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無名のプロデューサー

結婚する前、フリーターだった頃に良く会っていた友達がいた。

中学の頃の同級生で、学生時代は特に仲良しだった訳ではないけど、大人になってから2人でも遊ぶようになった。

周りの皆んなはちゃんと就職して、わたし達2人は、はみ出し者って感じだった。
いつまでもお子様な、甘ちゃん2人。

バイトの後も休みの日も、しょっちゅう会って、だらだらと話をしたりドライブしたりして、変わらぬ日々を過ごしていた。

ある日突然、「よし、明日のゆいめの休日を、分刻みでプロデュースしよう!」と言い出して、朝起きてから夕方までのスケジュールを計画し始めた。

メインのミッションは、映画館で『グリーンマイル』を観ることだった。その後、マックで感想文を書くのもセットで。(もちろんオーダー内容も決められてた)

まだその頃は、チケット購入時での座席指定ではなくて、中に入ってから好きな席を選んでいた時代だった。

「後ろから3番目の、右から2番目に座る事。」

そう指定されて、「もしそこに先に人が座ってたらどうするの??」と聞くと、「そこ、わたしの席なのですいません、って言って退いてもらうんだよ!」と、無理難題を押し付けた。

映画館ではその席は丁度空いていて、胸をホッと撫で下ろしたのを覚えている。

他にも、[着替える時右腕からシャツに手を通す][家を出る時に「いってきます」を2回言う][アーケードで何かを思い出したフリをして、一旦引き返す]等、細かくてくだらない様々なミッションを組み込まれた。

誰にも見張られてないのに、わたしは楽しくて、そのスケジュールを完璧にこなした。

全てを言われた通りに遂行して、誇らしげに友人に電話し、「ミッションコンプリート」と言って笑った日の事を、寂れた公衆電話を見る度に思い出す。

今はもう、会わなくなってしまった友達。
自由で、感情のままに生きて、表裏の無い人。

わたしの欠点をズバズバ指摘して、しょっ中喧嘩して、泣いても容赦なくて、ムカつく事もいっぱいあったけど、あんなに本音をぶつけ合えた友達は、他にはいなかったかもしれない。

ずっと友達でいたいとあの頃は思ってた。

何がきっかけで疎遠になったか、何となくだけど分かっている。それに、もう2度と会う事は無いんだろうな、って事も。

楽しくて思い出に残る日を、沢山くれた人だった。
その美化された思い出に、今まで少しだけ未練があったけど、ちゃんと手放す日が来たなって思う。

何処かで元気に暮らしてくれてたらいいな。
喧嘩っ早くて色々心配だったけど、無事に大人になったかな。

「大人って、どうなったら大人なんだよ?」って怒られそうだな。

いつまでもパワフルに、楽しく生きてね。
ありがとう、バイバイ。

#日記 #エッセイ #毎日note #友達

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