国境(Rebuilt)
最寄駅の改札を抜けてから玄関までの道のりを
昨日とおなじ歩数で帰る
その繰り返しをあるいは時間と呼べるだろうか
遺失物の肩書きが付けられて
どこにも届けられないでいる傘のような彼を
こんなにも近くに感じられるのに
すっかり声が隠されてしまって
私の虹彩は夜の海のよう
何も描かれることのない暗闇のなかで
ゆらゆら揺れる水面だけをたしかに感じる
背筋に沿う気配も
どれほどの間ここに留まって
どれほどの後に流れ去るのだろう
問いかけてもすり抜ける
日々はひこうきのように抵抗のない流線形
私が濁色の感覚で生きている間も
改札口ではまた連綿と切符が切られているのだろう
空が白みはじめて窓からひかりが差し込む
その現象を何と名付けられるだろうか
諦めきれず引いた日常の補助線の上で
ぷっつりと途切れた糸のことを思い返している
photo by faustmp-1832
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