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ママ、時々『インベスター』

登場人物

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あらすじ

インベスターZって知っとる?ドラゴン桜の作者が描いた漫画。最初の10話ぐらいでもいいから読んでみて。』経済も金融も、ビジネスの授業も全く受けたことがない、元自動車整備士・現薬剤師で三人の子育て(8歳、7歳、2歳)に奮闘するまりこが、インベスターZと出会い投資家としての道を歩み始め、日々の生活の中から投資の面白さに目覚める話を、関西弁でも名古屋弁でもない、特徴のあんまり無い三重の方言で、兄しんやの目線で書いたエッセイ。語ら基本的にフィクションですが、実話もいっぱい入ってます。

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ニッポンのママ「24時間戦えますか?」

三人の子育てをするママの一日の始まりは早い。朝6時に起きて朝食の準備開始。6時半には小学生の子供二人を布団から放り出し、着替えをさせてご飯を食べさせて、7時半の集団登校の前にかっこよく服を着せて「いってらっしゃい」。その後、夫と下の娘と自分の為の朝食作り。娘はまだ離乳食だから、一品余分に作らないと。ああ、面倒くさい。8時半には夫が経営するショップへ行くのと一緒に娘を保育園に連れっていくのを出送って、自分も勤務する薬局へ出発。5時までしっかり働いた後は家に帰って夕食の準備。近所の友人が子供の学童の送り迎えをしてくれるから何とかなるけど、自分ひとりじゃ絶対無理。夕食をみんなで食べて、お風呂に入れて、宿題を見てあげるともう10時。ビール一杯(?)飲むのが、一日の締めくくりのちょっとした楽しみ。ああ、明日も忙しくなりそうやわ。

こんな生活をする妹まりこに父が「投資の勉強をさせたい」という10年来の願いがあることを知った兄しんや。「いやぁ、そんなん無理やって」というのが率直な意見だったけど、父はかなり真剣に考えてるみたいだ。これまで何度も株を買え、新聞を読め、株の口座を開いてやったから取引しろと娘を諭すも馬耳東風。というより、北風と太陽の北風。やれやれと言われて、今時の娘が素直にはいはいとやるわけがない。しかも、「やれとはいうけど、どうやって?」と聞くと、「自分で調べろ」だから、取り付く島もなし。こんなやりとりが実に10年間も我が家で繰り広げられていたとは・・・他人のファミリーの資産運用をする前に、自分のファミリーのことも考えなければなと反省した。でも、どうやって投資に全く興味がないママを、投資に目覚めさせ、インベスター(投資家)となる第一歩を踏み出せるのだろうか。

漫画を使ってインベスター教育

そこで思いついたのが、知人を通して紹介してもらったコルクの佐渡島さんが編集してきた三田紀房の「インベスターZ」だった。ニューヨークと香港で15年以上資産運用に関わってきて、日本の金融をバカにしてきた僕にとって、インベスターZとの出会いは衝撃的だった。「これって、僕がこの15年間経験してきた投資家としてのキャリアそのものやん」。13歳の中学生が、チャート分析から始まって、ファンダメンタル分析の重要さに気づく。そして投資とはリスクを取ることではなく、思い切って他人と異なる決断をすることだと気づく・・・その過程を、漫画ですごくうまく表現していた。

まずは父と実験。漫画なんてほとんど読まない父に一度読んでみるように頼んでみると、一か月後に「人生で最高の本に出合った」と絶賛。早速、妹まりこにもインベスターZを読むように聞いてみた。「最初の10話読んで面白くなかった読まんでもいいから」と、訝しそうな顔をするまりこを説得。すると2週間後には、「お兄ちゃん、投資って・・・面白そうかも。なんか、思っとったんと違うわ。どうやったら始めれるん?」

投資のような専門的な分野を「教える」時に一番難しいのは、まず興味を持ってもらうこと。興味がでてこれば、自分で学ぼうとする。まりこの早速の反応にうれしさもあるものの、こんなに上手くいくもん?と少し疑心暗鬼に。「とりあえず、いっぺん最後まで読んでみて。でも、分らん事があったらメモしておいてくれたら説明するわ。」すると、毎日少しずつ質問が・・・「じゃあさ、一週間に一回ラインで話しよか。なんかラインで説明するより簡単やし。来週から10話ずつ読むんを宿題にするで、その10話について話しよ。」

一週間に一度の読書会

まりことの読書会で気づいたのが、インベスターZは結構専門用語があって、普通の読者は飛ばしてしまうこと。飛ばしてもそれほどストーリーを理解するのに問題はないけれど、分らないことが増えてくると読む気もなくなるし、調べるのも面倒くさくなる。だから、分らないことが出てくる度にこまめに説明することで、分らないから面倒くさいということがなくなる。

それから、読み進めていくうちに「あれ、これって違うんちゃう?」とか「うーーん、よくわからんけど、なんか気になる」とか、色々と他の人と話したり意見を聞きたくなる。でも、漫画だから話相手がいない。せっかく興味を持っても、そこから前に進めない。

