「貧困」への認識が変わる本:「途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法」

5月に読んで衝撃を受けた、国際協力関係の本のご紹介です。
・「途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法」和田 信明氏、中田 豊一氏 (著)
国際協力に携わる人は絶対読んでいた方が良い!と、かなり遅ればせながら読んでしまった私は反省しました。読みながら、ずっと興奮が止まらず。

というのも、序章の題にあるように「曇りガラスが晴れる」気持ちがしたからです。特に「貧困」について書いている箇所は、「貧しい人」がきっかけで国際協力に興味を持った私としては身に染みました。。。(過去そして多分今もある自分の勘違い加減に気づき。わあああ。) その部分を自分なりにまとめてみました。

私の勘違い
1.高校時代にふと「何でよくテレビとかで流れる『世界の貧しく人々』の暮らしは良くなってないのかな?」という大まかな疑問を抱く。(詳しく調べるなどはせず・・・)

2.大学時代に「スタディツアー」に参加し、タイやインドのNGOの活動を見学する。 それらのいわゆる「途上国」で会ったのが、普通の意外に幸せそうな人々だった事に驚く。(今考えると本当に失礼ですが・・・)

3.その時、以下2つを強烈に感じる。
・確かにその人たちの生活は、日本と比べると「十分でない(金銭面・衛生面・安全面・選択肢の数など)」と感じることもあったけれど、全然不幸ではない。
・どころか私は「助ける」どころか土地勘がない場所で、親切にしてもらうことばかり。勝手に『貧しくて可哀そうな人たち』を助けたい」とか傲慢な考えを持っていた自分が恥ずかしい。

「貧困」という「現象」
 上記勘違いの正体をクリアにしてくれた部分を、以下、中略しつつ抜粋すると。

産業革命が内発的にやってきた西欧のいくつかの国を除けば、近代化はこうして、外からの企業との接触という形でやってくる。(それは)巨大な構造的な変化の始まりである。
近代化は外からのささやかな収入や就業機会と共に持ち込まれる。そしてひとたび始まれば、抗することが到底不可能な様な大きな流れとなって社会と生活を呑み込んでしまう。
それに伴って生じたセーフティネットの崩壊に代わるものを社会が用意できなければ、変化から取り残された人々が犠牲となる。これが貧困という現象なのだった。 以上が、開発援助の最大の枠組みと考えられる『近代化のコンテクスト』である。
この『近代化と貧困のストーリー』をインドネシアで初めて紹介したとき、参加者から圧倒的な共感をもって受け入れられた。
「伝統的なセーフティネットを形成する二つのストック、相互扶助と共有自然資源が近代化の進行の過程で衰退し、貧困という現象が発生する」

・・・もう、ため息が出るくらい、腑に落ちます。 特に上述の

セーフティネットの崩壊に代わるものを社会が用意できなければ、変化から取り残された人々が犠牲となる。これが貧困という現象

という箇所から、自分が持っていた「貧困が問題の根源!」という勘違いと共に、「先進国」ではセーフティネットは概ね(税収を使っての)行政サービスとか、(払う余裕がある人への)民間サービスとかになるんだな、と思ったのでした。
資本主義がすべてをお金に換算するので、ひとたび巻き込まれたお金を持たない(必要としなかった)人たちが犠牲になるのだと。

ではその解決策は?となると、お金を使った「支援」方法以外があまり思い浮かばす、資本主義に自分がどっぷり浸かっていることに愕然としたのですが・・・

コミュニケーションの罠
また、以下記述も知れて良かったです。

「現実を構成する三つの要素と「Mのコミュニケーションの罠」 全ての質問は「感情、気持ち」「考え、観念」「事実」の三つにとって成り立っている。 「これは何ですか?」という質問は、形としては事実を尋ねる質問なのだが、この場合は、現実には「あなたはこれが何だと思いますか?」という相手の考えを尋ねる質問になってしまう。「現実を知りたくて、考えを尋ねる」形のコミュニケーションの一つ目の「罠」なのである。
抽象的で観念的、実りのない議論のための議論(空中戦)と、地に足を着いたやり取り(地上戦)。
事実質問の意義は空中戦を避けて、地上戦を戦うため。

※「Mのコミュニケーションの罠」は説明するのが難しいのですが、場所によって見え方が違う文字のようなものを人々が囲むことを想定します。
ある文字のようなもの、それは各々の方向から「3(右側の人)」「E(左側)」「M(正面)」「W(後ろ)」と異なって見えます。

でも「これは何ですか?」と聞かれた時、真正面にいるファシリテーターに「気をきかせ」た後ろの人が、「Mです」と答えてしまうことを指します。 (本当は後ろにいる彼・彼女の位置からは『W』と見えるのに。)

・・・ああ、身につまされるー。

私が行ってきたのは、ずっと「考え、概念」を尋ねる空中戦なのだと痛感しました。仕事でも日常生活でも。だからミスコミュニケーションが多い・・。ということで、過去を反省し、事実質問にこれからも挑戦してみようと思います!