冷え底
やっと涼しい夜長で、鈴虫のリハーサル演奏も、周りの様子を窺うような細やかさを呈し。人間もエアコンで閉所をちょびっと微温くするのに、馬鹿みたいに外気に不愉快な湿気と空気を吐き出す愚を、逃れるわけです。
お袋が作った疲れたワカメやらえんどう豆の入った朝の味噌汁に、冷や麦を入れて煮て作った夕げの出汁の味が口の中に浮かびます。美味いかどうかは個人差があるでしょうが、新米に合う食い物だったのは確かです。鍋物だったり焼き肉だったりは他人が煮るのも自分で焼くのもるわあわあ騒ぎつつ行うと癪に障る人間だったので、そういう秋の夜長の様な、ギンギラギンにはさりげなき陽気の抑えの効いたトンボ風を切る昼間の後の、思いがけないほど冷え込む寂しげな夜長を、心の拠り所に持っているのかもしれません。
荒れ家に無精をして住み、 #井上井月 の様にふらふらと外出したいのです。その方が持ち金のミニマリストなんかよりよっぽど秋の夜長に似て涼やかです。
やがて更に、昆虫一旦滅びたる冬。冬眠する哺乳類の様に思考冷える。
そして嫌でも春が来る、桜の賑やか人の植えた故意、狂しく鳴る鳴る。
のんびりしてても季節だけはすぐ来るんだから。望めど当たり前の秋の静寂は、今夜ぐらいしか噛み締められないや、落人なりにも日々の忙しい事よ。
#挑戦してよかった 冷めた油ギトギトのフライドチキンを例のパイで夜中に起きて胃に流し込むのも宵に良い。情緒はゼロ…
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