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地球にやさしい生産者を応援する「サステナミール」誕生の背景

捨てていたのは、おいしさでした

サステナミールは食材のアップサイクルをプロデュースするチームです。近年、日本では食品ロスが問題となっており、年間612万トンの食料が捨てられているといわれています。ただし、これは商品になった食品の廃棄量。商品になる前に生産地で廃棄されてしまう未利用食材は、さらに多いということはあまり知られていません。

これは、日本の規格が厳しすぎることや、消費者が食材の見た目だけを気にしすぎるのが主な原因。味や栄養に問題がないにも関わらず、色や形、サイズが少し規格から外れただけで流通にのせることができないという現状があります。私たちはこれを「産地ロス」と呼んでいます。日本で産地ロスとなる食材は、年間612万トンを上回ると推定してます※。このような未利用資源に価値をつけ、当たり前のように流通させることで、日本の自給率および農畜水産者の所得向上を目指します。

※産地ロスは、野菜だけでも年間約200万トン(引用:政府統計の窓口「作物統計調査(野菜)」確報平成30年産野菜生産出荷統計)。農畜水産の産地ロス食材を合算すると、日本の食品ロスを上回ることを推定しています。

生産者が出荷規格外の食材を捨てる『産地ロス』

私たちのミッションは、これまで見落とされた食材を発掘し、その価値を未来につなげること。宮城県石巻市で3代続くワカメ漁師でもある、阿部勝太(サステナミール代表)が、日本の漁業を盛り上げるべくさまざまな取り組みをするなか、浮かび上がった問題のひとつが産地ロスでした。

例えば昆布は、色が濃くて肉厚なものほど良いと言われ、厚さの足りないものや色の薄い部分は廃棄されたり、安く買い叩かれたりしています。しかし実際は、厚みがなく柔らかい昆布はサラダや酢の物に最適ですし、色の薄い昆布も煮付けてしまえば変わりません。手を加えたり食べ方の提案をするなど、私たちが少しアイデアをプラスするだけで、可能性は無限に広がることに気づきました。

こうしてスタートしたのがサステナミールの活動。食材の無駄がなくなるだけでなく、日本の自給率アップや第一次産業就業者の所得向上、ひいては日本のすばらしい食文化を未来に伝えることにもつながります。この「食と文化をしっかりと紐付け、持続可能なものにしていきたい」という発想は、漁業だけでなく農業や畜産などほかの産業にも広げていければと考えています。

年間600万トンを超えると推定する
産地ロスの解決で生産者の所得向上へ

減り続ける日本の一次産業の就業者数。特に漁業における減少は深刻です。平成の約30年間で、日本で水産業に従事する人たちは約6割減り、現在約15万人。そのうち65歳以上が4割を占めています(※引用:農林水産省「漁業センサス」平成30年度 漁業就業者数の推移)。

農業は機械化を進めることで現状を維持できる可能性もありますが、マンパワーが不可欠な漁業では就業者数の減少は、即ち産業全体の衰退を意味します。実際、世界の漁業生産量はこの30年で2倍になる一方で、日本は半分にまで減り、かつて世界1位だった生産量は8位にまで落ち込んでいる(※引用:水産庁「水産白書」平成29年度 水産の動向)という由々しき状況です。

若い担い手の減少は、安定して「稼げない」水産業の厳しい現実が大きな原因。まずは水産業を「稼げる」ものにしなくてはいけません。とはいえ漁獲量も限られるうえ、安価な外国産の海産物が流通するなか価格を上げるのも難しい。

そこで注目したのが「産地ロス」でした。これまで廃棄せざるを得なかった食材に可能性を見出し利用するのが、もっとも近道な解決策だと考えました。産地ロスが減ることは、漁業者の所得向上を図れると同時に、ダイレクトな自給率アップにもつながります。産地ロスがなくなれば漁業の自給率は10%ほど上がるのではないかとの期待も。

円安や燃油価格の高騰、そして健康志向、環境志向から世界で進む魚食化の影響もあり、外国産の海産物の価格が上昇するなか、食料の自給率は今後の日本の食卓を大きく左右するといえるでしょう。これは、農業や畜産においても同じことがいえるはずです。

未利用部位の
食材としての価値を上げるマーケターと
おいしく変身させる料理家

サステナミールの活動のひとつが、産地ロスしてしまう未利用食材のアップサイクルです。サイズが小さい、傷がある、色が悪いなどの理由で「訳あり」といわれ廃棄されてきた出荷規格外の食材たち。

それらの食材としての価値を高めて、ブランド化をするのがマーケターの小澤亮です。全国250人の生産者を訪問する中で感じた課題「品質への努力が必ずしも価格競争力に結びつかないこと」を解決するために起業。伝統食や食用花をはじめとする数々の食ブランドをプロデュースしています。彼が中心になって担うのは「未利用食材の品質の高さを科学的に数字で証明する」こと。成分分析ブランディングという手法を用いて、捨てていた食材が素晴らしい品質をもっていたことを明らかにしていきます。まずは、捨ててしまっていた「未利用のわかめ」と「既製品のわかめ」の旨味成分の含有量が同等であることを証明しました。

さらに、未利用食材をおいしい加工品として生まれ変わらせるのが、料理家の河瀬璃菜。産地や自治体、メーカーと連携した食分野における多角的な視点からの課題解決を得意としています。これまで数々のヒットレシピや商品を生み出してきたほか、数々の地方創生の為の6次産業支援の実績のある彼女が、未利用食材をつかった加工品開発に挑みます。まずは、阿部勝太のわかめの未利用部位をつかった「梅おかか茎わかめの佃煮」と「茎わかめのタルタル」を開発しました。

〜地球にやさしい生産者を応援する〜
サステナミールが目指す未来

サステナミールの代表である阿部勝太は、水産業を新3K(カッコよく、稼げて、革新的)産業に変えるため担い手の育成や販路の開拓などを行う団体、フィッシャーマン・ジャパンの代表理事でもあります。

活動のきっかけは2011年の東日本大震災。自身も津波で家と工場、船を失いました。もともと漁師の多くは個人事業主で他の人と一緒に取り組むという発想がありませんでしたが、未曾有の事態を乗り越えるためチームを結成。産業を震災前の状態に立て直すだけでなく、10年間で水産業に関わる人を新たに1,000人増やす、という目標を掲げ、東北から日本全土、そして世界に向けて、次世代へと続く未来の水産業の形を提案しています。

2014年の設立から8年、漁師だけでなく、大手小売業や商社でエネルギー事業に従事していた人、ウェブデザイナーやカメラマンなどのクリエイター、ITエンジニアなど、さまざまな業種のメンバーを巻き込み拡大したフィッシャーマン・ジャパン。工夫を凝らしたリクルーティングの甲斐もあり、県内外から多くの漁業志願者が集まりました。彼らに加え、行政、ボランティア、漁師の家族なども含めると、メンバーはすでに1000人は超えているのではないかともいわれるほど大きな組織に成長。自治体や大手企業と連携し、個人ではできない大規模な発信ができるようになりました。

フィッシャーマン・ジャパンでは、東北や日本の水産業全体をマクロの目で俯瞰しながら取り組むプロジェクトが多いのに対し、農畜水産業すべてに目を配り、消費者一人ひとりと向き合って細かなアクションを起こしていくのがサステナミールです。基本的にメンバー自らが現場の声を拾いながら、新たな商品やサービスを開発。まずは、産地ロスしてしまう未利用食材のアップサイクルの輪を、日本全国に広げます。そして、日本から“地球にやさしい生産者を応援する”風土をつくりあげることが、サステナミールがつくりたい未来です。

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