ナイキ「ズームXストリークフライ」のレビュー
2月24日9時からナイキのアプリ限定でズームXストリークフライ(以下、SF)の抽選発売が行われた。
やはり、大半の人が購入できず、右側の画面になってしまったようだ。
今回の記事ではSFのスペックや、私が今月に3000mTTとテンポ走でSFを履いてみた感想と、他のシューズ(タクミセン8、ストリーク6、VFネクスト%、VF4%、ペガサスターボ)との比較などについて以下に記載していく。
また、日本や海外でのSFの販売時期や購入できるサイトを記事の最後に記載するので「なんとしてでも“定価で”買いたい」と思っている人はぜひ。
ハイパーフライとストリークフライ
ナイキはリオ五輪の後ぐらい(VF4%がお披露目されたあたり)から、ハーフマラソンに特化したシューズということで“ハイパーフライ”という名前でシューズが開発されていたといわれている。ここからの開発期間が結構長かったが、2020年の終わりぐらいからハイパーフライと思われるプロトが数名のトップアスリートのインスタなどで散見されていた。
そして、2021年2月に“ZoomX Streakfly”として世界陸連の承認シューズリストにプロトシューズとして正式に登録され、2022年2月までのプロトシューズの使用期間が設定された。
この段階では、SFが
・ストリークシリーズの延長線上
・ミッドソールがフルレングスでZoomXである
・フルレングスのカーボンプレートが入っていない
という詳細な情報は明らかになっていなかった頃だ。
その後、モー・ファラーや、BTCの選手たちがテストしている写真がインスタであがったが、発売時期がいつになるのかは明らかになっていなかった。それから2022年になり、1月に急にSFの発売が発表された。
流通状況
1月下旬に欧州の主要国やオーストラリアなどのナイキ.comでSFのプロトカラー(ホワイト)が発売され、おおよそ数時間で全サイズ売り切れ。日本でSFを持っている人はこのタイミングで購入した人だろう。
2/10には同じカラーがアメリカで発売され、ナイキ.comのみならず東海岸や西海岸のいくつかのオンラインショップでもサーバーダウン。どこも2分ほどで全サイズ売り切れ。が、私は深夜2:00まで起きていて、その2分間のクリック合戦を制し、SFを確保することに成功。
そして、日本のナイキ.comでの“抽選”発売が2/24の9:00からという状況である。私はナイキ.comでのドラゴンフライの販売状況からするに、抽選ではない販売方式だとサーバーダウンして買えないし、抽選だったらコロナ禍前の東京マラソンよりも倍率が高そうなので、まず当選しないと思った。
ということで米国のオンラインでSFを定価購入したという経緯。
ナイキ.comで2/24に発売されるのはプロトカラーなので、日本での店頭販売はまずないだろうというのと、次のファストパックのカラーのSFの発売がなんと5月。いつまで待たなアカンねん、ナイキさん。
スペック
重量:右160g / 左163g(ともに26.5cm)
【主要カーボンシューズの重量(26.5cm)】
・138g / フューエルセル5280
・174g / タクミセン8 (大きいので26.0cmの重量)※グラスロッド
・176g / 飞影PB(大きいので26.0cmの重量)
・180g / メタスピードエッジ
・186g / ヴェイパーフライ4%フライニット
・186g / ヴェイパーフライネクスト%
・186g / ディヴィエイトニトロエリート(大きいので26.0cmの重量)
・192g / メタスピードスカイ
・207g / アルファフライ
・208g / ハイペリオンエリート2
・210g / エンドルフィンプロ2
・220g / アディオスプロ2
・259g / プライムX
ミッドソール:ZoomX(フルレングス)
厚さ:前足部 26mm / 後足部 32mm(ドロップ6mm)
SFを薄底と表現してる人がいるけど、アルファフライ(39.5mm)やネクスト%(37mm)よりも薄いという意味だろう。それだと、ヴェイパーフライ4%(31mm)も薄底になるだろう(私はこの2足を中厚底と分類している)
中足部にのみプレートが挿入されている。
なぜフルレングスのカーボンプレートが挿入されていないのか?
