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「世界初」の取り組みを発表。AWSジャパン記者会見とその背景

2022年11月8日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWSジャパン)主催の記者説明会に、サスメド代表上野が登壇しました。クラウド世界大手のアマゾン ウェブ サービスを提供するAWSジャパン主催ということもあり、メディアをはじめ多くの方々から注目いただく機会となりました。本記事では記者会見当日の様子と、その背景にある「世界初」の取り組みをサスメド目線でご紹介します!

なお、AWSジャパンによるブログ記事では技術面についても詳しく解説されておりますので、ぜひご覧ください!

何が「世界初」なのか?

サスメドは現在、神経・精神疾患領域における⾰新的な医薬品の開発と商業化を推進するアキュリスファーマ株式会社(以下、アキュリスファーマ)と連携し、サスメドが特許を有するブロックチェーン技術を活用した治験を実施しています。製薬企業の企業治験をブロックチェーン技術を活用して実施することは「世界初」の取り組みです

世界的には医療分野でのブロックチェーン技術の応用研究が進んでいますが、日本は欧米中国に遅れをとっているのが実情です。秘匿性の高い医療情報の扱いについては慎重に議論が進められており、また、規制の厳しさや臨床研究に関与するステークホルダーの多さなどからイノベーションが進みづらい環境にあります。

サスメドは、イノベーションを通じて持続可能な医療を実現することをミッションとしています。このミッションのもと、医薬品開発に横たわる課題を解決するべく、ブロックチェーン技術の治験への応用研究やシステム開発を積極的に進めてきました。そして今回、アキュリスファーマ様の治験でサスメドの臨床試験システムSUSMED SourceDataSync ®︎(以下、SUSMED SDS)が採用されることが決定し、世界初のブロックチェーン技術を活用した企業治験が実現しました。

社会実装に向けてサスメドが取り組んだのは、システム開発だけではありません。既存の規制とコンフリクトが生じないように政府との折衝にも尽力してきました。政府の支援を受けた実証研究によりデータの信頼性の担保が保証されることを立証し、サスメドのブロックチェーン技術を活用した臨床試験の効率化が法令上認められることを確認。国内の医療分野における、ブロックチェーン技術応用の先駆けとなりました。

代表の上野は「必要があれば医療業界の規制自体を変えた方が良い」と言っていたんです。法律や規制を回避するのではなく、それ自体を正面から変えなくてはならないと考えていたんですね。その熱さに痺れました。

小原のインタビューより抜粋

どんな課題を解決するのか?

ドラッグラグ/ドラッグロスを解消

海外で使われている医薬品が、日本で承認されて使えるようになるまでの時間差を「ドラッグラグ」と呼びます。また、欧米で承認された医薬品が日本において将来にわたっても開発されない状況も進みつつあり、こうした状況は「ドラッグロス」と呼ばれるようになってきました。日本は欧米に次いで新薬開発が進んでいる国の1つですが、近年では新薬開発が減速している状況です。その結果、欧米で承認されながらも、日本国内では使えない医薬品の割合が増加傾向にあり、2020年には日本未承認薬の割合が70%を超えました。その要因のひとつに、臨床試験の費用の高騰が挙げられます。

医薬品開発においては、臨床試験で得られた治験データと、医療機関の記録とを照合して、データの正しさを検証する「モニタリング」が必要です。過去にデータ改ざんの問題が多数発生しているため、モニタリング業務を通じたデータの真正性の担保が非常に重視されているのです。

しかし、このモニタリング業務では人の目で検証を行うという非常に労働集約的なプロセスが採用されているために、膨大なコストがかかっています。これが、新薬開発の臨床試験費用を押し上げる要因となっています。

SUSMED SDSを利用することで、臨床試験費用を押し上げていたモニタリング業務を削減することができます。これにより、製薬企業の新薬開発コストの削減を実現し、新薬開発への挑戦を後押しすることで、ドラッグラグ/ドラッグロスの解消を目指します。

