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サステナビリティへの理解も多様ですよね、そりゃ

第1期2年の研究会の議論の中では、おりにふれてサステナビリティの動向への見たてのような話しになりました。背景や潮流をどう理解しているのか。それをどのように企業経営にとりいれようとしているのか、の議論になりますよね。それを整理して、ことばにして「モデル」にそえないと、経営者や企業内のステークホルダーに届かないんじゃないか、との指摘もされました。

ここで書くのは、研究会の運営メンバーの解釈がたぶんに含まれているものです(研究会メンバーの総意ではありません)。おおざっぱにこんな前提で議論していた(のだろう)と書いてみます。第2期(2023-24年度)は、一応この認識を出発点に研究会をスタートする予定です。

産業革命かそれ以上の革新

地球の限界(Planetary Boudaries)の警鐘がならされて久しい中、SDGsでは「社会経済システムを革新する」(”Transforming our world”)として、価値観と行動の大きな変革が強調されています。コロナ禍のダボス会議では「Great Reset」が叫ばれました。それほどまでに、企業活動の基盤である経済システム、その基盤である社会システム、その基盤である生態系システムの持続性に危機が迫っていることは、世界的な共通理解だと考えています。そして、日本の温度感は世界のそれと乖離が大きいと認識しています。

その時代における企業には「外部不経済を内部化しても利益が出るビジネスモデルの発明」(坂野, 磯貝, 2022)、つまりは「産業革命」に匹敵するか、それ以上の産業構造の転換が急務です。不確実で見通しのたたない社会だからこそしなやかに変われる企業体質の構築や、社会課題を解決することで収益を生み出す新たな経済圏やエコシステムをつくるための対話と協働が、転換の鍵を握る要素だとも私たちは考えています。

定義しきらず、議論をせまくすることもせず

この研究会では、「サステナビリティ」を地球の持続可能性を高めるための経営概念と位置づけて議論しています。「サステナビリティ経営」は、その概念を強調した経営姿勢もしくはそれを強調して経営する企業の行動原理として使っています。

「広報」概念も広義のコミュニケーション行為を包含する使い方をしています。社会的に共有されているだろう「広報」概念をこえて議論するため、あえて「コミュニケーション」という言葉を使用する傾向があります(広報概念はオールドファッションだとか狭いと言っているわけではありません ※日本広報学会では新しい広報概念の定義を進めています)。ここでの「サステナビリティ広報」とは、地球と組織の持続可能性を高めるための組織が主導する未来志向の関係構築活動をとおして課題解決を図ることをさします。なので、それを主導する社内組織が広範にわたったり、コミュニケーションの対象と目的が複合的になることがあり、ときおり議論を混濁させることがあります。解釈の多様性が、見通しの立たない複雑な世界に必要、とも考え、あいまいさは残したまま議論しています。その是非もふくめてこれからも議論していこうと思っています。

なお、地球の持続可能性を強調した議論をするため、企業を主語にするCSRや、企業のサステナビリティ活動の評価視点であるESGを主眼にはしていません。SDGsは組織活動の方向性を示すガイドラインとして視野にいれつつ、その到達や取り組みの程度を議論することも範疇にはいれていません。

サステナビリティの解釈と企業へのとりこみかたは、多様でいいのです。もはやあるべき論でもないわけです。考え悩みながらも、あれこれ首をつっこみ、試しながら前に進む経営態度が、いま改めて光をあびているのですよね。

<参考文献>
坂野 俊哉、磯貝 友紀著『2030年のSX戦略 課題解決と利益を両立させる次世代サステナビリティ経営の要諦』日経BP、2022年

<追記:2023年6月26日>
日本広報学会では、新しい「広報」の定義を6月20日に発表しました。詳細はこちらをどうぞ。


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