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DXプランナー視点で読む、日本経済団体連合会「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」

2020年5月19日、日本経済団体連合会が「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」を発表しました。

http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/038_honbun.pdf (本文)
http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/038_gaiyo.pdf (概要)


ご存知のとおり、日本経済団体連合会(経団連)は、日本を代表する企業・団体から構成されています。(企業1,444社、業種別全国団体109団体、地方別経済団体47団体など)

経団連の使命は、”総合経済団体として、企業と企業を支える個人や地域の活力を引き出し、日本経済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与すること”にあり、今回の「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」も、さまざまな視点でとても多くの示唆に富んだ内容となっています。

DXプランナー、デジタルマーケティングの皆さんには必読必至です。
私なりの解説や意見をまぜてご紹介していきます。

補: DXとはデジタルトランスフォーメーションを指します。DXを推進する役割の人物をここではDXプランナーとしています。DXプランナーはIoT、マーケティング、デジタルの経験と知見を備えかつ経営的・社会的な視点も必要とされる職種です。

●序章 Society 5.0 –ともに創造する未来-

==「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」より引用

・デジタル技術の進展によって社会が急激に変革(DX)し、先が見通せない時代となった今、さまざまな領域で未知への挑戦が求められている
・2020年5月現在、人類は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という危機に直面。デジタル技術を活用したさまざまな対策を講じている例もある。COVID-19によって人々の思想や世界の様相は大きく変わった。
COVID-19以外にも世界にはさまざまな課題が山積しており、経済成長と持続可能性の両立が社会の命題。そうした中、日本は「Society 5.0」という価値創造と課題解決を両立する社会モデルのコンセプトを提唱。
日本では、元号が「令和」と改められたが、未だ昭和や平成の時代に形作られた社会構造・慣習が根強く残っている。日本らしい形で「DX」を遂げて、「令和維新」の大胆な変革を進め、未来を切り拓いていくことが必要。
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Society 5.0は、日本が提唱する未来社会のコンセプト。科学技術基本法の(2016年度からの)第5期で登場しています。

今回のコロナショックにおいても結構早い時期(3月30日)に、「新型コロナウイルス対策に関する緊急提言」を発表。深刻な事態を打開するため日本経済の将来に必要不可欠なデジタルトランスフォーメーションに集中的に投資し、デジタル技術の活用と新たな規制体系の構築によってSociety 5.0の実現を急ぐことを求めています。(この緊急提言の中で経団連が、「今次の対策において、消費税減税は適切ではない。」と明言していることも注目に値します。) 経団連のSociety 5.0に取り組む本気度合いを感じますね。

●第1章 デジタルトランスフォーメーション(DX)

==「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」より引用

・デジタル技術とデータの活用が進むことによって、社会・産業・生活のあり方が根本から革命的に変わること。また、その革新に向けて産業・組織・個人が大転換を図ること。
・DXはITシステム改修の話にとどまらず、社会やビジネスの根幹を揺るがす問題。企業が、経営の最重要課題として積極的・自主的に取り組むべきもの。
・これまでの産業は業種・製品起点で区分されてきたが、今後は生活者の体験価値・解決される課題別の産業へと置き換わる。産業構造は、大企業を頂点とするピラミッド型の構造から、協創型のフラットな構造へと転換する。
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米国・中国・EUの進むDXとは異なり、日本発の「多様な主体の協創による生活者価値の実現(価値協創)」型 DXを目指すとしています。日本は産業の裾野が広く、特にリアルの領域に強みを持ち、自社グループや系列企業内での最適化は進んではいますが、社会全体として見れば個別最適化にすぎない日本の現状を考慮したDXですね。
確かに、日本は大企業を頂点とする多重下請け階層構造が見られ、中小企業群も裾野が広い・・・これはかなり大胆な未来予想が必要となるでしょうね。イチ企業に留まらず業種業界や産業界と消費者をも俯瞰したSociety5.0のコンセプトメイキングを描くことが必要です。
幸いなことに、ヒントとなるキーワードが数多くあります。SDGs,ESG, インパクト投資などのキーワードがそれです。 


●第2章 企業DX

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企業DXの差別化要因を「協創」としています。
これは、企業論理に基づいた価値を実現するものではなく生活者価値を実現することに主眼をおいています。この視点を間違えるとそれはただの業務改善でしかないです。「なんちゃってDX」にならぬよう、ご注意を。

