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【事例01】スウェーデン発 業界全体の共有パッケージを採用したら食品業界小売業界が激変した! / サーキュラー・エコノミーの実践的すすめ

循環型経済を実施するには、プロダクト、ビジネスモデル、エコシステムの階層でイノベーションをもたらす必要があります。

循環型イノベーションに関する先行する研究の多くは、企業単位(つまりプロダクトとビジネスモデル)の観点から行われています。
しかし、緩やかに結合した企業・組織のグループが集合的な成果、つまり循環社会を達成するためにそれらの上位概念としてエコシステムを据えた次の3層に整理することができます。

プロダクト層:
1つの商品や製品、サービスに視点をおきその素材や部品を循環させる、またはしやすくする

ビジネスモデル層:
会社が持つビジネスモデルそのものを循環経済にシフトチェンジする、または全く新しいモデルを開発する

エコシステム層:
緩やかに結合した企業・組織のグループが集合的な成果、循環社会を達成する


循環経済を実践的にすすめる上で、先行する事例を知ることはとても有意義です。このシリーズでは、上位概念であるビジネスモデル層とエコシステム層に主眼を置き、有益な事例を紹介していきます。

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【事例01】スウェーデン発
食品・飲料業界で使用される再利用可能な箱とパレットの共有システム

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概要:


スウェーデンのSvenska Retursystem(SRS)は、国の食品および飲料業界で使用される再利用可能な箱とパレットの共有システムです。1997年に設立され、現在1,500を超える企業が参加しているB2B国内共通のシステム。スウェーデンのすべての生鮮食品の50%以上が再利用可能なパッケージで配送されます。

注目ポイントはここ!


・使い捨ての段ボールや木箱だった梱包を、形状やサイズで定型化、何度も使用でき、かつ生産者・卸業・小売業まで一貫して利用できる梱包システムに置き換えました。
・SRSの定型梱包サービスを利用する企業は、利用頻度や量にあった料金を支払います。

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1.プロデュース
再利用可能な定型梱包(パレットとクレイト)を食品生産者に届けます。再利用可能なクレイトに食品は格納され、卸売業者に配送されます。
2.卸売業者
卸売業者は小売店に定型梱包をそのまま配達します。
3.小売
小売業者はクレイトをそのまま店舗でディスプレイ、商品補充の面倒を無くします。空いた定型梱包は卸売業者に返します。
4.洗浄と管理
空いた定型梱包はすべて回収され品質管理と洗浄。再利用されます。


循環型ビジネスモデル


梱包の使い捨てモデルから脱却することで、持続可能な未来に貢献しています。再利用可能なシステムは、効率を高め、二酸化炭素排出量を削減し、作業環境を改善し、時間を節約しています。

・梱包処理、運搬処理、注文処理、ロジスティクスなどに、大きな効率化をもたらしました。中規模の店舗では、使い捨てパッケージに比べて毎年160時間の労力を節約できた例も。
・商品の破損リスクも軽減化。例えば、生卵の破損率が最大75%減少した例も。
・従来の梱包パレットよりも強化されており、ほこりや木片を撒き散らすこともありません。
・再利用可能なこのパレットは、木製パレットよりも10kg軽量。ユーザーフレンドリーで運搬もらくちん。
・再利用可能なこのクレイトは、使い捨てパッケージと比較してCO2排出量を74%削減します。
・パレットが摩耗し使えなくなっても、リサイクルされ、新しいパレットに。
・再利用可能なこの梱包モデルは定型化・標準化されており、自動処理に適合しています。
・再利用可能なクレイトは冷蔵・冷凍環境でも大丈夫。稼働率を高めます。

DX貢献:

・業界横断型のプラットフォームが運営されています。
    利用申込、機材調達、廃棄依頼、利用料徴収

結果:

・この再利用可能なクレイトは年間20億以上の使い捨てパッケージに取って代わり、食料品業界で発生する包装廃棄物を大幅に削減しました。
・このシステムの成功は、業界全体のコラボレーションと高品質の標準化された設計によるものであり、生産者と小売業者に多くのビジネス上のメリットをもたらしています。

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参考文献:
https://www.ellenmacarthurfoundation.org/case-studies/an-industry-wide-shared-packaging-system
https://www.retursystem.se/en/

循環経済の実践的すすめ方(まとめ):


海上輸送や陸上輸送でよく目にする輸送コンテナってありますよね。
あれは、複数の輸送モード(船舶・鉄道・自動車)間を積荷の積み替えなしでの輸送に適していて、おもに材料や製品を効率的かつ安全に保管・輸送するために、国を超えたコンテナリゼーション貨物輸送システムとして、世界規模で使用されています。
あの海上コンテナが普及したのは1960年代。定型化された輸送コンテナの登場は物流の一大革命であった(コンテナリゼーション)と歴史上呼ばれています。

ならば、このSRSはコンテナリゼーションならぬ、クレイタリゼーションとして食品飲料物流に革命を起こす可能性を秘めています。

日本の小売店やスーパーの裏口にいくと山のように積まれた、破棄予定のダンボールが目につきます。またいちいちダンボールから商品補充を中腰でおこなう店員を見ていると・・・・このSRSを日本でもぜひ導入するべきではないでしょうか。

SRSはスウェーデン食料品業界団体(SvHD)と、スウェーデン食品飲料小売業者協会(DLF)が、50%/50%で出資して設立しています。

日本の食品飲料業界、卸/小売業界、運送業界の皆様、
これこそが循環経済のエコシステム型先行事例です、ぜひご検討あれ。

日本の金融機関の皆様、
これこそがESG投資、インパクト投資ではないでしょうか。ぜひご検討あれ。


循環経済を実践的に進める、プロセス、ツール、サービスを準備しました。
ご連絡おまちしております。



数藤 雅紀 suto.masanori@members.co.jp
循環経済戦略プランナー University of Cambridge Judge Business School, Circular Economy & Sustainability Strategies修了認定者

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