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エネルギーシステムにおけるテクノロジーの新たな役割

建築領域のエネルギーに関するテクノロジーの役割としては、これまで省エネ(断熱、気密、エネルギーマネジメント(HEMSなど)、・・・)や、創エネ(太陽光発電、風力発電、蓄電池、・・・)という大きな方向性があった。

けれども、もっと他にもテクノロジーが関与できる領域があると私は思っている。

それは「3Dデザイン」である。

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何を言っているかというと、3Dデザインが可能になれば、もっと環境、エネルギーシステムに配慮した建築が可能になるのではないかということである。

いやいや3D _CADで創ってるし!という声が聞こえて来そうだが、現在の3Dというのは「立体表現」をするための手段という意味合いが強い。

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現在の建築物は、当たり前の様に2Dの制約を受けている。四角い部屋が組み合わされた平面計画と、四角い立面の組み合わせ、柱・梁・屋根・床・窓・あらゆる部材は基本的に直角で構成されており、私たちは、ずっとこれが当たり前だと刷り込まれてきた。それは確認申請図面や現場で扱う施工図面などが2次元(紙)であることがを求めているし、また建築という行為が工業化される過程で、より扱いやすいモノへシフトしていったということではないかと思う。

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工業化について補足すると、大量の同じものを扱わなければならない場合、積み重ね、持ち運びが出来るだけ効率的になるように、定形のもの、隙間なくおける四角いものが求められる。もしそこに1つだけ奇妙な形の部材があったら、積み重ねるときに、隙間が沢山できてしまい、広い置き場が必要になるし、輸送効率も悪くなってしまう。また加工するにしても、切った貼ったというのが非常に難しくなってしまう。そうならない様に、部材は、板状であったり、ロール状であったり、棒状であったりと基本的に直線で構成されたものが求められていくのである。

そしてこの直線で構成された建物を、立体的に表現する(3Dで見える様にする)ということは普通に行われている。

けれども、ここで私が言いたいのは、建築はもっと「曲面」で構成できる様になるのではないかということです。テクノロジーの進化によって、それが可能になっていくはずだということである。

そして、このことが環境やエネルギーシステムにとって非常に大きな意味を持つのである。

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その理由はいくつかある。

まずは設計段階。

これまではデッサンなどでは曲線をイメージしているのに、CADで図面にしようとするとどうしても縦横の直線で構成された建築物になってしまう。けれども、現在はパラメトリックデザインなどの手法を用いて、3Dの構造物を描ける様になっている。そしてシミュレーションも比較的簡単に出来ますので、構造計算までもが出来るようになって来ており、これは大きな変化であると考えている。

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ザハ・ハディットさんの設計手法はまさにこれに当たるのだが、あるパラメーターを変えるとそれに最適化されたモデルが出来るというやり方などが可能になってきている。そしてその結果はこれまでの最適解とは全く違うもの(想像もしていなかった様な形)になったりしていることに非常に驚課される。

つまり、環境要素を上手く要素分解していくことでパラメーターに落とすことができれば、これまでとは全く異なる形状を持った環境配慮された建築物ができていくのではないかと個人的には考えているところである。

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ちなみに、ガウディの建築も結構それに近いかなと思っている。

ガウディのサグラダ・ファミリアなどは曲面を多用しているが、実は構造の構成部材としては直線部材を用いており、その組み合わせや配列の仕方によって曲線を表現している。それは何も特殊なことではなくて、直線であることの方がむしろ異常なのである。人工物以外のもの、例えば動物や植物には決して直線部分はなく、徐々に曲がっていくという構造をしており、ガウディの建築もそれに倣っているのである。その結果として、ここが重要なのだが、面は極端に薄く、直線部材も非常に細いもので済んでいる。圧倒的に効率的な建築物であると言えるのである。

逆にいうと、現在の建築物は、直線で構成されているばかりに、接合部などで大きな負荷が生じてしまい、そこに大きな耐力が求められて、過剰な部材が必要になってしまう。現在の建築は2Dであるが故に、必要以上に環境負荷を高めていると言える。

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この様に、環境に最適化するためのデザインを設計することが可能になり、また自然の摂理・物理法則に則って最適な構造な造形を設計することが可能になっているのである。

次に生産・施工段階

ここは工業化された建築領域でも、3D生産等が可能になりつつあるということである。3D生産にも材料は必要になりますので、その材料を保管する為に、これまでの様に、面材、棒状、ロール状の材料を在庫することにはなる。しかし、この3Dプリンターなどの新たな生産技術では、建築物、建材、部材などを曲面にすることが可能になってきています。素材から中間物を経ずに一気に完成品を作ることが出来るので、切った貼ったという加工は不要になり、廃棄物は圧倒的に少なくなるはずである。

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更には、その生産場所も変わってくる。もはや大量生産である必要性はないので、大きな工場で作る必要はありません。個々の施工現場で生産しても良いですし、施工現場近くの3Dプリンターが出力できる専用の場所があっても良いのではないでしょうか?こうなれば、遠くの工場から施工現場まで完成品を運ぶという余計な輸送コストも無くなります。

データが移動するだけで良くなるのです。

この様に、3D生産・施工が可能になれば、環境・エネルギーシステム的に大きな進歩が期待できると考えています。

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これまでの省エネ、創エネという部分は変わらず必要になるのでしょうが、この建築を作る工程に、これから革新が訪れるのです。

私自身は、とてもワクワクして、この状況を待っていますし、これに少しでも関わっていけたらと思っています。

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