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その「協創」を推進する上で、まず経営者がDXビジョンを描きます。当該部署を設営し丸投げするのはもってのほかということです。高高度からの俯瞰的視野と近未来への時間的見通しをもとに、従来の経営軸と全く異なる経営戦略に刷新し、それを核とした各種事業戦略の刷新を行うことが求められます。
硬直化した昭和的発想で頭を悩ますようならば社内外のスタッフを招集しブレインストーミングを重ねることをおすすめします。

また、DX推進に向けて多彩な人材が必要となります。ビジョンを現実的なプランに落とし強烈にドライブする人材。DX推進では誰もやったことのない、どのようにすればそれが可能か手探りなものも数多くでてきます。できない理由をあげつらう人材ではなく、できる手法手段を探すポジティブな人材こそ重要です。

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DX推進は常に手探り。そのためDX推進における組織の立ち位置・構成は機動的・流動的に見直すことが重要です。外部委託で賄っている技術の面においては、一定レベルは自社内に復権させることも必要になるでしょう。ベンダー視点ではなく、貴社視点でDX推進をする専任型パートナーを採用し、自社スタッフの育成をも実現していく必要があります。


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この協創DX指標は貴社がDXを推進においてどのレベルにいるかを示す地図の役割を担います。この各分野と各上位層を行動計画・中長期計画におとすことで、現実的なプロジェクト推進が可能となりますね。素晴らしい指標です。


●第3章 新たなルール、ガバナンスの確立

==「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」より引用

DX推進に向けて、国内の制度やルールを、官民が緊密に連携して変革していくと同時に、日本発DXを国際展開し、世界中のパートナーとともに価値を創造するために、グローバルなルール形成を行うことが不可欠である。

ここでいう新たなルール、ガバナンスの確立は、経団連の性格上、社会全体を意識した法令整備・統制が主体となります。企業内でDXを推進する立場で考えるならば、DX整備稼働後の運用を意識したルール、ガバナンスの整備が必要です。DXはその新しいビジネスモデルであるがゆえに、通常時・緊急時の運用オペレーションと体制を早期から検討する必要があります。PDCAを意識した運用設計をDX設計時期より視野にいれることを強く推奨します。


●この「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」で得られる示唆

この「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」、さまざまな視点でとても多くの示唆に富んだ内容となっています。DXプランナー、デジタルマーケティングの皆さんにとって得られる示唆は次の4つです。

1、貴社の目指すDX全体像のヒント
先行する欧米型DXをむやみに追うのではなく日本型DXを検討してみる。

2、DXを業務改善にしてはいけない
企業DXのキーとなる要素を「協創」。これは、企業側価値を実現するものではなく生活者価値を実現することに主眼をおいています。この視点を間違えるとそれはただの業務改善でしかないです。ご注意を。

3、企業DXを推進する5要素の定性指標を活用する
「協創」を支え実現するため、組織全体の方向性を司る「経営」、DXを推進する「人材」、具体的に作るべき「組織」、「技術」的基盤の整備が重要になります。それぞれを段階的に進める上での定性指標を設定・活用する。

4、新たなルール・ガバナンスの確立
(経団連視点をもとに)イチ企業内でDXを推進する立場で考えても新たなルール・ガバナンスの確立は重要。構築のみならず運用まで視野を広げて確立することが望ましい。


数年のタイムスパンが必要だろうと思われていたデジタル化・DX化の動きはコロナショックを踏み台にして大きく加速しています。従来の企業経営モデルは軋みを立てているのはおわかりのはず。サプライチェーンの全面的見直し、新生活様式への適応などの喫緊の経営課題対策も重要ですが、中長期的視点にたったDX推進は待ったなしです。

各企業でDXを検討している皆様、経団連が提示した本資料活用していきましょう。

●最後に

懐かしい話をひとつ。1970年に自動車排出ガスの大胆な規制が盛り込まれた「マスキー法」が成立しました。当時世界大手自動車メーカーが、厳しすぎる規制の緩和を求めてた最中に、本田宗一郎は「世界中の自動車メーカーが同じスタートラインに立った。これはチャンスだ!」とばかりに社内に大号令を発し、世界で初めてマスキー法をクリアした副燃焼室式希薄燃焼エンジンの方式CVCCを発表し世界を驚かせました。

今回のDX推進も同じこと。世界中の企業が同じスタートラインに立ち走り始めました。先人に負けぬ胆力と行動力をみせてやりましょうw

DXを検討されている企業の皆様へ  
DX推進支援をサービスを準備しています。ご興味あるかたはぜひご連絡ください。      数藤雅紀 suto.masanori@members.co.jp

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