は画面左側へ動かしてもらい、水は画面外右から、被写体の前と後ろをそれぞれ通すように投げた。
これにより、ぐるりと被写体を囲むような形を作ることができた。
このように、写真の中で動きやボリューム、流れを表現することで、主役を演出するだけでなく、さまざまな見せ方・表現に繋げることができる。
ただし、一度のシャッターでうまくいくものではないので、時間に余裕を持って、何度もチャレンジすることが大切だ。
📸<バッテリーの貯蔵は、十分か。
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