SFの走り心地を説明するうえで重要なのは、フルレングスのカーボンプレートは入っていないことで剛性が高くなく屈曲性があり、接地感もあるシューズだということ。
これだけ屈曲するので、いわゆるカーボンが硬い(剛性が高い)シューズとは違う種類のシューズである。これが何を意味するかというと、足趾(足の指)の底背屈が高剛性のカーボンシューズよりも促進されているということ(足趾が固定されておらず柔軟性が高いこと)。ミッドソールが柔らかいとはいえ前足部で26mm。それでも接地感を感じるのはこの接地時の足趾の動きに関連しているだろう。例えばトラックのコーナーなんかは違和感なくバランスを保つことができていると感じる。
後で詳しく記述するが、SFはVFと反発性がそこまで変わらないと感じる。それはZoomXの反発弾性がとても高く、最高のミッドソールのフォームだからである。ということはカーボンシューズにおける、カーボンが何の役割を果たしているのかが、このSFを履けばよくわかる(それについては下に記述する)。
SFにフルレングスのカーボンプレートを挿入してしまうと、それこそ厚さがヴェイパーフライ4%と同じぐらいなので、ほぼ同じシューズになってしまう。あくまで、ストリーク7などのストリークシリーズの後継モデルでミッドソールがZoomXになった、と考えるのが妥当である。そう考えるとストリークよりも反発性が高いのは「ZoomXすげー」というところである。
BTCの数選手がなぜSFを今も履いているのかを真剣に考える
ストリークフライのテストを1年前からみっちりしていたナイキ本社のポートランド(ビーバートン)を拠点とするバウワーマントラッククラブ(BTC)
BTCの選手では
・M.アーメド(5000m東京五輪銀)
・L.ロモン(5000m12分台)
・G.スタッフォード(1500m東京五輪5位)
・E.クラニー(5000/10000m東京五輪全米代表)
・K.シュヴァイツァー(5000/10000m東京五輪全米代表)
という主力が、現在行われているBTCのフラッグスタッフ合宿のトラックワークアウトでSFを使用している。
SFはVFの下位互換と言っている人がいたが、もしそうであればなぜ世界トップクラスの選手(しかも少なくとも5人が)がわざわざハイレベルなワークアウトでSFを履いているのかをよく考えて欲しい。
これほどのトップレベルの選手が1年も前からテストしているシューズを今も履いているということは、プロモーションとかを抜きにして考えても「良いシューズ」だと感じているからだろう。
特に、他の選手がヴェイパーやドラゴンフライを履いているようなペースの(たぶんインターバル)練習でSFを履いているということは、その練習でSFが十分に使えるということであり、特にトラックではコーナーワークが円滑であることなどでSFを選択しているのではないかと思う。もしくは、スパイクの導入として、接地感のあるシューズを選択しているか(練習ではスパイクフラットを履いている選手もいた)もしくはヴェイパーよりも足関節の捻れが少なくかつ反発性があるシューズということでSFを選択しているのかもしれない。
反発性はヴェイパーフライと同じぐらいであり、ヴェイパーフライやアルファフライよりも軽いのが特徴である。SFはドラゴンフライよりかは少し重量があるが、ドラゴンフライよりかは確実に反発性は高い。
アッパー(フィット感 / サイズ感)
アッパーは以下のように初代のペガサスターボの2層のアッパーを混ぜ合わせたような混合のメッシュアッパー。
フィット感はペガサスターボのあのフワっと包み込んでくれるような感じのライト版(軽量版)という感じで「さすがナイキ」という感じ。ヴェイパーフライネクスト%やヴェイパーフライネクスト%2よりもはるかにフィット感が良い。タクミセン8のあのペラペラなヒールやアッパーのシンプルさから考えるとSFのフィット感は感動モノである。
サイズ感は
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