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【12/5】10000mでペーサーを務めたアマチュアランナーのサム・アトキン 🇬🇧が英国歴代4位の27:26.58で五輪標準突破。

(トップ写真📷:Chuck Utash

今年は男子10000mで世界記録が更新され、この種目では男女の日本記録も更新された。

なかでも、日本選手権男子10000mのレースは2組合わせて27分台が18人、自己新が25人と凄まじい結果だった。

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10000mでの好記録はその2日後に行われたアメリカの大会でも続いた。

先週はバレンシアハーフでの57分台での世界新4連発、バレンシアマラソン、福岡国際マラソンでのサブ2:09ランナーの多さも印象的だったが、この数日間で一番印象的だったのがこの10000mのレースで4位に入ったサム・アトキンの活躍だった。

【アトキンのラップ】27:26.58
前半5000m 13:49
後半5000m 13:27
(8000mから64 / 66 / 64 / 63 / 62

(ゼッケンに手書きで“PACER”と書かれている)

前日に5000mで13:18.57の自己新で走り、翌日のこのレースで5000mまでペーサーとして走っていたアトキンが5000mまでを13:49で引っ張って、レースを終えるかと思いきや、5000m以降先頭集団の後方につけてそのままレースを走り続けていた。

このレースの見所はここからで、ペーサーが抜けたことで先頭がP. ティアナンに入れ替わる。ここから2周おきに先頭を引っ張る選手は「次引っ張って」と言わんばかりに、レーンの外側を走り、2番手の選手に先頭を引っ張るように促す。

【レース展開:先頭の選手】
5000mまで:アトキン(ペーサー)
5000-5800m:ティアナン
5800-6600m:ジェンキンス
6600-7400m:チェセレク
7400-8200m:ティアナン
8200-8900m:ジェンキンス
8900-9900m:ティアナン
先頭でフィニッシュ:ジェンキンス(27:22.06)

5000mでペーサーは外れたものの、13:49で通過したことを考えると後半ペースを上げないと五輪参加標準記録(27:28.00)を切ることは難しい。

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(「次引っ張って」と合図を出すチェセレク)

そこで、選手たちは暗黙の了解で2周おきに先頭集団にいる選手たちが協力しあってペースを作ることを選んだ。

日本選手権でも、コエチというペーサがいたもののコエチの背後につける選手が中盤から大迫、田村、伊藤、相澤、伊藤、相澤と変動していき、これも見応えのあるレースだったと思う。

このように頻繁に先頭(もしくはペーサーの背後)の選手が入れ替わるのはトラックの10000mの醍醐味の1つである。5000mではそんなに頻繁に入れ替わるほど長くないし、ハーフやマラソンは入れ替わりあるにしても、ロードなので、集団で誰か1人だけ先頭になる、ということはトラックよりも少ない。

そして、↑のアメリカのレースでは先頭が何回も入れ替わるなか、5000mまでペーサーを務めたアトキンは黙々と集中して先頭集団の後方につけていた。

アトキンは現在、アメリカを拠点にしているイギリス人の選手で、アイダホ州にある母校ルイスクラーク州立大のアシスタントコーチを勤めているアマチュア選手である。

大学時代はNAIAというNCAAとはまた違う競技団体に属しているルイスクラーク州立大の選手として、アトキンは5000m13:57.28の自己記録を持っていた。

それから、アマチュアの選手として競技を続け、2019年欧州室内選手権3000mでイギリス代表として出場して8位(8:01.43)。今回の10000mは自身3回目の10000mで、27:26.58の記録は自己記録を2分18秒も更新するものだった。

また、この27:26.58は英国歴代4位の好記録であるが、アトキンは母校のコーチであり、アマチュア選手であるためスポンサーを持っていない。

(前日の5000mで先頭集団を引っ張るアトキン。アマチュア選手なので今年のナイキのシングレットを持っていない)

つまり、アマチュア選手が10000mで27:26.58の英国歴代4位をマークし、そのレースにはペーサーとして出場。その前日には5000mで13:18.57で走っていた、ということである。

この10000mのレースで印象的なのは、彼が東京五輪の参加標準を突破したことだけでなく、後半の5000mをその前日の5000mよりも9秒しか遅くない13:27で走破したということだ。

(下:5000m 上:10000m。母校のユニフォームで出場。24時間の間に5000m13:18、10000m27:26のスーパーパフォーマンスをアマチュア選手が叩き出した)

東京五輪に向けて、日本の選手もそうだが、世界中の選手が競技力をあげて参加標準を突破している。スタートラインに立てば、プロもアマチュアも市民ランナーも関係ないが、5000m/10000mを連日走り、これだけのパフォーマンスをみせた選手は他に誰がいるのだろうか。

陸上の英国選手権は2021年7月に開催されるが、そこでアトキンが10000mでの五輪挑戦を表明しているモー・ファラー らと競り合って、3枠に入れれば東京五輪の代表選手に内定する。

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