サスメドが歩んだプロセス

内閣府の規制のサンドボックス制度で既存規制に抵触しないことを確認

規制のサンドボックス制度とは、新たな技術やビジネスモデルの実施が現行規制との関係で困難である場合に、規制官庁の認定を受けた実証を行い、実証により得られた情報やデータを用いて規制の見直しに繋げていく制度のこと。2019年に、国立がん研究センターと実施した臨床研究でブロックチェーン技術を活用した実証実験を行い、データの信頼性が保証されることを証明しました。2020年12月には、サスメドのブロックチェーン技術を活用した臨床試験の効率化が法令上認められることを厚生労働省と経済産業省より回答いただきました。

メディアの注目が集まった記者会見

記者会見当日の様子も見てみましょう!会見は東京都品川区にあるAWSジャパン本社で開催。複数のメディアが現地に集まり、同時にオンライン中継も実施されました。

はじめに、AWSジャパン パブリックセクター 統括本部長の宇佐見氏、同パブリックセクター 事業開発本部 シニア事業開発マネージャー(ヘルスケア)遠山氏から、ヘルスケア業界における課題やクラウド活用について語られました。

真剣に耳を傾ける取材陣を前に、いよいよサスメド代表の上野が登壇。上野からは、臨床試験における課題や、その課題解消に貢献するSUSMED SDSの概要、技術の特長などをお話しさせていただきました。


上野「ブロックチェーンという技術は医療の分野ではあまり聞き慣れませんが、ここ数年、特にWeb3.0の分野で非常に注目を集めております。政府としても、ブロックチェーン技術を基盤とした成長戦略を今年発表しました。ブロックチェーンの利点は、耐改ざん性、耐障害性、プロセス効率化、記録の透明性です」

上野「アキュリスファーマさんとは、ナルコレプシーという睡眠障害に使われる治療薬の治験に取り組んでいきます。私自身、外来で患者さんを診ているのがこのナルコレプシーという病気の方々です。(今回の治験の対象となる治療薬が)欧米で承認されながら、日本の目の前の患者さんに使えないという問題を今回解消できるのではないかと大変期待しております」

上野の発表のあと、アキュリスファーマ 臨床開発部長の小沼氏が登壇し、サスメドのシステムを導入した背景や、取り組みの具体的な内容を発表されました。


小沼氏「アキュリスファーマとしては、治験の効率化やデジタル化を目指していきたいけれど、信頼性を損ないたくないという思いがありました。そんなときに、サスメドさんの技術と出会ったわけです。ブロックチェーン技術は、効率化だけではなく、信頼性が伴っているからこそ、今回治験で導入させていただくことにしました」

最後に、質疑応答の時間が設けられました。一部ご紹介します。

── 治験としては、初めてブロックチェーン技術が使われるという理解でいいのでしょうか?

上野「おっしゃる通り、医薬品の承認のための企業治験で使われるのは、今回が世界初めてのケースです。一方で、医薬品の承認以外でも臨床試験は行われるため、アカデミア・大学病院などの臨床試験での使用実績は複数あります。ただ、やはり医薬品承認というのは、ドラッグラグの解消に繋がりますので、今回の取り組みは非常に大きな一歩かなと考えています」

── 海外ではブロックチェーンを活用した研究が盛んとのことですが、日本ではどういった取り組みが必要だと考えますか?

上野「ブロックチェーン技術の医療分野における活用は、欧米中国で急増していますが、日本は少々遅れていると見ております。そのため、ブロックチェーン技術を活用した医学研究をより活性化させる必要があると考えています。

一方で、ブロックチェーンやWeb3.0が若干バズワード化している部分もありますので、ブロックチェーンを使う意義がある取り組みなのかどうかを見極めて医学研究を進めることも求められるでしょう。今回の事例は間違いなくその意義があると考えます」


記者会見では多数の質問が寄せられ、今回の取り組みの注目度の高さを感じました。

アキュリスファーマ様との治験はこれからが本番。描いた理想を現実のものにすべく、これからも尽力してまいります!

技術面も詳しく解説されているAWSジャパンによるブログ記事はこちらです。