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イベントレポート|まちを持続可能にするこれからの自治「#1コミュニティを再構築する」

Sustainable Innovation Lab[運営:一般社団法人Next Commons Lab(以下NCL)]は、奈良市と協働し、持続可能な地域社会づくりに取り組んでいます。今回は、そのヒントを探るトークセッションとして、既存の枠組みに囚われない自治体のかたち、住⺠自治の仕組み、官⺠連携の課題などについてオンラインで議論しました。(イベントの詳細はこちら)

第⼀弾(11/18)は、地域住⺠と共に"元気"をつくる活動を⾏う「コミュニティナース」を全国各地に広げている⽮⽥明⼦氏(Community Nurse Company株式会社代表取締役)を迎え、コミュニティによる社会インフラ構築の可能性を探りました。

第⼆弾(11/24)では、ヨーロッパの公共サービスの⺠営化・再公営化を研究する岸本聡⼦⽒(トランスナショナル研究所研究員)を迎え、地域・⾃治体・住⺠ ・企業、それぞれに必要なトランスフォーメーションについて考えました。

この記事では、第⼀弾として開催した「#1 コミュニティを再構築するーコミュニティナースの事例から」の内容をまとめたサマリーをご紹介します。

実施したオンライントーク
#1 コミュニティを再構築するーコミュニティナースの事例から
#2 公共サービスの未来ー欧州の再公営化事例から

#1 コミュニティを再構築するーコミュニティナースの事例から

■インスピレーショントーク

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オンライントークのスタートは、矢田氏によるCommunity Nurse Company株式会社の取り組み紹介から。「人とつながり、まちを元気にする」コミュニティナースが目指す世界や活動内容についてお話をしていただきました。

|1|誰もが誰かの心と体の健康を応援できる世界に 10:20

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矢田氏がコミュニティナースの活動を通して実現しようとしているのは、「まちの中や日常の暮らしの中で、誰もが誰かの心と体の健康を応援できる世界にする」こと。
そのため、従来の看護師に関わるシステムのうち「①教育」と「②働き方」のふたつのシステム変える仮説を設定しているといいます。

①教育のシステムを変える
「看護学校では、トレーニングの100%を病院の中で行っています。そのため、まちに出てコミュニティでナーシングをするためには、誰かから学ぶのではなく自分で練習する必要があるんです。そうした現状の教育システムを変えて、コミュニティナースとして活動できる人を増やすために研修を開催しています」

②働き方のシステムを変える
「医療や介護制度に頼りすぎない、自治体や企業との新たな協業モデルをつくり、日本中にコミュニティーナースを広げるための働く環境の整備を行っています。様々な自治体や企業とともにコミュニティーナースを持続させるための事業モデルを構想しています」

|2|コミュニティナースのジョブマッチング 21:24

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全国各地に500人以上いる研修の修了生。コミュニティーナースはそれぞれ地域おこし協力隊制度を活用したり、移動販売を営んだり、ガソリンスタンドで働いたり、まちと接点を持つ仕事をしながら活動を行っています。

しかし、その働き方から「自治体や企業といい縁をつくれるかどうかによって、コミュニティナースの活動が大きく左右されてしまう」と矢田氏。そこで2021年2月からジョブマッチングサービス「ナスくる」を開始し、コミュニティナースが活動し続けられる持続可能な仕組みづくりに着手。その結果、それまで事例のなかった地域にもコミュニティナースの活動が広がっているといいます。

■トークセッション

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ここからは矢田氏のインスピレーショントークを受けたセッションへ。奈良市長の仲川氏から奈良市月ヶ瀬地区で行う取り組みについての紹介とSIL共同代表の林によるローカルコープの概要説明を行い、「コミュニティーの再構築」について議論を深めます。

<トークセッション 登壇者>
・ゲスト:⽮⽥明⼦ ⽒(Community Nurse Company株式会社代表取締役)
・登壇:仲川げん(奈良市⻑)、⽩井智⼦(新公益連盟代表理事)、林篤志(Next Commons Labファウンダー) 

<これからの自治体のあり方のヒント>

|1|自治体の枠を超えた連携で地域密着の仕組みを共有する 1:18:09

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平成の大合併を機に、規模の大きい隣接した自治体に吸収された中山間地や離島などの人口の少ないまち。そうした地域は市街地から離れ、行政と住民の距離ができやすい傾向にありますが、行政としてどのようにマネジメントを行っているのでしょうか。

SIL共同代表の林からの質問に、仲川氏はそのひとつの方法として「近隣の自治体と連携しながら、市町村の枠を超えたひとつのリーグとして行政サービスを共有することが有効だと思う」と答えます。

|2|日本の自治体にイノベーションを起こす3つの提案 1:42:09

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コミュニティナースを日本全国に広げる矢田氏が、これからの日本の自治にイノベーションを起こすために、自治体職員へ提案として挙げたのは下記の3つ。

1.いい笑顔でいること
2.ちゃんと挨拶とお礼を言うこと
3.エニシングゴーズ(Anything goes)の精神でいること

「これがやれたら本当に日本の自治体にイノベーションが起きると思っています。特にエニシングゴーズ、『なんでもありだ』っていう精神でアイデアを生んだり、意思決定をすることができれば、これまでとは違うアソシエーションになるくらいの変化が起きると思います」(矢田氏)

<その他>
・住民・企業と中仕切りを取り外して考える「コモンズの共有」 1:48:58
・オルタナティブな組織体「第二の村役場」 1:49:45

<自治への関わりを引き出すキーワード>

|1|支え合う関係性の幸せを感じる(白井) 1:27:52

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「誰も取り残さないコミュニティをつくるためには、人がお互いに支え合うことの幸せを体験してくことが大切です。その実感によって、支え合いが広がっていく。それこそ、スーパーマンじゃなくても、資格がなくても人が人を支えられることをみなさんが体験していくことが重要だと思っています」

|2|領域やボーターを超えた、多様な働き方(林)1:31:18

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「これまで自治体や企業が地域におけるそれぞれの役割を分けすぎてしまったことによって、効率の悪さやイノベーションが生まれにくい状況ができてしまっている。これからはより多くの人が、セクションや領域などのボーダーを超えた働き方をすることで、結果としてイノベーションをつくり、包括的な社会を生み出すことができるんじゃないかなと思います。働き方から変えていくのは、実は近道なのかもしれないですね」

<その他> 
・とにかく人に頼る、持ち寄る(矢田)1:25:23
 ・「本当はどう生きたいか」という根本的な問い直し(仲川) 1:37:23

終わりに

これからの自治のあり方や日本の民主主義について思考を深めるイベントとなりました。今後は奈良市月ヶ瀬地区での実践を通して、さらに議論の場をつくっていきたいと思っています。

第二弾として行われた「#2 公共サービスの未来ー欧州の再公営化事例から」のサマリー記事は下記よりご覧ください。

<参画説明会について>

Sustainable Innovation Labは、毎月参画説明会を開催しています。
新規事業担当者やサステナブルなビジネスを考案中の方、"SIL" を聞いたことはあるが詳しくご存知ないという方など、どうぞ奮ってご参加ください。

次回は12月16日(木)13:00-
お申し込みは下記よりお願いします。
Peatix:https://sustainablexlab-infosession.peatix.com/
Googleフォーム:https://forms.gle/UoqG3eoGimEPuPGf9

編集・ライティング:宮本拓海

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