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イベントレポート|まちを持続可能にするこれからの自治「#2公共サービスの未来」

第一弾として行われた「#1 コミュニティを再構築するーコミュニティナースの事例から」のサマリー記事は下記からご覧ください。

Sustainable Innovation Lab[運営:一般社団法人Next Commons Lab(以下NCL)]は、奈良市と協働し、持続可能な地域社会づくりに取り組んでいます。今回は、そのヒントを探るトークセッションとして、既存の枠組みに囚われない自治体のかたち、住⺠自治の仕組み、官⺠連携の課題などについてオンラインで議論しました。(イベントの詳細はこちら)

第⼀弾(11/18)は、地域住⺠と共に"元気"をつくる活動を⾏う「コミュニティナース」を全国各地に広げている⽮⽥明⼦氏(Community Nurse Company株式会社代表取締役)を迎え、コミュニティによる社会インフラ構築の可能性を探りました。

第⼆弾(11/24)では、ヨーロッパの公共サービスの⺠営化・再公営化を研究する岸本聡⼦⽒(トランスナショナル研究所研究員)を迎え、地域・⾃治体・住⺠ ・企業、それぞれに必要なトランスフォーメーションについて考えました。

この記事では、オンライントークの内容をまとめたサマリーをご紹介します。

実施したオンライントーク
#1 コミュニティを再構築するーコミュニティナースの事例から
#2 公共サービスの未来ー欧州の再公営化事例から

#2 公共サービスの未来ー欧州の再公営化事例から

■インスピレーショントーク

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第二弾は、冒頭で第一弾の振り返りを行った後に、岸本氏によるインスピレーショントークがスタート。SILや奈良市の取り組みに共感していることを伝えた上で、トークセッションに向けて「あえて批判的な材料を提供することで議論がおもしろくなると思い、挑戦的なスタートを切りたいと思います」と、ヨーロッパの自治体の事例についてお話をしていただきました。

|1|「少子高齢化」よりも現代的な枕詞とは 22:40

岸本氏がはじめに、日本の自治体の問題として挙げたのは、ほとんどの自治体の政策の枕詞に「少子高齢化によって、人口減少や財政環境の悪化が進み、市民のインフラサービスを維持することが困難である」と書かれていること。

「少子高齢化は日本のどの地域でも起こっていることですが、高齢化は避けられないとしても少子は変えられるものだと思っています。むしろこれは国による無策が原因。子育てがしにくい社会や教育にお金がかかりすぎるために、問題が発生している。なので、今の国政を変えることが難しいとしても、日本の首長には『恐れない』自治体であってほしいと思っています。この恐れない、というのは国の政策に恐れずに、自治体が前面に立って住民と向き合うということです」

「現代的な枕詞は、ネガティブな議論になる少子高齢化よりも『気候変動問題』。また、『住む権利』や『民主主義の危機』です。これらをどうするのか、ということがこれからの自治であり、多くのヨーロッパのやる気ある自治体が設定している出発点になっています」

|2|行政サービスのインソースとアウトソース 29:3735:36

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現代的な枕詞を設定した上で、岸本氏が重要だと話すのは「公的な機能の強化とよりよい調整」。しなやかに強く、民主化した自治を行うために、ヨーロッパで行われている行政サービスのインソース化の事例とその特徴を紹介していただきました。

<インソース化の特徴>
・行政サービスのアウトソースによって、サービスの質の低下や調整機能の喪失、労働者の賃金減少などが起きた国がインソースを実施している。
・建物や住居の清掃やメンテナンス、ITサービス、スポーツ、会計サービスなどの小さなサービスがインソース化されている。
・インソースによって、市の管理のもとに良質な雇用を拡大できることや若い世代に魅力ある教育プログラムを提供できること、地域のサプライヤーにビジネスの機会を提供できることなどのメリットが生まれている。

■トークセッション

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第一弾と同様に、奈良市長の仲川氏から奈良市月ヶ瀬地区で行う取り組みについての紹介と、SIL共同代表の林によるローカルコープの概要説明を行った後、岸本氏のインスピレーショントークを受けたセッションへ。「公共サービスの未来」について様々なディスカッションが行われました。

