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episode1 わたしの見つけた「くるパー看板」

くるくる回るレトロな昭和の理美容室の看板である通称「くるパー看板」に惹かれるようになったのは、2021年の秋だった。
(詳しくは、episode0 を読んでください)

どこかで見たことがあるような理美容室のくるパー看板だが、実際に見たいと思って探してもなかなか身近で見つけられない。まわりの人に聞いてみても、みなわたしと同じようなうる覚えの記憶しかなくどこにあるか分からなかった。

SNSで集まっている「♯くるパー看板」の情報を追ってみても、どうやらうちの近所にはなさそうだ。実際に現物を見てみたくなったわたしは、まずは、自分の住んでいる茨城県の美容室をネットで検索して、グーグルマップで店の外観の写真を見ることから始めることにした。ハイテクめいて実はかなりローテクな手法である。

しかし、コツコツとローラー作戦で調べてみてもくるパー看板のある美容室にはたどり着けない。
たぶん若いひとが創業したであろう美容院は、おしゃれな外観が多く、看板を掲げない店もあった。そして、そういうおしゃれな感じの店は、横文字の屋号が多く、何語なんだろう、どんな意味の単語なんだろう、という絶対に覚えられなそうもない横文字の店名が多かった。

一方で「〇〇子美容室」「ヘアーサロン 〇〇」という人名入りの屋号は、昭和の匂いのする歴史を感じさせる店構えであった。

結局、そんな発見はあったものの、この方法でくるパー看板のある店を見つけることはできず、このローラー作戦は頓挫する。

見つかり出した「くるパー看板」

やはり足を使って探さなねば、と思い直し、今度は、街中をきょろきょろしながら探してみたが、これもなかなかうまく行かなかった。
理容室のくるくる回る赤白青の渦巻きサインポールはよく見かけるが、これはわたしの探している「くるパー看板」ではない。

【理容室のサインポール】


わたしの住むエリアではくるパー看板は絶滅してしまったんだろうか・・・・

しかし、なのである。2022年の春頃から、少しずつ、くるパー看板が見つけられるようになった。これは、わたしがペーパードライバーを返上して、車を運転するようになり行動範囲が広がったことにもよるかも知れないが、諦めかけたわたしの背中を見えざる手が押してくれたみたいだった。


たまたま行った茨城県唯一のミニシアターの近く、いつも行くデパートの真横、電車が通過するのを待っていたときの踏切の横、などなど、偶然見つけることが続き、シンクロ率が高まってきた。 あれだけ見つけたいと思っていたときは見つからなかったのに、急にわたしの行動範囲内で見つかり出したのである。

「見つけるのをやめたとき、見つかることもよくある話で・・」と井上陽水さんは『夢の中で』の歌っていたけれど、本当なんだな、と思ったりした。畳みかけるように、2022年の夏からは、毎週見つけられるようになる。それも思わぬところで見つけるというセレンディピティなノリで。

笑ってしまったのは、職場から徒歩数分の路地でだったり、いつも通っている通勤路であったりと、灯台下暗しな場所でいくつも発見されたことだ。これは運転技術が上がってきて、運転しながらもまわりがよく見えるようになったことと、もともと動体視力がいいので気づきやすくなってきたのも要因かも知れない。

【集まったくるパー看板の写真!】


いろいろな場所に住む友だちに「くるパー看板を見つけたら写真を撮って送って欲しい」と声をかけていた。これも声をかけて数か月経った頃から少しずつ情報が集まるようになってきた。

友人の実家の美容室にあるとか、東京の北千住の外れにあったとか、愛知県や山形県鶴岡市にあったヨとか。いろいろなデザインのくるパー看板の写真と情報が集まってきた。これはもう感謝しかない。

中でもパソコン教室で仲良くなった友人から、実際に今もくるくる回っている現役のくるパー看板の動画が送られてきたときは、感動してしまった。今も稼働してくるくる回っているくるパー看板は珍しい。くるパー看板を見つけることが出来ても、ほとんどが今はもう動いていないことの方が多いからだ。まして、わたしが見つけることの出来たくるパー看板のある店は、すべて営業すらしていなかった。

友人から教えてもらった店を確認する為、行ってみたら、今も営業をしているようなので、いつかヘアーカットをしてもらいつつ、話を聞きに行きたいと思っている。

色々なくるパー看板を調べたり探したりしているうちに、くるパー看板の目利きにもなっていった。見比べていくうちに、くるパー看板にはデザインのパターンがあることに気付いたのだ。類似するデザインが多い。また、SNS上にアップされているくるパー看板も含めて、何種類か見比べていくと、間違い探しのように同じようなデザインでも少しずつ違うところが見つかる。
回る部分、背景の部分、屋号の部分など、発注するひとが選んで組み合わせ、カスタマイズもできたのだろうか。

【理容室のくるパー看板は、サインポールカラーを模したものが多い。左下に組合のロゴ】

全理連、全美連などの組合のロゴが入っているのも特徴だ。組合員の会報などで看板のカタログなどがあり、そこから購入できたのではないか、などと想像したりしてしまう。

それにしても、なぜ理容室のサインポールは今も見ることが出来るのに、このくるパー看板は衰退してしまったのだろうか。

なぜくるパー看板が、昭和の遺物となってしまったのかは、自分なりに推測できることはあるけれど、もう少し、くるパー看板を追いかけて、検証してみたいと思う。

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あなたのまわりにも、くるパー看板は遺っていませんか?

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