でも、疑問を持つってことは学ぶことにとってすごく重要なことで、インベスター教育をする際にとても重要なステップ。特に、質問に直接答えるのではなく、質問の内容を一緒に考えるきっかけにすることで、読書会がまりこだけじゃなくて、僕にとっても楽しい時間になった。

例えば、「会社ってなんで必要なん」という質問。これに「会社っていうのは法律で定められた法人というもので、所有権を明確にしながら利益の分配を・・・」云々と答えてしまうと、全く面白くない。逆に、「じゃあ、なんで会社必要じゃないん?個人でやりゃいいよね」と質問で返す。

「でもさ、他人からお金を貰ったり借りたりした場合はどうすんの?自分の口座に入れると訳わからんくならん?」「そしたら、口座を別にしたらいいやん。」「小さいうちはそれでもいいかもしれんけど、大きくなってきたらやっぱり別々に管理しないと。だから、個人じゃなくて会社ってものが必要になってくる。」

まりこ:株ってなんなん?借金と何が違うん?
しんや:株を買って株主になるってことは、会社のオーナーになるってこと。だから、利益が出たらそれを受け取ることができる。でも、利益がでんかったら何ももらえん。借金は、利益がでても出なくても、利子がもらえる。
まりこ:そしたら、借金の方がいいじゃない。リスク低そう。
しんや:うん、でもさ、すっごいいい会社で成長しとったら、利益がどんどん出るから、もっと儲かるかもしれんで。
まりこ:あ、そっか。リスクあるけど、リターンも高いか。そりゃ当たり前やな。
まりこ:株って値段があがっとるやつを買うんがいいん?
しんや:なんで?
まりこ:だって、みんなが良いって思っとるから株の値段があがるんやろ?しんや:うん、そうやけど、みんなが良いって思うと、そういう時は大体高すぎる。
まりこ:はっ?意味が分からん
しんや:まあ、例えると、コンサートのチケットかな。人気のあるミュージシャンやと値段がどんどんあがるやん。例えば、まあ古いけど、ブルーハーツとミスチルのチケットがるとする。
まりこ:うん、ブルーハーツは好きやったわ。古いけど(笑)
しんや:最初は両方1万円やったけど、ミスチルは人気が出てきて2万円、3万円って値上がりしとる。でもさ、まりこにとってはブルーハーツの方がいいやろ?値段が安いからって、悪いわけやない。
まりこ:そりゃそうやわな。
しんや:ミスチルのチケットこれからも上がるかもしれんけど、4万円でも買うか?って言われると、いやあ高すぎんるんちゃうって思うやろ?それと一緒。値段が上がっとるから、これからも上がる訳やない。
まりこ:高すぎるってこと?
しんや:そうそう。ミスチルやって、他の人がいいっていうから聞くけど、実際聞いてくと、あんま良くないやんって思う人もおるかもしれん。大体、みんな他人に影響されすぎる。で、ブームが過ぎたらどかーんって下がる。
まりこ:そしたら、値段上がっとる株なんか買ったらあかんやん。え、じゃあ、値段が下がっとるときに買うべきなん?
しんや:うん。投資の世界ですっごい有名なバフェットってジジイがおるけど、この人も「他人が貪欲になっているときに恐れ、他人が恐れているときにだけ貪欲になれ。」って言っとる。
まりこ:ああ、そのジジイの話インベスターZにも出てきたわ。

一見シンプルに見える問答も、実は結構奥が深くてうまく説明するには考えないといけない。身近に考えられる内容と言葉で説明することが大事で、正しい専門用語は必要じゃない。例えば、株式と借金の話でも、投資の観点からは債券やローンという言葉を使うのが正しいけど、それを直すことは重要じゃないし、逆にこだわりすぎるとせっかくのいい質問も無駄になる。

こういう遣り取りを繰り返すと、これまで難解に思えていた金融や経済が、実は身近な経験や簡単な理屈がわかれば、どうってことないと分かってくる。自分で考え始めると、質問がどんどんと深くなってきて、読書会のディスカッションが面白くなって、投資の深みに興味がでてくる。

「じゃあ、投資始めよっか。」

勉強会を始めて二か月後。すでに父親が10年前に開設したSBI証券の口座があるので、それを使って投資を始めようとすると、戸惑うまりこ。「えええ、まだよくわからん。なんか・・・怖い。」まあ、それはそうなんやけど、インベスターZで神代先輩が言うように「投資は習うより慣れろ」。最初は損するとを覚悟で、投資してみることが大事。

習うより慣れろ

「え、でも、何に投資したらいいん?」と、切り返すまりこ。これに対する答えも、実はインベスターZにある。投資はまず身近なものから。「まず自分の好きな会社の株を買う。」

身近なものから

じゃあ、まりこは一体何が好きなのか。「うーーーん、車かな。整備士やったし、今でも興味はある。」

・・・続く(次話:好きな会社の株を買う)・・・


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