<トークセッション 登壇者>
ゲスト:岸本聡⼦ ⽒(トランスナショナル研究所研究員)
登壇:仲川げん(奈良市⻑)、⽩井智⼦(新公益連盟代表理事)、林篤志(Next Commons Labファウンダー)

<これからの自治体のあり方のヒント>

|1|正当性と公平性を担保するガバナンスのあり方 1:11:00

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インスピレーショントークを受けて、「ヨーロッパで再公営化(行政サービスのインソース化だけでなくアセット、インフラ、マネージメント、所有を民から公に戻すこと)が機能しているのは、経営マネジメントの優劣によるものなのか、もしくはガバナンス(自治体の管理体制)によるものなのか」という林からの質問に対し、「ガバナンスだと思います」と岸本氏。

民主主義において、公的な資金や支援を利用することの「正当性や公平性を担保するガバナンス」の重要性を話します。

「ローカルコープという新しい斬新なプラットフォームをつくる、その取り組み自体は応援しているんですが、誰がその枠組みややりたいことを正当化するかという民主主義の根本的な問題があります。解決するのはとても難しいことですが『公的な資金や支援を正当化する民主的な意思決定の方向』というのは、これからの自治の重要な要素のひとつだと思っています」

|2|住民主体の自治に向けたトレーニング 1:22:241:38:01

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ヨーロッパの自治体の事例を聞きながら、日本で行われている自治について振り返り、自律型の公共経営を実現するためには「トレーニングが必要」だと話す仲川氏。岸本氏もその重要性に強く共感します。

「パブリックの中で、どんな財源を、誰が、どんな方向に進めていくのかということをまさに住んでいる人たち自身が主体的に判断するトレーニングをしていく必要があると思っています。それを身につけない限り、手間を惜しんだり、めんどくさがったり、無関心であることによって、自分たちの行政コストに問題が跳ね返ってきてしまっているのが現状です」(仲川氏)

「市民としてのトレーニングも、公職の人たちが市民の意見を聞くトレーニングも重要だと思っています。住民が関わる色んな場でトレーニングの機会をつくるのは、まさにローカルコープが担う役割になるのかなとも思っています」(岸本氏)

<その他>
・自治の分割 1:27:41
・地域に影響を与える「公共超脱のパワー」 1:32:18

<自治への関わりを引き出すキーワード>

|1|食べ物とエネルギーと水から、自治を考える(岸本)1:50:44

「食べ物とエネルギーと水というのは、自治を考える上で色んな結果を提供してくれるおもしろいテーマです。特に日本のような自然資源が豊かな場所では、ぜひとも注目していきたい、重要なものだと思っています」

|2|民主主義における主体性を取り戻す(林)1:51:58

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「日本の民主主義について考えると、今の社会がうまく民意を反映できているのか、私たち自身の主体性がちゃんと機能できているのかという問題にぶち当たる。私たち自身が主体性を取り戻すために、そのリハビリテーションやトレーニングの場、その後のガバナンスのあり方というのは引き続き考えていきたいですね」

<その他>
・民主主義は、ポピュリズムとの戦い(白井)1:57:19

終わりに

これからの自治のあり方や日本の民主主義について思考を深めるイベントとなりました。今後は奈良市月ヶ瀬地区での実践を通して、さらに議論の場をつくっていきたいと思っています。

<参画説明会について>

Sustainable Innovation Labは、毎月参画説明会を開催しています。
新規事業担当者やサステナブルなビジネスを考案中の方、"SIL" を聞いたことはあるが詳しくご存知ないという方など、どうぞ奮ってご参加ください。

次回は12月16日(木)13:00-
お申し込みは下記よりお願いします。
Peatix:https://sustainablexlab-infosession.peatix.com/
Googleフォーム:https://forms.gle/UoqG3eoGimEPuPGf9

編集・ライティング:宮本拓海

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