「観る・聴く」リレーコラム② - サチコ

こんにちは!副部長のサチコです。

今月のテーマは「観る・聴く」ということで、オススメする作品を紹介することになりました。[観る=映画、聴く=音楽]として、わたしが大切にしている作品についてお話してみます。

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サチコと映画


実家に録画して溜めてあったVHSを観る、というTSUTAYAとは無縁の幼少期を過ごしたわたし。今思うと90年代の洋画なんかを(偏っていたけれど)ちょっと背伸びして観ていたので、LEONやグリーンマイルやライフイズビューティフルを観て「映画って辛いものなんだ...」と思っていたような気がします。

その反動か、大学生になってから「ゆるい邦画に逃げ期」が到来。毎日がかもめ食堂。わたしも100万円貯めて街を転々とした〜い。毎朝しおしおミロ飲みた〜い!もたいまさこに微笑まれたい〜!洋画を観るとしてもアメリみたいに暮らしたい!ヘイフラワーとキルトシューかわいい!単館映画、最高!そんな感じで、駅前の「サンホーム」でDVDを借りあさる日々でした。

別に悪いことではないけれど、なんとなく「心を動かされるのがいや」で、ゆるくて心地いい、でも教訓がある、みたいな映画を選んでいたように思う。社会人になってもしばらくは、そんな感じでした。

もしかしてまだ出会っていない?

そんな日々を過ごしている中で、よく聞かれるあの質問。「いちばん好きな映画って、何?」。仮にこの質問のテーマが音楽や小説だとしても、違和感を覚えていたと思う。わたしがこれまでふれてきた作品はどれも大切なものだけど、「いちばん」を語れるほど映画を観ていない、と思ってしまって。自分の価値観も変わっていくし、ずっとこれまで答えていた「LEON」という回答では満足できなくなっている自分に気づきました。

これは、別に「詳しくないと語っちゃいけない気がする...」なんていう話ではなくて、何か、自分にとっては大きな変化のポイントだったのだと思う。もっと、観たい、知りたい。だから今聞かないで!!途中だから。そんな気分でした。

映画の中で生きてしまうひとたち

2015年あたりから、映画館で新作を観ることが増えてきました。単純に観たい!と思う作品が多かったことや「いま、この時代にこの作品が出される」意味みたいなものに、興味があったのだと思う。はい、やっと作品の話になりますが、2015年、わたしにとって衝撃の映画と出会うことになります。

映画「あん」

[公式]http://an-movie.com/

河瀬直美監督作品の「あん」。主演は永瀬正敏、樹木希林。

どう説明していいか、急に手が止まってしまったけれど...

永瀬さんも、樹木希林さんも、どう考えても「演じている」ように見えないんです。千太郎と、徳江さんというひとが「そこで生きている」としか思えなかった。だからわたしは彼らの演技に感動して泣いたのではなくて、「千太郎」を思って涙したし、千太郎の目を通して見る徳江さんが愛おしくて仕方がなかった。そして映画が終わってしまったあと、「また会いたい」と思ったんです。

河瀬さんはドキュメンタリーを撮る方で、その撮影方法やこだわりっぷりは各所で語られています。永瀬さんもかつての妻・キョンキョンに「毎日ちがう役で帰ってきちゃうから、大変」と言わせるくらいに「役を生きてしまう」ひとである。樹木希林さんも、樹木希林のまま誰かを演じてしまうし、でも役としてずっとそうして生きてきたかのようにもみえる、本当に不思議な役者さん。そんな3名が揃ったのだ、えらいことです。

初めて、同じ映画をスクリーンで3回観ました。会いたくて、仕方なかったんです。

樹木希林さんはそれからいちばん好きな女優さんになりました。先日是枝監督の「万引き家族」と、画家・熊谷守一を描いた「モリのいる場所」をハシゴして観るという、贅沢な「樹木希林ハシゴ」をいたしました。どちらも大変オススメです。

樹木希林さん「明日、いなくなってしまうひとの顔」がどうしてあんなにうまいんだ。儚く、圧倒的で、うつくしい。まだまだ彼女がスクリーンで生きてしまうのを、みたい!

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サチコと音楽

わたしの音楽遍歴はというとめちゃくちゃで、ルーツもあるようでないし、「そのとき、良いと思ったものや出会ったものを聴いてきた!」という感じ。別にいいのだけど、なんとなくひとことで語りにくい。映画とおんなじで、近頃は「まだ出会っていないから、いちばんが何かって聞かないでくれ!!!」と思ったりしてました。そんな中でも、もちろん好きなバンドがいたり、忘れたくないライブがあったり、夜どこかに連れて行ってくれる音楽があったり、するわけです。それは魔法みたいにいつも、わたしを守ってくれる気がするのです。

どんな気持ちになれるのか、で聴いている

下記は、わたしのだいすきな画家・ライブペインティングパフォーマーの近藤康平さんがどこかに書いていて知った、フィッシュマンズ佐藤さんのことば。

「午後3時ごろのタバコの煙がゆるやかにゆれてのぼっていく美しさを、そのまま歌詞で『タバコの煙がきれい』と歌うんじゃなくて、そんなような気持ちになるようなメロディや言葉を探すんだ」

これを読んだときわたしはしびれてしまって。フィッシュマンズの曲に共通するあの浮遊感とか、幸せなのになぜか泣いちゃいそうな空気とか。全部、そうだと思った、このことばの通りなんだと思った。

その曲を聴いて「どんな気持ちになれるか」。無意識の中で、そういう聴き方をしている自分にも気づきました。

夏の気配、知ってるような気がしちゃう彼と彼女

たしか上記のことばは、康平さんとPLATONの東さんがこのことについて話していた、という文脈で知ったような気がする。PLATONについて語ると大変に長くなるので、ここではわたしの大切な音楽のひとつとして紹介させていただきます。
PLATONを聴いていると、過ごしてもないあの夏とか、知りもしないあの娘のことで胸がいっぱいになって、もう戻れないけどそれはそれでいいんだ、って深夜のベランダでタバコ吸っているような気持ちになる。東さんの声と歌詞とメロディ、すごいんだ。



ナイトクルージングリスト

夜、帰り道に外で聴く音楽が特別にだいすきです。夜と音楽に溶けていくような感覚。ツイッターを見ると、同じ日に同じ感覚になっている人が多くいることがあって。そんな夜に別々の場所で聴いた「ナイトクルージング」が忘れられません。

眠れなくて心細いひと、夜遅くにベランダでタバコ吸ってる君、帰り道に寄り道するのが好きなあなた、缶チューハイ飲みながら歩いてるあの子、どんな人でも、どこかに連れて行ってもらえるような。そんな曲がだいすきです。よかったら聴いてみてね。(窓は開けておくんだよ、)


おしまいです。最後まで読んでくださってありがとうございます。

次回はディレクターのゆりさんです。お楽しみに!

◎次回までのリレーコラムはこちら!

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